日本の岸田文雄首相の夫人は、なぜNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に行かなかったのだろうか。日本メディアのソウル特派員に聞いてみた。「参議院選挙も迫っているし、様々な状況が厳しい中、夫人が行かないことについてはメディアも当然だと考えている雰囲気だった」、「首相夫人はもともと批判されるような行動はしないスタイルだ」という答えが返ってきた。国賓訪問でもない安保関連の首脳会議への出席に夫人を伴わなかったのは自然だし、岸田首相は議題に集中しているように見えた。
一方、NATO首脳会議に招かれた初の韓国大統領として、歴史の一ページに主役として記録されたかったであろう尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の多国間外交の舞台でのデビューは、今やキム・ゴンヒ女史の「ファッションショー外交」、「陰の実力者の随行」、「Bカット写真(あまり写りの良くない写真)」問題などとしてのみ記憶されている。NATO創設70年にして初めて中国の「構造的挑戦」を明示する現場に、韓国をはじめアジア4カ国が招待されたことの意味、その得失は何であり、韓国はどのように次の行動を準備していくべきかについての討論も消え去ってしまった。
尹大統領は悔しいだろう。大統領室の関係者の宣伝能力の不足を叱ったり、野党が不当な攻撃をしていると非難したりするかもしれない。しかし、最近の世論調査で職務遂行に対する肯定評価が一斉に30%台にまで下落していることは、大多数の国民が尹大統領の外遊の成果に同意していないことを確認させてくれた。
尹大統領にとって外交とは何だろうか。尹大統領の外交路線は、韓米同盟の強化、韓日関係の改善、グローバルな舞台での韓国の役割の強化に要約できる。問題は、尹大統領が韓国の直面している厳しい現実について深く苦悩した末にこのような結論を下し、困難な状況の中で慎重に外交を行っている、という信頼を抱かせることができていないことだ。前政権を「親中(中国寄り)、従北(北朝鮮追従)、反日」と言って攻撃するために、逆の外交路線を選択しているだけではないのか。前政権ができなかった外交を自分は速戦即決で実現できるという態度は軽く、しかも危険だ。
尹大統領は韓日関係の改善で業績を示そうとしている。韓日関係を速やかに改善し、韓米日が政治、軍事、経済、国際秩序において緊密に協力すれば、多くの問題が解決されると期待する。尹大統領はNATO首脳会議の期間中に行われた韓米日首脳会議で「本日の会議を契機として、韓米日協力が世界平和と安定のための重要な中心軸として位置づけられることを期待」すると述べた。12日に安倍晋三元首相の焼香所を弔問した際に発信したメッセージも同じ脈絡だ。
尹大統領は就任前、日本に特使団を送り「文在寅(ムン・ジェイン)政権とは違う」という意志を見せればすぐに韓日首脳会談が行われ、就任するやいなや韓日関係は容易に解決されると予想していたのだろう。しかし、韓国最高裁の強制動員判決と関連して差し押さえられた日本企業の資産を強制売却(現金化)せずに済む方法を韓国政府が用意しなければ、関係改善はないという日本政府の立場は頑強だ。
政府が4日に強制動員被害の解決策を立案するための官民協議体を立ち上げ、被害者の意見を集めて解決法を模索していることは肯定的な部分だ。まず政府が被害者に賠償し、その後、日本側が参加する基金から弁済を受けるという代位弁済の解決策が議論されている。「現金化」の期限を考えると引っ張り続けるべきではないが、急いでいるからと言って韓国の原則と歴史的意味を傷つけてはならない。日本企業の謝罪と賠償への参加がなければ、被害者も国内世論も受け入れることはできない。日本側は「韓国政府は国内世論を説得できるのか」に最も注目しているという。韓日の政府同士が合意したとしても、韓国政府が被害者と世論の同意を得られなければ、より大きな後遺症が残るだけになるからだ。だが、尹大統領の支持率が急落し、「支持率にこだわらない」と大口をたたくばかりの状況では、日本も交渉に乗り出すことは困難だろう。
結局、韓日関係も外交も、国内政治という根とは切り離せない。日本での安倍晋三元首相の死亡と参議院選挙での改憲勢力の圧勝により、平和憲法の核心である9条を変えて自衛隊の存立根拠を明示するとともに、軍備増強へと向かう動きが本格化したことは、明らかに懸念されるし、韓日関係にも暗い影を落としている。しかし、粘り強く平和憲法を守ってきた日本市民の力量は依然として重要な変数だ。保守穏健派閥の宏池会を率いており、原爆を経験した広島の選挙区から選出されている岸田首相の本来の政治路線は、軽武装、経済優先、アジアの隣国との関係重視、非核だ。市場万能主義から抜け出して労働者の賃金を引き上げ、分配を増やすという岸田首相の「新しい資本主義」路線も注目すべき部分だ。
市場の自由ばかりを強調する尹大統領の民生ドライブは根がなく虚しい。韓日関係においても焦りを捨て、なぜ関係を改善しようとしているのか、韓日の複雑な歴史において韓国が守るべき線はどこにあるのかを明確にするとともに、世論の同意を得る努力もしなければならない。前政権が「有罪」であることを示すための外交、自分にとって最も安心できて慣れている捜査と査定によって危機を脱しようとする政治では、内政も外交もますますめちゃくちゃになるだろう。捜査で大統領になったとしても、捜査で統治はできない。
パク・ミンヒ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )