韓日関係の最大懸案である強制動員被害者賠償問題をめぐり、韓国政府が12日、公開討論会を開催する予定だ。解決策作りに向けた最終段階に入ったものとみられる。
すでに「有力な案」は示されている。日帝強制動員被害者支援財団が韓国企業から寄付を募って日本企業の代わりに被害者に先に補償をする案だ。1965年の韓日請求権協定当時、日本資金の支援を受けたポスコなどが、資金提供の候補として名前が挙げられている。韓国の裁判所で15年以上かけて闘った末、最高裁(大法院)で勝訴した被害者たちは、日本企業から賠償を受けたくても選択の余地がない。「併存的債務引受」(債権者の同意有無と関係なく、第三者が債務者と約定を結び、いったん債務を返済すること)という方式で、これを遮る予定であるからだ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が行き詰まっていた韓日関係の改善に積極的に乗り出したのは良いことだ。日本政府が強制動員問題にあまりにも頑強な態度を示してきたため、簡単に解決できると期待した人はほとんどいない。困難に満ちた大変な交渉だが、韓国社会が守らなければならない線はあった。日本の謝罪と被告企業の賠償への参加、そして被害者たちの同意がそれだ。このような内容が抜けた「有力な案」に被害者たちは強く反発している。
韓国政府自ら最高裁の判決を無力化してまでこれを推し進める理由は何だろうか。米中対立が激化し、北朝鮮の核・ミサイルによる脅威が強まる中、韓日安全保障協力の重要性が一段と増したためという意見がある。しかし、韓日安全保障協力は台湾海峡と朝鮮半島という二つの脅威に直面した日本にとっても切迫した問題だ。韓国が一方的に譲歩する理由はない。
尹大統領が新年を迎え、特定のメディアと行ったインタビューを見て、少しは疑問が解けた。尹大統領は韓日関係について、「日本は依然として強硬だが、徴用問題、特に日本企業に対する現金化問題さえ解決されれば、両国首脳の相互訪問を通じて多方面にわたる韓日関係正常化の扉を開くことができるだろう」と述べた。強制動員問題を韓日関係を妨げる障害物程度に捉えているという印象を拭えない。
尹大統領は大統領選挙当時、韓日関係の改善と関連して「金大中‐小渕共同宣言」(日本では「日韓パートナシップ宣言」と呼ばれる)を強調し「継承し発展させていく」と公約し、光復節記念式典での演説でもこのような意思を明らかにしてきた。同宣言は1998年10月8日、東京で当時の金大中(1924~2009)大統領と日本の小渕恵三首相(1937~2000)が発表した「韓日共同宣言-21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ」を指す。5分野の協力原則を含む11項目からなる。第2項には小渕首相の「植民地支配に対する痛切な反省と心からのお詫び」が明記された。
金大統領は後に自伝で、「この共同宣言は多くの原則と具体的行動計画を盛り込んでいる。その中で最も重要なのは、日本の首相による韓国への謝罪」だとしたうえで、「私は日本が過去にこだわるより、未来を見てほしいと助言した。それは過去を直視してこそできることだ」と振り返った。両首脳はより良い韓日関係のために「不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるため」大きな決断を下したのだ。これが共同宣言の要となる精神だ。尹大統領の強制動員問題への取り組み方は、果たして「金大中-小渕宣言」を読んだことはあるのかという疑念を抱かせる。ぜひ目を通してほしい。