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[寄稿]全斗煥の訃報に寄せて…まだ終わってはいない

登録:2021-11-24 02:55 修正:2021-11-24 09:30
チョン・ドサン|小説家
1996年2月26日。全斗煥氏が法廷に立った日。12・12軍事クーデターの主役であり5・18光州民主化運動を流血鎮圧した全斗煥氏が23日に死亡した=資料写真//ハンギョレ新聞社

 全羅道に大雪注意報が発令された日の朝、ソウル仁寺洞(インサドン)にある「文と水墨、写真で出会うユン・サンウォン」展を見に行くために市内バスに乗った。突然の寒さに人々は襟を立てて小走りに道を急いでいた。バスの車内から初冬の風景をぼんやりと眺めながら、ユン・サンウォンを長きにわたり描いてきた画家のハ・ソンフプさんのことを考えている時、全斗煥(チョン・ドゥファン)死去の知らせを聞いた。一瞬ぼうっとして、多くのシーンが目の前を映画のように流れていった。長い悲しみを窓に刻んだまま錦南路(クムナムノ)を見つめている全羅南道庁が思い浮かんだ。そして仁寺洞の展示会場でユン・サンウォンに会った。

 「今日、我々は敗北するでしょう。しかし明日の歴史は我々を勝利者にするでしょう」

 5・18市民軍のスポークスマンだったユン・サンウォンが残した言葉だ。ユン・サンウォンは1980年5月27日早朝、全羅南道庁の戦闘で戦死した。一方、全斗煥は全羅南道庁を殺戮の場となして勝利し、大統領となった。

 いつのまにか41年前の歴史となった。ユン・サンウォンは全羅南道庁で敗北を記録し、戦死した。彼は「あなたのための行進曲」として復活し、「追悼される記憶ではなく、生きて激突する現在」(シン・ドンヨプ文学館ウェブサイト)となった。

 全斗煥は全羅南道庁で勝利した後、大統領となった。朴正煕(パク・チョンヒ)の軍事独裁をそのまま受け継いだ彼は、指名手配と拷問と投獄の技術の刻まれた遺伝子すら継承した。光州での虐殺はもとより、その後も絶えず密かな殺人を犯した。軍隊に強制徴集された学生たちを事故に見せかけて殺し、学生と労働者を拷問して殺し、白骨団を動員してデモを鎮圧しつつ殺人もいとわなかった。殺人だけでなく、監獄が溢れるほど投獄者も多かった。大学のキャンパスはもちろん、講義室にまで私服を着た警官が入り込んで監視した。家ごとに、路地ごとに、指名手配者がどれほど多かったことか。娘と息子がデモに参加すれば親を監視し、果ては職場から追い出した。分断体制を利用してスパイを随時でっち上げ、民主化運動に冷水を浴びせようとした。農民と労働者を職場から追い出し、ブラックリストを用いて就職を徹底的に邪魔した。

 しかし、逆説的にも全斗煥という存在は、民主主義へと向かう道の道しるべになってくれた。彼が抑えつければ抑えつけるほど、民衆はばねのように跳ね上がった。大学から戦車と正規軍が姿を消すと、学生たちは拳を高くつき上げ、工場では労働者たちが民主労組を建設するため視線を交わし合った。農民たちも生存権闘争のために街頭に出た。

 全羅南道庁の最後の日、市民軍が白旗を掲げて戒厳軍を迎え入れることなく血のついた旗の下で死んでいって以来、民衆はただの1日も旗を降ろさず闘い続け、ついに6月抗争を作り出した。それはすべて全斗煥のおかげだった。全斗煥が大統領の地位に存在していたからこそ、あれほどの激しい闘争を続けることができたのだ。戦死したユン・サンウォンは錦南路で、鐘路(チョンノ)で、光化門(クァンファムン)で、市庁前広場で、「数千数十万のユン・サンウォン」として復活し、全斗煥に立ち向かった。チョン・テイルを継承したユン・サンウォンはパク・ジョンチョルとして、イ・ハニョルとして復活し、我々の前に立ち現れた。ユン・サンウォンを復活させた全斗煥、どうして有難くないはずがあろう。

 全斗煥は大統領の地位にあったが、常に死すべき存在だった。絵で死に、歌で死に、詩で死に、映画でも死んだ。歴史の法廷で彼は有罪を宣告された。百潭寺(ペクタムサ)に隠れて住まねばならず、監獄で長い歳月を送らなければならなかったのだ。全斗煥は勝利したが没落した。彼は傷を広げる元凶であり、生きていても墓に閉じこめられた過去として41年を生きるべきだったのだ。栄光は短く、屈辱は長かった。

 全斗煥は、その死の瞬間まで光州抗争を蔑ろにした。光州での発砲命令を否定し、人民軍の介入を主張し、実定法の法廷においてすらも厚かましい言い訳と偽善で一貫した。果ては自叙伝も出版し、公然と虐殺を否定した。その死の瞬間まで彼はいかなる省察も示さなかった。韓国の歴史において、全斗煥のように凄絶な敗北者が他にいるだろうか。しかし彼を追悼し哀悼する人たちがいる以上、5・18光州抗争、6・10抗争、そしてろうそく抗争は依然として現在進行形だ。まだ終わってはいないのだ。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ドサン|小説家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1020485.html韓国語原文入力:2021-11-23 17:37
訳D.K

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