超大国間の国力の差が縮まったことによる汎世界的な権力再編の過程で現れた対立と衝突、新型コロナウイルス感染症の拡散、ウクライナ戦争などによる政治・経済的混沌の中で、それぞれが生き残る道を模索するニューノーマル時代を迎えた。韓国を含む全世界が、どこに行けば港を見つけられるのかも分からない真っ暗な海の上で揺れる船のような境遇に置かれている。米中対立の激化とコロナ禍の前は、韓中日は3カ国のどこに行ってもそれぞれの観光客で賑わい、中国語、日本語、韓国語が聞こえてきた。ところが、国際情勢の悪化に加え、新型コロナの拡散は状況を一変させた。韓中日首脳会議も2019年12月の中国成都で開かれた会議以来、開催されなくなった。「間(あい)が遠なりゃ契りが薄い」状態になった韓国人、中国人、日本人は今、互いを非難しあっている。
韓中日3カ国協力事務局(TCS)は、3カ国の政府によって12年前の2011年、ソウルで設立された。政府間協力機構であるTCSは、(その性格においては)インドネシア・ジャカルタに本部を置くASEANやベルギー・ブリュッセルに本部がある欧州連合(EU)と大差ない。しかし、制度化の程度や規模においてEUやASEANとは比べものにならない。TCSは韓中日出身の総長団3人と部長団4人、若い職員30人余りで構成されている。小さな「韓中日共同体」であるTCSの職員たちは、英語、韓国語、中国語、日本語など、言語を次々と変えながら会話する。彼らは昨年だけでも青年交流や3カ国の旧首都の相互紹介など120の韓中日協力プログラムを稼動した。
ソウル光化門(クァンファムン)にあるSタワーの20階に降りると、「少しぎこちないが仲良く立っている」韓中日3カ国の大型国旗、すなわち太極旗、五星紅旗、日の丸とともにTCS旗が出迎える。韓中日は1999年から3カ国首脳会議を定例開催してきた。新型コロナの拡散と共に韓中日をめぐる国際状況の悪化が3カ国首脳会議の開催を妨げた。次回の3カ国首脳会議の主催国は韓国だ。韓国政府はTCS創設の母体でもある3カ国首脳会議の再開を心から望んでいる。
3カ国首脳会議はなぜ再開されなければならないのか。第一に、3カ国首脳会議は新型コロナの拡散などによる人的交流の縮小がもたらした様々な影響を克服するのに役立つためだ。防疫と関連し、韓中日3カ国のビザ発給制限のような入国手続きの強化が行われた事例からもわかるように、3カ国首脳会議は国際ビジネスと直結した人的交流の制約要因を解消し、相手国に対して悪化した国民感情を解消するのに大きく役立つだろう。
第二に、3カ国首脳会議の開催は韓中日の経済が活力を取り戻すのに役立つ。韓中日の経済はいずれもコロナ禍、米中対立、高齢化にともなう労働力と購買力の低下、ウクライナ戦争など、悪化した国際環境により活力を失った。韓国は今年1月だけで約120億ドルの貿易赤字を記録した。3カ国首脳会議の開催は、国際社会が必要とするバリューチェーンとサプライチェーンの維持にも役立つだろう。
第三に、3カ国首脳会議は地域安保と気候変動、歴史問題などを真剣に議論する良い機会になる。朝鮮半島の安定、エネルギー、気候変動など3カ国の指導者たちが膝を突き合わせて知恵を集めなければならないイシューが多い。特に、北朝鮮が昨年9月に核兵器の先制使用の可能性を公言した状況で、朝鮮半島の安保問題についての議論は欠かせない。第四に、韓中日首脳会議を通じた3カ国の協力強化は、特に東アジアと西太平洋地域で平和と安定を促進する役割を果たせる。制度化の深化と規模の拡大など、TCSの地位向上にも役立つだろう。
韓中日3カ国がTCSの目標である恒久的平和と共同繁栄、文化的共通性の維持を達成するためには、首脳会議の再開とともに交流を持続的に増やしていく必要がある。西海(ソヘ)と大韓海峡に面した一衣帯水(きわめて近接している地域)の国、韓国・中国・日本は互いに刺激剤となって共に危機を乗り越え、平和を維持し、成長していくべきだ。そのためには、韓中日3カ国を徘徊する「排他的民族主義」という古い幽霊を心から追い出さなければならない。また、韓中日の未来のためにも、3カ国の国民は開かれた心で相手国の国民に対する理解の幅を広げていく必要がある。韓国は、中国とはもちろん日本との関係も開かれた心で発展させていかなければならない。故金大中(キム・デジュン)大統領は「天皇陛下、皇太子ご夫妻は見ているだけでも美しいカップルです」という称賛で日本人の心を掴み、金大中-小渕宣言(日韓パートナシップ宣言)を引き出すとともに、韓流の扉も開いた。