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[寄稿]ウクライナ危機、朝鮮半島は新たな世界を切り開けるのか

登録:2022-02-22 07:51 修正:2022-02-22 09:11
プーチンは「現状」を揺さぶっている。力を使ってでもロシアの不満を公開し、この構造的暴力を少しでも調整しようとしているのだ。ウクライナで騒いではいるが、米国とNATOに協議案を提示し、現状変更を試みている。まだ米国には「現状」を変えるつもりはない。現在の構造は米国が多くの資源を投資して構築したものであり、そのような理由があるものだ。ロシアのウクライナ侵攻の可能性を浮上させればさせるほど、ロシアの構造的暴力はスポットに照らされ、米国の構造的暴力はその影に隠れる。
ウクライナ政府軍が17日、北東部のハリコフの検問所で話を交わしている=ハリコフ/AP・聯合ニュース

 「今現在、私はプーチン大統領が決意したことを確信しています」

 米国のジョー・バイデン大統領が公言した。ウクライナ国境に集結したロシア軍が、近い将来に攻撃を始めるという懸念が広まった時だった。具体的な日付と作戦計画まで飛び交っていた。ついに18日、バイデン大統領がプーチンの「決意」に言及した。「ロシア軍が数週間内か数日内にウクライナを攻撃する計画と意図を持っている」

 プーチンはなぜ、このようなことをするのだろうか。バイデンはなぜ、このようなことをすべて公開するのだろうか。朝鮮半島と東アジアは大丈夫なのだろうか。

 プーチンの行動は危険だ。近隣国家の国境に10万を超える軍事力を集結させておき、威嚇のように訓練を進めることは挑発的だ。この渦中に黒海艦隊などを動員し、核戦力訓練を行い、プーチンがクレムリン宮の作戦室でベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とともにこの訓練を見守る様子を公開した。“ちょうど”ウクライナ東部のドンバス地方で政府軍と反乱軍の間で交戦が激化し、戦争につながりかねない状況が醸成されていたりもする。いかなる理由であっても、ロシア軍がウクライナ国境を越え進攻すれば、領土と国境に対する国際法と秩序に違反する暴挙になるはずだ。

 いくら厳しく警告しても行き過ぎではない。万が一侵攻すれば、ロシアはそれに相応する対価を払うのが当然だ。

 しかし、プーチンがはたしてそのような「決心」をしたのか、ロシアがそのような決心を執行するのかは、まだ分からない。今はただ座って見守るのではなく、プーチンがなぜこのような行動を示すのかを冷徹に分析し、「対症療法」ではなく根本的な「治療策」を設けることが急がれる。

 多くの分析家がすでに指摘しているように、プーチンの危険な行動にはさまざまな要素が作用している。プーチンの政治的野望や、ロシアとウクライナそれぞれの国内政治・経済だけでなく、ロシアとウクライナの「特殊な関係」、ウクライナ内部のロシア系少数民族、キエフ協定の不完全な執行など、複雑で多岐にわたる理由が絡んでいる。絡みあった理由が現在の危機に気化したことには、構造的暴力が作動している。

 ロシアの軍事力がウクライナを圧倒して余りあることは、すべての人が知っている構造的暴力だ。ロシアの国防費だけを見ても、ウクライナの10倍を超える。ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)という軍事同盟に加入するという「夢」をみる理由の一つでもある。さらに、視野を全世界的に拡大すると、より大きな構造的暴力がある。米国とNATOの軍事力は、ロシアを圧倒して余りある。米国の国防費はロシアの12倍を超える。NATO加盟国のうち、英国、ドイツ、フランスの国防費だけを合わせても、ロシアの3倍に近い。ロシアにはそれでも頼れる核兵器があるが、これを無力化できるミサイル防衛システムがポーランドとルーマニアに構築されており、モスクワを数分以内に攻撃可能な中距離ミサイルがロシアの近隣に配備されようとしている。ロシアは欧州の「ウクライナ」だ。

 そういう背景のもと、プーチンは「現状」を揺さぶっているのだ。それでも、30年ほど前よりは力を回復したので、その程度は可能だということだ。力を使ってでもロシアの不満を公開し、この構造的暴力を少しでも調整しようとしているのだ。ウクライナで騒いではいるが、米国とNATOに協議案を提示し、現状変更を試みている。

 しかし、まだ米国には「現状」を変えるつもりはない。現在の構造は米国が多くの資源を投資して構築したものであり、そのような理由があるものだ。いまだに力で現状を維持しようとしているのだ。だから、現状を揺さぶるロシアは「挑発的」な勢力だ。ロシアのウクライナ侵攻の可能性を浮上させればさせるほど、ロシアの構造的暴力はスポットに照らされ、米国の構造的暴力はその影に隠れる。

 今回、ウクライナをめぐり起きている対立は、世界で権力が転移する時期に現れる典型的な姿だ。「現状」を揺さぶる勢力と「現状」を守ろうとする勢力の間の競争と対立は、ウクライナに限らないだろう。また、何日あるいは何週間のうちには終わらないだろう。東アジアには台湾海峡、南シナ海、朝鮮半島などが権力転移の競争の弱みとして残っている。その弱みから、火山が噴火するようにいつでも爆発することがありうる。

 それでウクライナ問題は、朝鮮半島と東アジアに歴史的な質問を投げかける。この混乱の噴出期に噴火する活火山になるのか。あるいは、混沌の渦の中で新たな世界を切り開くのか。朝鮮半島は少なくとも1919年の3・1運動の時から、現代性の矛盾に揉まれている。いま朝鮮半島は再び、経験したことのある未来と経験のない新たな世界の始まりの分かれ目に立っている。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン|国際基督教大学アーツ・サイエンス学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1031855.html韓国語原文入力:2022-02-21 09:17
訳M.S

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