本文に移動

[寄稿]「資本主義が問題だ」――なぜ問題なのか

登録:2022-10-17 02:58 修正:2022-10-17 07:47
キム・ゴンフェ|国立慶尚大学経済学部教授
「リユーザブルカップ使用時に割引」政策を展開しているスターバックスコリアは、リユーザブルカップ使用の累計注文件数が7月21日に1億件を突破したと明らかにした=スターバックスコリア提供//ハンギョレ新聞社

 日に日に息苦しくなる。地球のあちこちで報告されている異常気象現象は、気候危機が可能性ではなく現実であることを物語っているようだ。私たちはこの危機において、どのようにすれば生き延びられるだろうか。

 このような問題に早くから気づいて人類に警告してきた人々がいる。彼らは人類の目覚めと倫理的実践を強調していた。消費を減らそう、廃棄物をリサイクルしよう、環境に負担をかけずに生産された商品を消費しよう。最近の気候正義運動は様相が少し異なる。個人というより体制の方に強調点が移ったというべきか。気候危機の主犯は人間ではなく資本だ! 気候の変動ではなく(資本主義)体制の変動を! このようなスローガンは先月24日の「気候正義行進」で全国各地の路上を熱くした。

 多くの人々にとってこのような変化は勇気づけられるものであったようだ。「資本主義が問題だ!」というスローガンの前で目頭が熱くなったという「旧左派」の告白も多く聞いた。かといって個人の倫理的実践の意義を無理におとしめる必要はない。いや、まったく逆だ。気候危機が「体制」の問題であることが急速に共感を得ている今、個人の倫理的実践の価値もいつにも増して高まっているからだ。

 なぜそう言えるのか。秘密は金だ。近ごろ個人のエコ的実践に対して金銭的補償が直接なされる例が急速に増えてきている。昌原市(チャンウォンシ)の例を見てみよう。今、同市ではあちこちに透明ペットボトルと空き缶を入れれば自動的につぶして分離してくれるだけでなく、持ってきた市民にポイントを積み立ててくれる機械が設置されている。ポイントは一定水準貯まれば現金のように使える。マイボトル(タンブラー)を持参した消費者にコーヒー代を割引するコーヒーショップも、このところ大幅に増えている。従来はマイボトルの使用は単に極少数の倫理的消費者の「小さな実践」に過ぎなかった。それに対する金銭的補償も極少数の意識ある店主が行っているだけだった。今は違う。スターバックスのような大手コーヒー専門店もこの隊列に加わっている。

 個人の倫理的行為に対して金銭的補償がますます多くなされる現在の事態は、逆説的にも「問題は資本主義だ!」と主張する気候正義運動陣営に難しい挑戦を突き付けている。なぜなら、それは資本主義がエコになってきていることを示唆するからだ。もちろん、資本が今日の気候危機を生んだ主犯であることを否定するのは難しい。資本主義になってから化石燃料の使用と炭素排出が急増したのは事実だからだ。しかし、将来も絶対にそうなのだろうか。

 これは資本主義が倫理的なものに変化する可能性があるという意味ではない。資本主義は倫理を知らない。資本主義においては金儲けこそ至高の価値だ。だから、資本が自ら炭素排出を減らしたり環境を保護したりすることに積極的ならば、それが金儲けに役立つからに過ぎない。なぜ企業がマイボトルを持参する顧客にコーヒーの値段を割り引いてくれるのか。そうした方がましなほど、使い捨て紙コップを使ったり、店のカップの洗浄のために人を使ったりするのが高くなっているからだ。消費者がマイボトルを持って来れば来るほど、資本はより多くの金を稼ぐのだ。

 とはいえ、資本の立場からすると、全体的にコストが上昇したのは事実だ。コスト上昇は価格に反映されるだろうが、それは全般的な物価上昇、賃金上昇へとつながり、資本にとってはまた別の圧迫として作用しうる。にもかかわらず、資本は「エコ」を受け入れるのか。断言はできないが、十分にあり得る。なぜなら資本の世界においては、資本と労働者との対立と分配と同様に、資本間の競合も重要だからだ。いくらコストが全般的に上がっても、エコな生産構造を先んじて構築し、コスト面での優位を達成すれば、市場をすべて「自分のもの」にできるからだ。

 このようにみれば、環境にやさしく炭素排出を減らしていく資本主義というビジョンも十分に現実性を持つと言うべきだろう。問題は、貧困、少数者に対する抑圧、大企業の横暴などが今よりもさらに悪辣に人類を苦しめる可能性があるということだ。

 もちろん、エコな方向へと資本主義を転換するには国際社会の合意が必要だ。パンデミックを経てそのような合意に向かうかと思われたが、ロシアが起こした戦争と経済危機で、ムードは急速に冷え込んでいる。その風をいかにして再び起こすのか。もしかしたら、世界資本主義体制の最も高い地位にある人々の関心はそこにあるかもしれない。だからこそ、本当に体制を変えようとする人々は、その向こうを見なければならない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ゴンフェ|国立慶尚大学経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1062875.html韓国語原文入力:2022-10-16 17:38
訳D.K

関連記事