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[寄稿]自由民主主義を名乗るものを見抜く方法

登録:2022-10-19 06:23 修正:2022-10-21 07:10
シン・ジヌク|中央大学社会学科教授
文化体育観光部のパク・ボギュン長官が5日、国会文化体育観光委員会で開かれた国政監査で、共に民主党のイム・オギョン議員から富川国際漫画祭受賞作である「尹錫悦列車」について質問を受けている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 パク・ボギュン文化体育観光部長官は、大統領を風刺した作品に賞を与えた韓国漫画映像振興会に対して、「厳重警告」をした。ユ・ビョンホ監査院事務総長は、大統領室国政企画首席と西海(ソヘ)公務員射殺事件の監査に関するメッセージをやり取りしていたことが露呈した。キム・ムンス経済社会労働委員長は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領を「銃殺に値する金日成主義者」と呼ぶなど暴言を吐いた。与党「国民の力」のチョン・ジンソク非常対策委員長もこの「金日成主義者」攻勢に加わった。ここのところ我々が見ている尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の姿だ。

 尹大統領はこれまで「自由」、「法治」、「自由民主主義」を数え切れないほど叫んできた。民主主義研究で「リベラル・デモクラシー(自由民主主義)」は選挙と多数決の原理だけでなく、市民の包括的自由と基本権保障、権力分立、法の公正な執行を備えた政治体制を意味する。その基準からして、尹錫悦政権の面々は自由民主主義者だと言えるだろうか。

 韓国のように独裁を終わらせ、民主主義を導入した多くの国では、選挙民主主義の形はあるものの、自由民主主義の中身はない政治状況が続いている。権力者たちは選挙という制度は維持しながらも、独裁時代よりはるかに巧妙な方法で民主主義を切り崩す技術を発展させてきた。学者たちはこのように、自由民主主義を名乗りながら自由民主主義を損なう方式を綿密に分析してきた。

 第一に、国家機関による組織的な世論への介入と意識操作だ。軍や警察、情報機関の要員や彼らの後援を受ける集団が、市民の世論を装ってフェイクニュースや過激な主張を大量に流す。国家によって公論の場が乱されると、政治と世論は切り離されず、選挙は民意の反映ではなくなる。こうした点で、これらの行為は自由民主主義の根本前提を破壊する。

 第二に、国家機関による情報収集と活用だ。民間人に対する査察と監視がその代表的な例だが、それよりも精巧な統制のやり方はさらに合法的な外観を装っている。国家機関に許された権限を利用し、公職者と民間人の個人情報を大量に収集、閲覧、分析して弱みを握れば、必要に応じて政治的反対者を犯罪者にし、道徳的不名誉を与える方法で無力化できる。

 第三に、市民に自由の行使が不利益をもたらすというメッセージを伝えることだ。独裁時代のように反政府関係者を拉致、拷問、傷害するのではなく、平凡な市民を見せしめとして脅し、調査、起訴するなどの合法的な行為で、これを目撃する多数の市民を萎縮させる。表現、思想、良心の自由を自ら検閲するよう促す権力の技術だ。

 第四に、法的手段を政治の道具にすることだ。政治的ライバルを名誉毀損、侮辱、職権乱用、脱税、横領、背任などの疑いで法廷に立たせる方法だ。検察や警察、監査院、国税庁などの公共機関が権力機関に変貌する。後に無罪判決を受けたとしても、犯罪者のイメージを植え付けることができる。政治的利益のための恣意的な法適用という点で法治を損なうものだが、法治を名分に政治行為ができる。

 第五に、公的権力の私有化だ。選挙で代表者を選出したが、実際の権力は国民が選出したことのない個人と組織が握っている場合だ。その陰の実力者は企業や地域の有力者、軍部、大土地所有者、権力者の友人や家族、知人など実に様々だ。彼らは選出された代表者と後援-顧客関係で利益をやりとりできるだけではなく、事実上摂政をする「後見民主主義」体制を築き上げることもできる。

 第六に、暴力的な民間の行為者を利用した恐怖政治だ。過激主義団体、テロ組織、犯罪組織、雇われたやくざ、労組破壊企業、疑似宗教団体など非国家行為者の殺人、殴打、暴言、脅迫などの暴力行為を公権力が黙認し、鼓舞して後援することで、市民の自由を制約し従順に飼いならす。国家は暴力に加担しなかったことになり、暴力の行為者は国家によって善処される。

 第七に、積極的な大衆動員だ。民主主義体制の外見を整えるためには、選挙で勝利し、多数の支持を受けているように見えなければならず、政府政策に対する国民的合意を装わなければならない。そのため、国家と市民が対立していた伝統的独裁とは異なり、政権を支持し援護する集団行動と世論動員に力を注ぐ。

 このような権力の技術は、正当性と合法性を装って、知らず知らずのうちに民主主義を腐食させ、自由を萎縮させる。自由民主主義を僭称した自由民主主義の毀損を鑑別する目が必要な時代だ。

シン・ジヌク|中央大学社会学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1063225.html韓国語原文入:2022-10-1818:39
訳H.J