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[寄稿]韓米の逆説的な価値観同盟とそのコスト

登録:2023-05-25 04:46 修正:2023-05-25 10:00
パク・ポギョン|慶煕大学教授・元大統領府経済補佐官
22日、中国の上海にある米国の半導体企業マイクロンのビル=上海/AFP・聯合ニュース

 起きてほしくないことはジンクスのように起きる。21日、中国は自国の機関と企業が米国マイクロン社の半導体を使用することを禁止した。すると、米国は直ちに同盟国と協力して対応すると発表した。ここで、同盟国とは半導体の主要輸出国である韓国を指す。4月末の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪米直前、中国が米国製半導体輸出に制裁をかけた場合、韓国にその不足分を穴埋めしないよう米国が要求していると外国メディアが報じた。この報道が事実なら、米中半導体戦争に韓国が巻き込まれるということだ。韓国としては最も避けたかったシナリオだ。不幸にも現実となってしまった。

 技術戦争において、これまで米国は一方的に中国に対する貿易および投資の制限措置を取ってきた。中国は特に報復していなかった。しかし数カ月前から米国製半導体のセキュリティ審査を行っていることが知られていた。それは報復を準備していることを意味した。今月19~21日の広島でのG7サミットが終わると、中国は行動に出た。これはおそらく最後ではなく始まりであろう。中国の行動は今後、米国中心の同盟に亀裂を生じさせるだろう。同盟国はいずれも経済的に中国と緊密に絡み合っているからだ。

 いわゆる価値観同盟の経済的性格は、北大西洋条約機構(NATO)のような軍事的同盟とは異なるものだ。NATOは、同盟国において戦争が起きれば、共に参戦して同盟国の安保に責任を取る集団安保同盟だ。しかしバイデン政権が価値観同盟の名で推進する対外経済政策の目的は、同盟国の経済的利益の集団的確保ではない。むしろ逆だ。自国のサプライチェーンを強化し、中国を抑え込み、労働者の保護という米国民主党の政治的価値を実現するために、同盟国を利用しようというものだ。

 先月、米大統領補佐官(国家安保担当)のジェイク・サリバンは、ブルッキングス研究所で行った演説で政策目標を明確にした。バイデン政権の政策の方向性に関する最も明確で体系的な説明と評価されるこの演説でサリバンは、崩壊した米国の産業基盤の回復こそ究極の目標だと語った。米国の伝統産業は衰退しており、未来を導く戦略産業も足りないと評価した上で、そのような産業崩壊の根底には単純化された市場経済論理があると述べた。すなわち減税と規制緩和、民営化、貿易の自由化が産業の空洞化を招いたというのだ。そしてトリクルダウン効果に頼った保守的な諸政策が米国の労働者の経済的基盤を破壊し、経済的不平等を深化させたと説明した。その結果、トランプのような人物が登場し、民主主義まで危うくしているというのだった。バイデン政権はこのような過去の政策を覆し、代わって経済のサプライチェーンと包摂の強化のために「労働者階層のための貿易政策」を実施するという。

 サリバンの演説によると、バイデン政権が志向する価値と政策の方向性は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権とは真逆だ。尹政権は政権初期からトリクルダウン効果に言及しつつ、減税を実施した。不平等の緩和と包摂の強化は政策目標から消え去り、リップサービスすらしない。真逆の価値を志向する両政権が、いつにも増して強固な価値観同盟を結んでいるのは逆説的だ。このような逆説が可能となったのは、米国が必要としたのは価値の一致ではなく、自己の目標達成を助けてくれる同盟国だったからだ。

 サリバンの演説が終わると聴衆席から質問が出た。「米国は政策目標の達成のために同盟国を必要とするが、この政策は必然的に同盟国の利益を侵害するだろう。これは矛盾だ。この問題をどのように解決するのか」

 これは韓国に対する問いでもある。米国の経済的利益は韓国の経済的利益にはなり得ない。むしろ韓国の利益が侵害される可能性の方がはるかに高い。韓米同盟という名で覆い隠しておくことはできなくなったのだ。米国のサプライチェーンが強化されたからといって、韓国のサプライチェーンが強化されるわけではない。サプライチェーンの強化と分散のために、韓国には中国も必要であり、東南アジアも必要なのだ。中国けん制は米国にとっては切実かもしれないが、韓国に必要なのは地政学的安定と自由な貿易環境だ。中国に対する中間財の輸出が次第に難しくなる中、韓国には中国の消費財市場が必要であり、だから中国との調和のとれた関係が必要なのだ。

 ロシア・ウクライナ戦争が米国中心の同盟の結束をもたらしたとすれば、中国の反発は亀裂をもたらすだろう。これからは徹底的に韓国の利益のための時間としなければならない。

//ハンギョレ新聞社

パク・ポギョン|慶煕大学教授・元大統領府経済補佐官 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1093191.html韓国語原文入力:2023-05-24 18:27
訳D.K

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