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[コラム]「愛妻家」尹大統領が今なすべきこと

登録:2022-06-24 02:32 修正:2022-06-25 10:14
キム・ゴンヒ女史(前列中央)が13日、慶尚南道金海の烽下村の盧武鉉元大統領の墓を参拝している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 今年初めに波紋を呼んだキム・ゴンヒ女史の「7時間録音記録」の中には、私を含む周囲の既婚女性たちが「釘付けになった」部分がある。「私は(ご飯は)ぜんぜん作らない。うちの夫が全部やるのよ」(うらやましい!)。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が料理の達人だけが使うというステンレスのフライパンの上でフライ返しとしゃもじで卵焼きの形を整えている時に、推測はしていた。彼は政界進出宣言後に開設したSNS公式アカウントに、自身のことを「愛妻家」と書いている。

 何事もはばからない尹大統領の弱点は「妻への愛」のようだ。大統領選挙期間中にキム女史の虚偽履歴記載が問題になった時には、「問題ない」と言って引っ張り、世論の袋叩きにあった。出勤途中の囲み取材で初めて守勢的な姿勢を示したのも、やはりキム女史の件だった。彼はキム女史の烽下村(ポンハマウル)訪問時の同行人問題について「大統領をやるのは初めてなので(分からない)」、「良い方法があれば教えてほしい」と述べて「過度に人間的な」顔をあらわにした。大統領選の時も就任後も、尹大統領の支持率下落の原因にはキム女史の存在がある。「キム・ゴンヒ・リスク」が普通名詞のように使われる今、尹大統領はリスク管理をしているのか。いや、できるのか。

 キム女史は昨年12月、「夫が大統領になっても妻の役割だけを忠実に行う」と述べて頭を下げたが、尹大統領の就任後には活発な対外活動を開始した。そもそも守るのは難しい約束だったのかもしれない。大統領の配偶者は民間人だが、大統領という憲法機関のそばで「剰余権力」を行使する。国内外の主要行事に大統領とともに参加し、時には大統領に代わる意味を持つ。だから大統領の配偶者のすべての行動は公式なものだ。公開か非公開かがあるにすぎない。キム女史は29日(現地時間)にスペインのマドリードで行われるNATO首脳会議にも出席するという。外交の舞台に公式デビューするわけだ。事ここに至ったからには、尹大統領夫妻は約束が守れなかったことを国民に謝罪し、理解を求めるべきだ。

 キム女史の幅広い行動の周囲には「裏のつながり」がちらつく。先月末、大統領とその配偶者の動線、1級保安区域である大統領執務室内の写真が、個人のファンクラブという私的なルートを通じて事もなげに流出した。物議を醸した後も、尹大統領夫妻が映画鑑賞している未公開写真がキム女史のファンクラブに公開された。警告措置がなかったということだ。キム女史の烽下村訪問に同行した「10年来の知己」だというK教授は、キム女史が5月に丹陽(タニャン)の救仁寺(クインサ)を訪問した際にもそばにいた。同氏は尹大統領の選挙対策委員会で生活文化芸術支援本部長を、政権引き継ぎ委員会では社会福祉文化分科委員会の諮問委員を務めている。キム女史の私的な縁が公的領域へと浸透しているのだ。尹大統領の黙認または幇助なしには不可能だ。キム女史の実兄はキャンプ(大統領選での尹候補陣営)活動に続き、尹大統領の当選後には親交のある記者たちにキム女史の服やカバンの情報、写真などを提供したという。キム女史が運営していたコバナコンテンツの2人の職員は大統領室の正式職員として採用され、いわゆる「官邸チーム」でキム女史を支援する予定だという。関連職務の経験のない人物を個人的な縁で採用するのは、不適切であるばかりでなく、必然的に「裏のつながり」という批判を招かざるを得ない。そのうえ、誰が見てもキム女史の側近である彼らを、大統領室の誰が統制できるのか。

 キム女史をめぐる批判の根底には、キム女史が「統制されない権力」になりうるという懸念がある。配偶者を担当する第2付属室の復活を求める意見が与野党を問わず絶えないのは、この組織が大統領の配偶者とその側近たちの国政介入を防ぐ防波堤の役割を果たしてきたからだ。選出されていない、しかし強大な権力を行使する大統領の配偶者のそばには、「人」ではなく「システム」がなければならない。現在の大統領室には、配偶者を含む大統領の親類縁者を管理し監察するシステムが存在しない。政府発足から2カ月も経っていない時点で、すでにキム女史の人事介入の噂が広がっており、友人や家族との「裏のつながり」の批判が起きている。正常な状況ではない。結局は尹大統領の決断だ。大統領の配偶者は私人の妻ではなく、大韓民国の代表的な公人だ。キム女史の公的地位を明確にしたうえで、第2付属室またはそれに準ずる別の組織がキム女史を補佐し、同時に制御しなければならない。「愛妻家」尹大統領にとって本当の妻のための道とは、キム女史を取り巻いている人のカーテンを取り払い、その場にシステムを据えることだ。

//ハンギョレ新聞社

チェ・ヘジョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1048280.html韓国語原文入力:2022-06-23 18:33
訳D.K

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