韓米と北朝鮮の強対強対決構図が出口を見出せないまま悪化の一途をたどっている。北朝鮮は短距離と中距離の弾道ミサイルに続き、今月18日に東海岸に向けて大陸間弾道ミサイルの発射実験を行った。韓米側もB1B戦略爆撃機の前進配備で対抗した。北朝鮮に残されたのは7回目の核実験だけであり、韓国と米国は強力な対応を警告している。朝鮮半島の軍事的な緊張の高まりと安全保障をめぐる不安の悪循環が非常に懸念される。
韓国政府はこれと関連して、通常戦力と拡大抑止の強化、米国の戦略資産の随時配備と報復打撃能力の深化、合同訓練の強化と戦闘準備態勢の強化、そして3軸体制の運用で対応している。類を見ないほどの強力な対北朝鮮抑止力の構築であり、有事の際に北朝鮮を圧倒し、勝利を保障できる軍事態勢だ。
しかし、国家安全保障の要は国民の生命と安全、財産の保護にある。問題は、今の安全保障戦略が果たしてそのような目標を根本的に達成できるかどうかだ。朝鮮半島内の軍事的な脅威の本質的な非対称性のためだ。韓国は様々なものを持っているが、北朝鮮はそうではない。北朝鮮の心臓部である平壌(ピョンヤン)は戦線から遠く離れ、要塞化しているが、韓国は首都圏に全体人口の半分が密集している。北朝鮮の短距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、前方配備の放射砲の脅威にさらされているのが実情だ。これは豊かで開かれた社会の内在的な脆弱性でもある。北朝鮮が侵攻すれば、韓米連合戦力の報復反撃を通じて戦争に勝利することは確実かもしれないが、その過程で大規模な人命被害を防ぐことは難しいのも事実だ。危機を安定させる予防外交が重要なのはそのためだ。
特に懸念されるのは、ミサイルの脅威に対する防衛体制の弱点だ。もともとミサイル攻撃の防衛は、発射したミサイルを迎撃する積極防衛(active defense)、迎撃が失敗した場合に備えた防護施設の構築と民防衛訓練などの消極防衛(passive defense)、相手の攻撃意図を事前に把握した時に先制打撃を加える攻勢的防衛(offensive defense)、指揮・統制・通信・情報・偵察・監視機能を効果的に連携する戦場管理(battle management)で構成される。しかし、現時点で韓国のミサイル対応は迎撃と先制打撃だけに集中している。これまで実施してきた民防衛訓練は中断され、市民は地下鉄を除いて周辺にどのような防護施設があるのかもよく分かっていない。消極防御に裏打ちされていない迎撃と先制打撃に対する過信は恐ろしい結果を招きかねない。
米国に対する過度な依存も大きく懸念される。北朝鮮が軍事的脅威を加えるたびに、韓国政府は韓米同盟の強化を魔法のカードのように提示している。同盟が韓国の安全保障の死活的資産であることは誰も否定できない。しかし、これに対する盲信は、自主国防や外交的努力を疎かにする原因になる。さらに、韓国に対する米国の安保公約は、米国内の政治地形と直接結びついている。2024年の米大統領選挙でドナルド・トランプやそれに似た対外政策を展開する共和党候補、あるいはバーニー・サンダースのような急進的民主党候補が当選しても、韓米同盟は果たして現在と同じく保たれるだろうか。ウクライナ戦争が拡大したり、台湾海峡で米中軍事衝突が可視化したりした場合、朝鮮半島に対する米国の大規模軍事介入は難しくなり、むしろ在韓米軍削減につながりかねない。韓米同盟の可変性を過小評価してはならないという話だ。
政治と外交の基本は敵対勢力を最小化し、友好勢力を極大化すると同時に、中立勢力を包摂することにある。しかし、一部の与党幹部たちはこのような原則に逆行する動きを見せている。先日、与党「国民の力」のチョン・ジンソク非常対策委員長は、「大韓民国が痛ましい。 4つの北朝鮮に包囲された」と嘆いた。北朝鮮を含め、中国、ロシア、韓米軍事演習の中止を求める国内の革新勢力を指す発言だ。しかし、ジョー・バイデン米大統領が指摘したように、まだ新冷戦が到来したわけではなく、朝中ロ三角同盟の復元は依然として未知数だ。生半可な既成事実化で中国とロシアを北朝鮮側に追い込む理由は何なのか。見解が違うという理由で国内の革新系政治勢力を「もう一つの北朝鮮」と規定し、敵対視するのも同じだ。堅固な安保政策の基盤は国民的合意にある。これを無視して違いを誇張し、分裂を助長することは、韓国の安保態勢を砂上の楼閣にする自害行為になり得る。
抑止に劣らず危機安定性(crisis stability)を確保し、勝利よりも戦争の予防に力を入れなければならないというのは、歴史の教訓であり、この時代の常識だ。そして戦略的優位も重要だが、「市民の生命を安全保障の中心にすべき」という基本原則を忘れてはならない。今はそのようなパラダイムの転換を考えなければならない時だ。