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[コラム]「労組は悪、青年は善」…尹大統領の危険な分断

登録:2023-02-28 02:58 修正:2023-02-28 08:55
韓国の保守既得権勢力は階級の問題を毎度のごとく別の争点にすり替えてきた。朴正煕、全斗煥の時代には不平等の解消を求める人々にアカというレッテルを貼った。民主化以降は地域で分断した。最近は世代とジェンダーで分断しはじめている。おそろしい腕前だ。
2022年7月、国会本会議中にとらえられた国民の力のクォン・ソンドン院内代表(当時)と尹錫悦大統領のやりとり。尹大統領は、党員権停止を受けたイ・ジュンソク代表に関して「内部に銃を向けた代表が交替されたので党が変わった」というメッセージを書いた=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 「近ごろ世は堕落している。贈収賄や腐敗があふれている。子どもたちはもはや親の言うことを聞かない。誰もが本を書きたがる。世の終末が明らかに近づいている」

 紀元前2800年ごろのアッシリアのタブレットに出てくる文章だ。最近出版された『金利の逆襲』の序文で紹介されている。

 「近ごろの国会議員の水準は低すぎる。昔の議員たちはそれでも品格があった」

 年配の人たちはよくこう言う。錯覚だ。国会議員の水準や品格は昔よりかなり高くなっている。変わったのは議員たちではなく、議員たちを見つめる人々の年齢だ。

 「昔の議員たち」は自分より年上だったが、「近ごろの議員たち」は自分より年下だからに過ぎない。自分より年下なら一旦は下に見える。それが人間の属性だ。

 論争で押されている時に年齢を盾にする人間はコンデ(偉ぶったり、下の者に口うるさく言う年長者)だ。コンデは卑劣だが、それでもかわいいところもある。世の中に大きな害悪を及ぼすことはない。

 だが、危機を乗り越えるために世代を分裂させる為政者は邪悪だ。世代の分裂は共同体を崩壊させる。毛沢東がそうだった。

 1950年代末、大躍進運動が失敗に終わると、毛沢東は旧思想、旧文化、旧風俗、旧慣習を打破すべきだとする四旧打破運動を展開した。学生たちをあおった。全国的に紅衛兵が結成された。紅衛兵は群れをなして歩き、古典を燃やし、知識人を処刑した。中国には今も21世紀の紅衛兵と呼ばれる「怒れる若者」がいる。

 2021年6月、尹錫悦(ユン・ソクヨル)元検察総長は大統領選への出馬を宣言した際に、このように述べた。

 「天安艦(沈没事件の生存者)の青年チョン・ジュニョンは怒っていました。K-9(自走砲爆発事件で重傷を負った生存者)の青年イ・チャンホは悔しいからではなく、忘れられないために本を書きました」

 「政府の負債急増で良い雇用先も見つけられていない青年世代は、莫大な将来の負債を抱えています。青年たちはやっとの思いで仕事を見つけても、高騰する住宅価格を見つめてため息ばかりついています。青年たちの挫折は大韓民国を人口の崖へと追いやっています」

 青年たちは政府による政策失敗の被害者だと述べたのだ。訴える力があった。青年層はあらゆる国、あらゆる政権の弱点だ。

 尹錫悦候補は大統領選挙のキャンペーンも20~30代に焦点を合わせた。MZ世代を擬人化した「ミンジ、お願い」という動画を作った。尹錫悦候補が机をパンと叩いて立ち上がり、「おい、ミンジがやってくれと言っているんだから、一度やってみよう。一緒にやればいいじゃないか」と叫ぶ。コンデの愛嬌と本気が伝わってくる。

 勢いに乗った尹錫悦候補は、世代分断にジェンダー分断を混ぜた。20代と30代の男性を集中的に攻略した。イ・ジュンソク代表が一役買った。結局、尹錫悦候補は20代と30代の男性のおかげで大統領に当選した。

 トイレは行く時と出て来た時が違うものだ。尹錫悦大統領はイ・ジュンソク代表を追い出した。20代と30代が背を向けた。国政支持率が急落した。

 その尹錫悦大統領が近ごろ、青年層に再び訴えている。今度は「強硬既得権の労働組合」の被害者としてだ。

 20日にイ・ジョンシク雇用労働部長官から労組の会計の透明性向上策について報告を受け、「既得権強硬労組の弊害を終わらせることなしに大韓民国の青年たちの未来はない」と語った。21日には建設現場の「恐喝・暴力などの組織的違法行為」の実態と対策について報告を受けた際に、「労組の既得権は若い人々に未来に対する希望をあきらめさせる略奪行為」と語った。

 尹錫悦大統領の主張は「労組は悪、青年は善」という二分法だ。典型的な保守既得権勢力のこじつけだ。

 労組には改革を怠ったという過ちはあるだろうが、本当に既得権集団なのだろうか。労組は年配者だけが加入しているのだろうか。使用者は青年層の味方なのだろうか。論理的に筋が通らない。

 22日付けの「中央日報」は「巨大強硬労組の改革なしには未来はない」という大見出しで3編もの社説を載せた。各見出しは「他人の働き口は封鎖し、裏金まで受け取った無法労組」「野党は違法ストライキに対する損害賠償請求を難しくする『黄色い封筒法』強行」「若い世代の新たな労組文化に希望を見る」というものだ。

 韓国の保守既得権勢力は階級の問題を毎度のごとく別の争点にすり替えてきた。朴正煕(パク・チョンヒ)、全斗煥(チョン・ドゥファン)の時代には不平等の解消を求める人々にアカというレッテルを貼った。民主化以降は地域で分断した。最近は世代とジェンダーで分断しはじめている。おそろしい腕前だ。大韓民国共同体の将来が心配だ。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1081413.html韓国語原文入力:2023-02-27 16:29
訳D.K

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