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[特派員コラム]尹大統領の115分、強制動員被害者についての言及は6秒のみ

登録:2023-03-30 23:14 修正:2023-03-31 07:18
日帝強制動員被害者のイ・チュンシクさんが最高裁判決から1年後の2019年10月、強制動員問題解決のための記者会見で、ある小学生が書いた手紙の内容を聞きながら涙を拭いている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が6日、日帝強制動員被害者賠償と関連し、一方的な譲歩案を発表したことで、韓国社会は深刻な混乱に陥った。2018年、最高裁(大法院)で勝訴した強制動員生存被害者3人は、日本の被告企業の代わりに韓国の財団が賠償金を支払う「第三者弁済」という政府解決策を受け入れられないと強く反発している。毎週末ソウル市庁広場では政府を糾弾する汎国民大会が開かれている。

 日本の「誠意ある呼応」を期待した16日の韓日首脳会談も何の成果もなく終わった。実質的な内容がなかったため、両首脳が爆弾酒を飲み、オムライスを食べたことが最も大きな話題になったくらいだ。

 「決断と未来」だけを強調し日本に譲歩ばかりする大統領の行動は、これまでにない光景だ。一体何を考えていたのだろうか。尹大統領はこの4週間、強制動員をめぐる譲歩案と関連し、公の場で3回説明した。15日に報道された読売新聞のインタビューが80分、16日の韓日首脳会談後の共同記者会見が約12分、21日の国務会議での発言が23分など計115分だ。

 読売新聞は尹大統領のインタビューを9面にわたって詳しく報じた。インタビューでは「最高裁判決の矛盾」、「求償権の行使はない」、「第三者弁済は私が考えたこと」など、信じられない発言が相次いだ。最も衝撃的なのは、大統領の長い発言で「強制動員被害者」という言葉が一度も出てこなかったという点だ。

 韓日首脳会談共同記者会見の時も、12分ほど続いた尹大統領の発言に「強制動員被害者」は登場しなかった。ただし、21日にテレビで生中継された「過去最長」の国務会議での発言では、短く言及された。「政府は強制徴用被害者の方々と遺族の痛みが癒されるよう最善を尽くします」。大統領がこの文章を読むのにちょうど6秒かかった。

 韓日関係の主な争点である強制動員賠償問題は、日帝強制労働被害者が韓日政府の無関心の中で自分たちの人間的な権利を取り戻すために法廷闘争を繰り広げたことから始まった。日本製鉄を相手取った損害賠償訴訟は1997年に日本で始まり、敗訴を繰り返した末、2018年10月、ついに韓国最高裁で勝訴した。

 大統領が「矛盾」だと主張した最高裁の判決について、日本の国際法専門家の阿部浩己・明治学院大学教授(国際学)は本紙とのインタビューで、このように述べた。「韓日関係だけでなく、東アジアの秩序が平和的かつ持続可能になるためには、過去の正義に反する行為、特に植民地時代に発生した問題と向き合わなければならない。韓国最高裁の判決は人間の尊厳を最優先しなければならないことを法律的観点から示した」としたうえで、「被害者の声が大きな力を発揮した」と強調した。

 20年以上もの間に、日本製鉄訴訟被害者4人のうち3人が死亡し、イ・チュンシクさん(100)だけが残った。最高裁判決後、2019年の対韓国輸出規制など日本の報復が始まると、イさんは「私のせいで韓国に被害が出てはならないのに…」と涙を流した。イさんを慰めるために小学生たちが手紙を送った。「日本ではなく、ハラボジ(おじいさん)がその責任を感じるのは胸が痛みます。これ以上自分を責めないで、幸せになってください」

 歴史問題は加害者である日本が変わらなければ根本的な解決は難しい。小学生でもわかるその事実が、尹大統領にはわからないようだ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1085916.html韓国語原文入力:2023-03-30 19:05
訳H.J

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