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[社説]新旧権力の対立激化、政略的な利用はすべきでない

登録:2022-06-20 03:04 修正:2022-06-20 08:24
2020年9月に北朝鮮軍に殺害された海水部西海漁業指導管理団所属の漁業指導員イ・デジュンさんの配偶者が、ソウル瑞草区のソウル地方弁護士会弁護士会館で、同事件についての前日の大統領室と海洋警察の発表を受けての17日の記者会見で、イさんの息子が尹錫悦大統領に宛てた手紙を代読しているのを聞いて涙を流している。左はイ・デジュンさんの兄のイ・レジンさん/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足からわずか1カ月で、新旧権力の対立が激化する様相を呈している。西海(ソヘ)公務員殺害事件の捜査結果の覆し、産業通商資源部「ブラックリスト」疑惑に対する速攻捜査、任期制機関長に対する辞職圧力など、尹錫悦政権が前政権に狙いを定めている。一つひとつ敏感で爆発力のある事案であるため、与野党が激しく対立している。しかし、政界が互いに反発を増幅させるあり方は、問題解決や真実の究明を遠ざけるだけだ。

 最も熱い問題は「西海公務員殺害事件」だ。監査院は17日、海洋警察庁や国防部などに対して、2020年9月に北朝鮮軍に射殺されたイ・デジュンさんが「自ら越北(北朝鮮に渡ること)した情況がある」と判断した経緯などについての監査に着手した。

 当時、イさんの「越北か漂流か」をめぐる過度な論争が、北朝鮮の反人道的行為、そして国家の国民生命権の保護義務という事の本質をぼかしてしまったことは否定できない。国家安保的考慮と法の規定に沿うよう可能な限り資料を公開し、真相を究明することが必要だ。しかし、これに対して国民の力のクォン・ソンドン院内代表が「ネロナムブル(「自分のしたことはロマンス、他人がすれば不倫」の略語で、ダブルスタンダードの意味)以上の北ロナムブル」と言ったり、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領を狙い撃ちにした攻勢を繰り広げたりしているのは不適切だ。北朝鮮に関する諜報資料は下手に公開できないという現実は、与党もよく知っているだろう。「新たな理念論」だとして反発する共に民主党も、「真相究明より国民生活の方が重要だ」というような態度は責任ある公党の姿勢ではない。当時の判断の根拠と状況を最大限国民の前で説明することが優先されなければならない。

 産業部ブラックリスト捜査は、ペク・ウンギュ元長官に続き大統領府での勤務歴のあるパク・サンヒョク民主党議員が捜査線上にあがっていることで、大統領府による介入の可能性を前提に上層部へと向かっている。政権初期に野党に対する類例のない速攻が繰り広げられる一方で、大統領夫人のキム・ゴンヒ女史の株価操作疑惑についての捜査が進められているという話は聞こえない。文在寅政権に任命されたチョン・ヒョンヒ国民権益委員長とハン・サンヒョク放送通信委員長を国務会議から排除するなど、任期が保障された独立機関の長に対して露骨に「身を引け」と迫っていることもまた、尹政権の「法に則って」という基調と合わない。そのうえ、大統領室は文在寅政権の「情報公開請求控訴事件」のリストを把握していることが知られている。これには文前大統領夫人であるキム・ジョンスク女史の衣服代をめぐる「秘書室特別活動費などの情報公開請求の件」が含まれている。新旧権力の衝突は政界では関心事だろうが、眺めている国民にとっては疲労と冷笑感ばかりが募る恐れがある。政略的態度は「逆風」を招きうるということを、与野党は肝に銘じてほしい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1047605.html韓国語原文入力:2022-06-19 18:51
訳D.K

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