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[コラム]ユン候補の冷戦式思考、「新冷戦の海」渡って行けるのか

登録:2022-03-03 03:11 修正:2022-03-03 08:22
21世紀の新冷戦時代と向き合う姿勢は、20世紀の冷戦時代のそれと同じではありえない。世の中はもう過去に引き戻すことができないほど変わっている。ユン・ソクヨル候補の外交安保に対する認識を見て心配になるのは、まさにこのことだ。最重要の同盟国である米国が中国と対決するから韓国も中国と対立し、米国は日本が好きだから日本と軍事同盟すら結ぶという発想は、時代錯誤的な冷戦式の考え方だ。
2日午後、国会本館前の階段で、1300人あまりの少将以上の予備役軍人が国民の力のユン・ソクヨル候補支持を宣言し、敬礼している。これほど多くの少将以上の予備役が特定の大統領候補を支持するのは、軍部政権以降で初という=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 「今や核戦争を心配しなければならないのですか」

 先月28日、ホワイトハウスでの行事の途中、米国のジョー・バイデン大統領に投げかけられたある記者の問いは、核戦争に関するものだった。もちろんバイデン大統領は「ノー」ときっぱり否定したが、公式の席上でこうした質問が出たのは、世界が新たな対決の時代に入りつつあることを象徴的に示している。ロシアのウクライナ侵攻は、1945年の第2次世界大戦終結後、最も不安定で危険な状況へと欧州大陸を追いやった。ヒトラーの悪夢という過去を持つドイツが国防費を大幅に増やすことを表明したのが代表的な例だ。米中対立に加えて、半世紀前のような巨大な戦線の絵が地球儀上に描かれるかもしれない。中国・ロシアと米国との対決、そして核放棄の見返りとして得た安全保障覚書が紙切れに過ぎないということを示したウクライナの事態は、北朝鮮をさらに強硬に導き、核問題の解決に暗い影を落とす可能性が高い。

 しかし21世紀の「新冷戦時代」と向き合う姿勢は、20世紀の「冷戦時代」のそれと同じではありえない。世の中はもう過去に引き戻すことができないほど変わっている。ユン・ソクヨル候補の外交安保に対する認識を見て心配になるのは、まさにこのことだ。「中国憎悪」発言をはばからず、日本の自衛隊は有事の際に朝鮮半島に進駐しうるというふうに韓米日軍事同盟に執着する態度は、時代遅れの冷戦式思考の発露にすぎない。最重要の同盟国である米国が中国と対決するから韓国も中国と対立し、米国は日本が好きだから日本と軍事同盟すら結ぶという発想が、今の時代に現実的に作動しうるのだろうか。このような時代錯誤の認識で21世紀の北東アジア情勢を切り抜けてゆくというのは、いかに危険千万であるか。そのうえで金大中(キム・デジュン)と盧武鉉(ノ・ムヒョン)の精神を継承するとは、このような詭弁がいったいどこにあるのかと思う。

 1960~70年代の冷戦時代には、それでも米国の傘の下で静かに米国に従うことは、韓国の利益と一定部分合致する面があった。米軍のはまっていた泥沼であるベトナム戦争に韓国軍を派兵したことは批判される余地が十分にあるものの、それによって相当な経済的・軍事的利得を得たのは事実だ。ソ連、中国、北朝鮮とは壁で完全に隔てられていたのだから、彼らと交流する理由も必要もなかった時代だった。

 しかし今は違う。1989年のベルリンの壁の崩壊とともに冷戦の幕が下りて以降、世界は左右陣営の枠組みを脱して国益と人類愛的価値を中心として動く時代に入った。今の韓国と中国の貿易規模は、韓米と韓日の貿易量の合計を上回る。猛虎部隊がベトナムに初上陸した1965年に30億ドルだった国内総生産(GDP)は、2021年には1兆8000億ドルを超えており、韓国は世界10位以内に入る経済大国へと成長した。北朝鮮との経済交流が可能になれば、労働力と市場の面で波及力は巨大なものとなるだろう。にもかかわらず、半世紀前のように朝鮮半島の北側とは壁を作って米国、日本との三角同盟ばかりを叫んでいることが、果たして可能だろうか。

 韓米同盟を基本としつつも、中国との経済的協力関係を模索することこそ、韓国が向かうべき方向だ。「同盟」とは、危機の際に助け合うものだ。有事の際に日本の自衛隊の韓国進出を許すというなら、日中または北朝鮮と日本が対立した際に、韓国軍は日本の側に立って戦うべきだと考えているのか。嫌中、嫌北朝鮮感情に便乗するユン・ソクヨル候補の外交安保政策には、このような現実的な苦悩はないようにみえる。

 さらに心配なのは、ユン候補は新冷戦時代の変化を正確に理解しているのかという点だ。朴槿恵(パク・クネ)大統領のTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備が問題となったのは、配備そのものよりも同大統領の理解できない態度に起因するところが大きかった。2015年9月に天安門で行われた中国の戦勝節の軍事パレードにロシアのプーチン大統領とともに出席し、米国を仰天させた朴大統領は、それほど間をおかず日本と秘密軍事情報保護協定を締結し、突如として韓日「慰安婦」合意も結んだ。そして翌年には米国のTHAAD発射台を突如配備しているのだから、戦勝節出席とTHAAD配備がもたらす波紋を朴大統領がきちんと認識していたのか、疑問がぬぐえない。

 今の状況も同じだ。韓米日軍事同盟とTHAADの首都圏配備をはばかることなく語るユン・ソクヨル候補は、その意味とそれがもたらす波紋をきちんと理解しているのだろうか。過去の冷戦とは全く異なる次元の対応が要求される21世紀の新冷戦時代にも、ひたすら反共・反北朝鮮ばかりを叫んでいればよいと信じているのではないだろうか。検察の捜査のように強引に推し進め、怒鳴りつけているだけでは、見違えるほど成長した「大韓民国号」を指揮し、数多くの氷山を避けつつ前に進むのは不可能であろう。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1033189.html韓国語原文入力:2022-03-02 16:22
訳D.K

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