21日に衝撃的な研究結果が発表された。米国予防医学専門委員会(USPSTF)が、ビタミンとミネラルのサプリメント(栄養補助食品)はがん、心血管疾患、死亡の予防に役立たないとし、それだけでなくベータカロチン(ビタミンA)とビタミンEの使用には明示的に反対すると発表したのだ。ベータカロチンは肺がんのリスクを高め、その他有害な効果と関係するとも述べている。研究結果は権威を誇る米国医師会の学術誌「JAMA」に掲載された。
USPSTFは疾病予防と根拠が中心の医療専門家たちが自発的に参加する独立的団体だが、公益性と信頼性を認められ、米国政府から人的、財政的支援を受けている。今回の研究は84編の論文をメタ分析したもの。メタ分析とは、多くの論文のデータを集めて再分析する方法で、標本サイズが大きくなるため誤差が減り、検定力が向上する。研究の被験者数は実に74万人にのぼる。一般の研究とは比較にならないほど信頼性がある。
このような研究は初めてではない。2007年にデンマークで23万人をメタ分析し、ビタミン剤は健康に全く役に立たず、むしろ「死亡率を高める」という結果が出たのが代表的な例だ。韓国でも似たような結果が報告されている。では、ビタミンとサプリメントの市場は今後、打撃を受けるだろうか。受けないだろう。ビタミン産業の規模は、世界的に見て年間売り上げが30兆ウォン(約3兆1600億円)、韓国は3000億~7000億(約314億~732億円)の水準だ。これほどの金は命を持つようになる。知っていながらも良心を売る「専門家」たちと、知らないくせに知っているふりをする似非が、あらゆる長広舌で反論するだろう。資本とSNSがつながる世の中においては、科学は遠くマーケティングは近い。ここで二つのことを考えてみたい。
まず、不足していない人がビタミンを飲んで健康に役立つだろうか。貧しい国でビタミン欠乏により失明の危機に瀕している人にビタミン剤を投与することには誰も反対しない。医学的にも、妊婦や消化吸収障害の患者にはビタミンを処方する。しかし、食べていけている、果ては肥満を心配している人もビタミン剤を飲むべきなのか。大半の医師や栄養学者は否定的だ。足りないなら補わなければならないが、足りているのにさらに飲んでも良いことはない。空腹ならご飯を食べるが、腹いっぱいなのに食べ続ければ腹をこわす。
第2に、ビタミン製剤と食事から摂取するビタミンは同じだろうか。科学的研究は、ビタミン剤は食べ物から摂取するビタミンとは異なり、健康を害する恐れがあると警告する。実はそれは常識だ。新鮮な果物や野菜、肉や穀物にはビタミンのほかにも多くの栄養素が含まれている。また、食事の目的は栄養摂取に限られるものではない。見たり、香りをかいだり、味や質感を感じたりするのが生命の営みだ。大切な人と一緒なら言うことはない。
私たちはなぜビタミンが捨てられないのか。「不安」のせいだ。私たちは忙しすぎる。いつも何か誤った生き方をしているような気がする。そんな中、忙しく過ごしていた誰かががんや脳卒中にかかったと聞かされる。不安だ。ビタミンであれ高麗人参であれプロバイオティクスであれ、手に入るものはすべて取りそろえたい。不安な人には物を売りやすい。金を握っている者たちがそれを知らないはずがない。「いつも疲れているだろ? 集中もできないし、意欲もないだろ? 自分の生活を振り返ってみろよ。朝食は取らず、昼食はハンバーガー、夕食はサムギョプサルに焼酎…。子どもたちはどうだ? 何を食べているのかちゃんと見てるか? さあ、お前のために準備してやった。これ一粒でいいんだ…」。このようなマーケティングに業界は天文学的な費用をつぎ込んでいる。
人々は、ビタミンには大きな副作用がなく、値段も安いので保険だと考えて飲む。今回の研究で、ビタミン剤に効果はなく、かなり大きな副作用があるかもしれないということが明らかになった。明らかな副作用もある。ビタミンを慰めとすることで、健康に傾けるべき努力に背を向けることだ。健康的な食べ物をバランスよく摂取し、規則的に運動し、適正体重を維持し、タバコを止めるべきなのだ。高血圧や糖尿病があれば積極的に調節し、定期検診を受けなければならない。不安に対処する方法はただ一つ。一時的な間に合わせの対策を捨て、正面から立ち向かうことだ。
カン・ビョンチョル|小児青少年科専門医 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )