尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は10日、リトアニアで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するため出国した。会議期間中、尹大統領は日本の岸田文雄首相とも2国間首脳会談を開く予定だという。韓日首脳会談は今年5月の広島主要7カ国(G7)首脳会議への出席を機に開かれてから2カ月ぶりだ。
今回の2国間会談の主な議題は、福島原発汚染水の放出問題になるだろう。岸田首相は尹大統領に国際原子力機関(IAEA)最終報告書を根拠に汚染水放出の安全性を説明し理解を求めるだろうと、日本メディアが一斉に伝えた。これに対して尹大統領は「韓国国民の健康と安全を最優先にする原則の下で、日本側が提起する問題に対する韓国政府の立場を明らかにする」とした。大統領室が9日明らかにした。当然だ。しかし、曖昧だ。この言葉だけでは、韓国政府の立場が何なのか明確にはわからない。もしも一方的に日本の立場だけを聞いて汚染水の放出を認める場としてしまったなら、大きな外交的過ちとして残るだろう。大韓民国の大統領として韓国国民の憂慮を明確に伝え、安全が明確に確認されるまで放出を中止することを要求しなければならない。
岸田首相が持ち出すIAEA最終報告書は「環境試料」の分析結果も出ていない状態で発表された不完全報告書という指摘が提起されており、信頼性に疑問を残している。多核種除去設備(ALPS)の性能検討、環境影響評価などもまともに行わなかったという指摘も出ている。韓国政府も今月7日、ALPS点検周期の短縮・強化、核種5種の追加測定などを日本に勧告している。それでも日本政府は補完なしに、最終報告書を根拠に8月の汚染水放出を既成事実化している。尹大統領は最終報告書の不備を明確に指摘し、日本の無分別な放出強行は許されないという点を指摘しなければならない。
これまで汚染水に対する憂慮を怪談や扇動に追い込み、日本政府以上に熱心に汚染水の安全性を強弁してきた政府・与党の行動を見ると、尹大統領が今回の会談で国民の憂慮の貫徹どころか、まともに話をするかさえ懐疑的だという見方が少なくない。尹大統領自身も、あらゆる事案に対して「細かい指示」を乱発してきたのとは異なり、汚染水問題には沈黙を続けてきた。今回ばかりは、国民の安全と憂慮に無神経なのではないかという疑問を払拭できることを願う。外交惨事はもう二度とあってはならない。