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[特派員コラム]プーチン大統領の最大の敵は21世紀そのものだ

登録:2022-04-15 07:09 修正:2022-04-15 08:20
イ・ボニョン|ワシントン特派員
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が11日午後、ソウル永登浦区の国会図書館の大講堂で与野党議員を相手にオンライン演説をしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 欧州の人々の考えでは、脅威は代々東側から来ることが多かった。ペルシア、フン族、サラセン人、モンゴル、チュルク系民族がそうだった。現代ではロシアが恐怖の対象だ。今の欧州の人々は、そのことをまたも痛感しているはずだ。そのような点でウクライナの境遇は、オスマントルコの侵略に苦しんだ東ローマ帝国に似ていた。東ローマ帝国は、自分たちが崩壊すれば欧州のキリスト教文明全体が征服されるだろうといった。ウクライナも同様に、次は欧州全体の番になりうると主張している。

 東ローマ帝国は西欧に捨てられたが、ウクライナは多くの支援と応援を受けている点では異なる。オスマントルコの侵略に苦しんだ東ローマ帝国皇帝のマヌエル2世パレオロゴスは、助けを求めるために1399~1403年、英国、フランス、ミラノ公国などを歴訪した。ローマ教皇、デンマーク女王、アラゴン(現在のスペインの一部)王にも特使を送り救援を懇願した。彼は歓迎は受けたものの長期の歴訪から手ぶらで帰り、東ローマ帝国は50年後に1000年の歴史に幕を閉じた。

 多くの年月を飛び越え、東の巨大な敵に直面した国が西欧に支援を訴える方法は、文字通り超現実的に変わった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、外国の議会で大型画面を通じてオンライン演説を行い、ロシア軍撃退の必要性を強調し支援を訴えた。米国議会では真珠湾攻撃を取り上げた。英国ではウィンストン・チャーチルの演説を借りて使った。スペインではナチスのゲルニカ空襲をロシア軍の行為にたとえた。韓国では朝鮮戦争を想起させた。侵略された国家の指導者の移動は容易ではないが、ゼレンスキー大統領はどこでも画面に現れ、他国の指導者と市民の心を動かしている。

 数百年前の東ローマ帝国と比べるまでもない。第2次世界大戦末期の1945年1~2月、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領は、ヤルタ会談などに参加するために、1カ月以上かけて船と飛行機で2万2000キロメートルを超える旅行をした。病弱なルーズベルトがそれから1カ月ほど後の戦争終結を見ることなく亡くなったのは、長時間の旅行が決定的だったという分析が多い。

 ウクライナ戦争は「デジタル戦争」であり「リアルタイム戦争」でもある。戦争の状況とロシア軍の態度は、現場に駆けつけた記者団だけでなく、現地の人たちのSNSを通じてただちに伝えられる。地球の反対側でも、スマートフォンで惨状をすぐに知ることになる。そのスピードと同レベルで公憤もすみやかに広がる。斥候兵が命をかけて把握した敵の動向は、すでに民間衛星の写真からもある程度は把握されており、世界の人々に広まっていく。数年かけて行われたアウシュビッツ大虐殺の惨状を、連合軍がそこを解放した後に世界の人々が知った時とは、まったく違っている。

 ロシアが強力なサイバー戦能力を持っていたとしても、世界の世論を動かすサイバー戦では完全に敗れている。暴露されるのは、軍事的無気力や民間人虐殺だけではない。女性を性的暴行し民家から貴重品はもちろん衣類まで略奪する態度は、インターネットに乗って時々刻々と伝播する。占領地で多くの女性を性的暴行し、服から靴まで手あたり次第に本国に送った第2次世界大戦時のソ連軍の犯罪に満ちて下劣な姿に似たロシア軍の態度が、相次いで公開されている。オーストリアのアレクサンダー・シャレンベルク外相によると、11日にカール・ネーハマー首相がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に会う前に、「事実上、道徳的に敗北したということを、彼に直接言わなければならない」と語ったという。

 現段階では、プーチン大統領が「道徳的敗北」を現実として受け入れ、行動を変える可能性は低いとみられる。しかし、ふたたび戦争を起こそうとする誰かがいるとすれば、21世紀の戦争は過去とは次元が違う途方もない負担を甘受する必要があるということを理解しなければならない。

//ハンギョレ新聞社

イ・ボニョン|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1038948.html韓国語原文入力:2022-04-15 02:36
訳M.S

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