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[山口二郎コラム] 参議院選挙以後の日本政治

登録:2022-07-04 09:09 修正:2022-07-04 10:05

現在日本では、7月10日の投票日に向けて参議院選挙の戦いが続いている。日本の憲法の規定によれば、衆議院選挙の後には必ず総理大臣の指名選挙が行われるので、衆議院選挙は政権の選択に直結する。これに対して、参議院選挙は国民が政治に対する不満を表現する場となることが多かった。この30年ほどの間、参議院選挙の結果が、しばしば政治を大きく動かす引き金になった。

  1989年の参議院選挙は、日本政治の動乱の始まりとなった。この時、大規模な政治腐敗と消費税の導入で自民党の支持は激減し、参議院の過半数を失った。そして、社会党が大勝した。この時の社会党委員長は、日本政治史上初の女性党首だった土井たか子で、女性の政治参加が拡大するきっかけともなった。

 1990年代は、政治改革と政党再編の十年となった。衆議院の選挙制度が変更され、二大政党制の樹立を促進するという目的の下で、小選挙区制が導入された。新しい選挙制度の下で、自民党に対抗する野党の結集の試みが繰り返された。1998年に結成された民主党は、2009年の衆議院選挙で大勝し、政権交代を実現した。これで90年代以来の政治改革のプロジェクトは実現されたかに見えた。

 しかし、民主党は政権の座にありながら、消費税率引き上げをめぐって分裂し、2012年末の衆議院選挙で大敗し、政権はわずか3年で終わった。政権交代は、国民の意識のなかでは、2011年3月の東日本大震災と原子力発電所事故の暗い記憶と結びつけられてしまった。その後、民主党の流れをくむ政党は離合集散を繰り返しており、野党への支持は低いままである。

 この30年の政治の流れを長々と書いたのは、この参議院選挙が30年余りの日本政治の模索に終止符を打ち、次の段階に移行する転機となるかもしれないからである。大統領制を取る韓国と異なり、日本では総理大臣を国会で選ぶ。だから、政治を変えるためには今の政権与党、自民党に対抗する大きな野党を作ることが不可欠である。現在の野党第一党、立憲民主党は他の野党に結集を呼び掛けたが、野党の分断は続いている。古い中国の歴史書に、鶏口牛後という言葉がある。大きな組織の末端よりも、小さな組織の先頭にいる方がよいという意味である。日本の野党の指導者は、この教訓を実践している。中には、政権交代をあきらめて、自民党に政策を提案し、わずかな譲歩を得て喜んでいる政党もある。こうなると、大きな野党を作ることは不可能で、自民党は容易に政権を維持できる。この参議院選挙で立憲民主党が後退すれば、野党陣営の軸が不在になるだろう。政権交代可能な政党システムを求めた努力がすべて失敗に終わることになる。

 しかも、自民党が大勝すれば、政策的な位置取りにおいては、圧倒的に保守化、右傾化が進むことになる。自民党の幹部は、ロシアによるウクライナ侵攻に呼応して、防衛費の倍増、憲法9条の改正を唱えている。岸田文雄首相はこれらの点についてあいまいな態度を取っているが、選挙の後には国民の支持を得たとして、改憲の動きが具体化するかもしれない。つまり、この参議院選挙は戦後70年余り、日本が曲がりなりにも保持してきた平和国家の路線を転換するきっかけになるかもしれない。

 国民自身が熟慮と熟議を重ねたうえで、そのような政策転換を選ぶのならば、仕方ない。しかし、現在の日本人の政治に対する関心は低いままである。2010年代以来の国政選挙の投票率は50%台の前半で推移している。この参議院選挙の投票率は50%を割る可能性もあると予想されている。日本では複数政党制が存在し、自由な政治活動も保護されている。しかし、日本の民主主義は形式面では立派でも、実質的には空洞化している。選挙戦の中で各党が議論を深めることを願うばかりである。

//ハンギョレ新聞社

山口二郎|法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

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