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[寄稿]韓国で移住民として生きるということ

登録:2022-01-18 01:26 修正:2022-01-18 09:15
キム・ウォンギュ|弁護士・国家人権委員会元職員

 私は富川(プチョン)で「移住民法律支援センター『モモ』」という名の法律事務所を開いている。東南アジア出身の移住民たちが直面する多くの生活上の困難を目の当たりにしてきた。ここでは代表的な3つの事例を紹介する。

 事件1。40歳の男性Aさんの賃金未払い。Aさんは2020年に○○市にある小さな会社で働いていたが、賃金240万ウォン(約23万1000円)を1年近く受け取れていなかった。Aさんは私に勤労監督官が作成した未払い賃金確認書を持ってきて、助けてほしいと頼んだ。Aさんは2018年に韓国にやって来て工場に就職したが、仕事を始めて10日後に親指を除く左手の4本の指をすべて失う労働災害に遭った。労災療養後にようやく就職した職場で賃金を受け取れていなかったのだ。Aさんはソウル△△地裁に調停を申し立てた。調停期日に社長は1カ月後に支給すると約束したが、3カ月が過ぎた今も支給していない。電話も止めてしまった。Lさんは未払い賃金240万ウォンをいまだに受け取れていない。

 事件2。29歳の女性Bさんの交通事故。Bさんは××市にある小さな会社に勤めている。東南アジア出身者は電動アシスト付き自転車をよく利用する。Bさんはある朝、自転車で町の市場通りを通っていたところ、突然飛び出してきた小学生とぶつかってしまった。この事故で子どもは歯が2本抜ける怪我をした。Bさんは現在、子どもに怪我をさせてしまったという罪悪感に加えて、もうすぐビザ延長審査期間になるのに、今回の交通事故のせいでビザ延長申請が拒否されるのではないかと心配でならない。このような事情から、Bさんは相手と損害賠償の金額をめぐり争う余裕がない。Bさんは250万ウォン(約24万1000円)ほどの月給の3倍近い損害賠償金を用意するため奔走している。

 事件3。29歳の女性Cさんのビザ変更。国際結婚した姉の招きで韓国にやって来たCさんは、インターネットで未婚だと称する男性と出会って交際し、妊娠した。Cさんが妊娠を告げると、その男性は連絡を絶ってしまった。しかし、堕胎を罪悪視する宗教の国で生まれたCさんには堕胎は考えられず、1人で出産した。子どもは訴訟で韓国国籍を取得した。足元に火がついたのはビザ問題だった。Cさんのビザでは就職できず、期限も1年のため、子どもを育て生計を解決するためには、まずビザを変更しなければならなかった。管轄の出入国・外国人庁にこのような事情を説明し、滞在期間も長く就業も可能なビザへの変更を申請したが拒否された。Cさんは生計給与(日本の生活保護費に該当)など月額120万ウォン(約11万5000円)ほどで、保証金100万ウォン(約9万6200円)、家賃20万ウォン(約1万9200円)の部屋で子どもと2人きりで暮らしている。現在、ビザ変更申請の不許可決定の取り消しを求める訴訟を起こしている。

 移住民たちは就職して稼ぐため、または親戚の招きなどの人間関係によって韓国にやって来る。しかし彼らは働く機械ではなく、親戚にばかり頼っている存在でもない。彼らも生活人としてのあらゆる経験を、それも韓国人よりはるかにつらい経験をする。韓国の移住民政策は、彼らの労働力は使いながらも長期居住は認めず、本国に送り返すか、国際結婚で韓国人家庭の構成員になることを骨子としている。移住民政策の基本的な方向性がこのようなものであるため、移住民が慣れない環境で経験する問題に対する政策的な配慮が不十分だ。短くても6カ月以上かかるうえに要件も厳しい現在の賃金未払い救済制度だけでは、問題を解決するには不十分だ。未払いが確実であれば速やかに賃金を支払う賃金未払い保険制度が必要だ。小さな交通事故だけで生活の土台が揺らぐことのないよう、交通事故保険制度の拡大が必要だ。韓国の子どもを育てていれば、韓国人家庭の構成員になるかどうかを問わず、安定的な養育環境を保障すべきだ。もはや否定しようもなく我々の共同体の構成員として定着している移住民たちが、生活人として経験する困難を緩和するために必要な政策を模索しなければならない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ウォンギュ|弁護士・国家人権委員会元職員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1027683.html韓国語原文入力:2022-01-17 17:55
訳D.K

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