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[寄稿]OECD加盟25年、韓国の現住所

登録:2021-11-16 07:30 修正:2021-11-16 09:23
キム・フンジョン|対外経済政策研究院院長 
 
高齢者の貧困と両極化 
「圧縮成長」の陰を克服しなければならない
9日午後、ソウルの陽川区庁で開かれた「第1回高齢者雇用先博覧会」で、ある参加者が硬く拳を握っている/聯合ニュース

 韓国が経済協力開発機構(OECD)に加盟してから今年で25年になった。OECDが掲げる価値観が「開放された市場経済」「多元的な民主主義」「人権尊重」だという点を照らしあわせると、世界化と民主化を掲げた当時の文民政権は、様々な側面でOECDが志向する点と一致していた。韓国はOECDの29番目の加盟国だったが、現在の加盟国数は38であるため、すでに韓国は後輩の加盟国が9カ国にもなる中堅国家になった。

 加盟の順番だけを問うのではない。韓国の経済規模は、1996年時点ではOECD全体の2%に過ぎなかったが、2020年は3.3%に増えた。OECD平均の70%の水準だった1人あたりの国内総生産(GDP)は、すでにOECD平均と同じだ。OECD平均より2年ほど短かった平均寿命は、今では逆に2年以上長くなった。すでに韓国は、出生時の期待寿命がOECD加盟国のなかで5番目という高い水準になっている。GDPに対する研究開発投資の割合も、加盟時点では平均的な水準だったが、今はほぼ2倍に近づき、革新経済を先導する国の隊列に並んだ。韓国は、加盟時点では引き続き開発援助を受けていたが、ついに2010年にOECD開発援助委員会(DAC)に加入したことにより、被援助国から援助供与国に変身した唯一の国として位置づけられることになった。

 良くも悪くも、大きく変わらない指標もある。今もなおOECDの国際学習到達度調査(PISA)では、韓国の生徒たちは高い成績を上げている。一方で、学業に対する関心度は低い。自殺率はOECD加盟国のなかではほぼ最高水準であり、特に高齢者の自殺率が極めて高い。これは、高齢者の貧困率がOECD平均の約3倍の水準であることと無関係ではない。出生率は加盟当時も平均を下回っていたが、最近は記録的に低くなり、この傾向が続くと、2100年以降には国家の消滅段階に入る。

 “先進国クラブ”といわれるOECDに加盟してから25年、韓国は今どこに来ているのか。OECDは、他の加盟国との比較を通じて、韓国のあり方をもう少し明確に示してくれる。圧縮的な経済成長と民主化の過程を経験した国、躍動性と創意性が噴出する国、最貧の発展途上国からわずか60年ほどで先進国になった極めて珍しい事例、しかし、社会の構成員が幸せとはいえない国として描かれている。

 特殊性を強調するのは、怠惰であるだけでなく危険だ。にもかかわらず、圧縮的に成し遂げられた民主化と経済的な成功は、OECDにおいてやむを得ず韓国を差別化する。例えば、韓国はOECDのなかでは、経常収支における商品の収支の割合が圧倒的に大きい国だ。サービス収支や第一次所得収支、経常転移収支の割合は今もなお極めて小さい水準にとどまっている。なぜ、このような独特な構造を持つようになったのだろうか。サービス産業が発展できなかったことと所得収支が今もなお小さい割合であるのは、圧縮成長において完全には退化しなかった輸出主導型の開発途上国の跡だ。高い勤労所得を得ているが資産のない、貧しい家庭出身の有能な労働者のようだ。だからこそ不安なのだ。

 なぜ、韓国の高齢者世代は、人生の晩年のために準備できなかったのだろうか。若い頃は子どもの教育に没頭し、富を蓄積できなかったという検証されていない主張よりは、圧縮成長という特殊性で理解しなければならない。韓国の高齢者世代は、最貧の開発途上国から先進国に移住してきた人々だ。目まぐるしく変わる国に適応することだけでも必死だった。そして、過去も貧しく今も貧しい。韓国社会は、この高齢者世代と、毎年10%以上成長する開発時代に自身のアイデンティティを残しながら先進国に強制移住させられた壮年世代と、生まれながら先進国の市民である青年世代が一緒に暮らす、溶鉱炉のような社会だ。他のOECD加盟国でみられる一般的な世代対立を越え、世界観の違いが存在せざるをえない。

 私たちは今後、何をしなければならないのだろうか。上記の例を見れば、なぜ資産に対する私たちの見方を変えなければならないのか、なぜ不平等と両極化を解決しなければならないのか、これらがもう少し明確になる。OECDは、私たちが解決しなければならない課題を映す鏡だ。この鏡を通じて一つひとつ解決していかなければならない。先進国とは、問題がない国ではなく、いかなる問題がある場合もそれを解決したり緩和できる能力を備えた国だからだ。そして、私たちは先進国に住んでいるからだ。

//ハンギョレ新聞社

キム・フンジョン|対外経済政策研究院院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1019397.html韓国語原文入力:2021-11-16 02:03
訳M.S

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