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[コラム]酔っぱらった為政者たちの国

登録:2023-04-14 03:39 修正:2023-04-14 10:31
ソン・ウォンジェ論説委員
尹錫悦大統領が6日夕刻、釜山海雲台区のある刺身屋から出てくる様子=オンライン・コミュニティーの画面をキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 政権に酔いが回っていっている。あちこちできしむ音がするにもかかわらず、自分には見えず、聞こえないから問題ないという態度だ。顔色もうかがわないし、説明もしない。言いたいことばかりを大声で叫ぶ。酔った「パワハラ上司」がまさにこのような姿だろう。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はマスコミにも公示していない非公式の酒席を賑々しく開いた。最側近の長官と尹核関(尹錫悦の核心関係者)、自治体の首長たちが一列に並んで大統領を見送った。「暴力団の酒席のようだ」という批判が沸きたつと、大統領室は「野党出身の首長たちも参加した」、「民生協治の象徴」だと釈明した。協治の第一の対象である野党代表とは就任から約1年の間一度も会っていない大統領が言うことだろうか。

 今回に限らず、尹大統領の酒好きは有名だ。あの忙しいといわれる大統領選挙期間中にも「愛酒家である尹候補の夕食会で酒が入る場合に備えて、午前の日程は比較的余裕を持たせてきた」という陣営関係者の発言が「東亜日報」に報道されている。就任直後、瑞草洞(ソチョドン)の自宅から通勤していた時には、自宅近くで深夜に飲み歩き、不快そうな顔をして酔っ払いたちと写真を撮ったこともある。そのせいで、何度も朝の遅刻は前日の飲み歩きの後遺症ではないかというそしりを受けた。前回の訪日の際も1次会で日本酒、2次会で焼酎とビールをひっかけている。

 適度な飲酒はコミュニケーションを促進する。しかし尹大統領の就任後、酒席はほとんどが味方、気兼ねのない人たちと持っているという特徴がある。肝心な分け隔てないコミュニケーション、忌たんのない議論が交わされるべき席は、作ったことがほとんどない。「尹核関」は順に官邸に呼んで昼食会や夕食会を開いたが、摩擦のあった前与党代表のイ・ジュンソク氏、野党「共に民主党」代表のイ・ジェミョン氏、「正義党」代表のイ・ジョンミ氏は招待名簿になかった。酒を道具として用いるというより、酔うことそのものを楽しもうとしているのではないかという疑問を呼んだ。

 飲酒を伴う交渉スタイルについても懸念の声があがっている。国民の力のイ・ジュンソク前代表は最近、CBSラジオに出演し「(尹大統領は)何かを交渉する時、共通点は最後に酒を飲んでもみ消す方向に行くことがあること」とし「私も蔚山(ウルサン)会議の時、簡単に3条項を合意してすぐ酒を伴う会食をした」と指摘した。続けて「岸田(日本首相)とも、おそらく夕食を2回共にしたのは、そのような脈絡ではないかと思う」、「若干リスクがあると思った。実のところ心配」だと語っている。

 酒で悪名高い国家指導者にロシアのエリツィン元大統領がいる。訪米中、真夜中に迎賓館「ブレアハウス」の外でパンツ姿でうろついていたところ、ホワイトハウスの警護要員に捕まった。「何をしていらっしゃるのか」と要員に問われ、ろれつの回らない声で「ピザが食べたくて」とつぶやいたという。アイルランドを訪問したものの、酔って眠りこけていたため飛行機から降りることもできずに引き返したこともある。大統領のアルコール乱用が国政にとって最大のリスクだったという、生々しい「反面教師」だ。

 水面上では酒のにおいが鼻をつくのに、水面下が澄んでいるはずがない。近ごろ政権勢力には全般的に緊張感がみられない。先日の山火事の渦中にキム・ヨンファン忠清北道知事は酒席に参加していたし、キム・ジンテ江原道知事はのんびりとゴルフ練習場に行っていた。このような無責任がどこにあるのか。

 大統領室では国家安保室長、外交秘書官、儀典秘書官が相次いで交代した。ホワイトハウスでの晩さん会の「BLACKPINK」公演に関する報告漏れのためだという話がある。報告漏れは問題だ。しかし、そのせいで国賓訪問を前に安保室がひっくり返ったのは、事実ならさらにあきれる。あまりにも非常識なことが起きているから、BLACKPINKに関心の高い「誰か」の不満が人事の背景ではないかという「権力暗闘説」まで語られている。大統領室は説明もせず、もみ消しで一貫している。

 政権与党もネジがすっかり抜けてしまっている。キム・ジェウォン首席最高委員は「5・18精神憲法前文掲載反対」、「チョン・グァンフン天下統一」、「4・3蔑視」の3連続空振りだ。党内の極右勢力にこびる発言だ。にもかかわらずキム・ギヒョン代表は「1カ月のセルフ自粛」を勧告してしまった。チョン・グァンフン牧師は先の党大会でキム・ギヒョン、キム・ジェウォンを押したと主張している。キム代表も一時、チョン牧師を「イザヤのような預言者」と敬っていた。今の状況を見れば、そのような関係が生きていると考えざるをえない。党民生特委の委員長を務めるチョ・スジン最高委員は、「ご飯茶わんを空にする」ことを米価対策だと述べている。大統領の糧穀法に対する拒否権行使が政策代案なき無責任な行為だったことを暴露したのが、もしかしたら成果なのかもしれない。

 酒と権力に酔った政権勢力の歌声は高らかだ。国民の怨さも着実にたまっていっているということだけは忘れないでほしい。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1087761.html韓国語原文入力:2023-04-13 15:17
訳D.K

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