本文に移動

[社説]「巨大な転換」求められる時代、指導者も変わるべき

登録:2021-11-10 03:37 修正:2021-11-10 08:13
持続可能性を脅かす難題が山積 
気候危機、ポストコロナなどの公約は曖昧 
共同体の未来を保障する代案の提示を
来年3月の第20代大統領選挙に出馬する正義党のシム・サンジョン候補(左から)、共に民主党のイ・ジェミョン候補、国民の力のユン・ソクヨル候補、国民の党のアン・チョルス候補//ハンギョレ新聞社

 第20代大統領選挙の対戦表が事実上確定した今、韓国社会全体が尿素水の供給難に苦しんでいる。直接的な原因は中国による尿素水輸出の規制だが、その背景には中国のオーストラリア産石炭の輸入禁止や炭素削減政策による鉱山の閉鎖など、国際政治と気候危機対応の問題が絡んでいる。さらに、尿素水は一例に過ぎず、気候危機は国際政治とあいまってグローバル・サプライチェーン問題を引き起こし続ける可能性が高い。専門家は食糧を第1候補に挙げている。自給率が45%台にとどまる韓国において、食糧の供給に支障をきたせば、どんな事態が起こるだろうか。

 気候危機に対応すべきだという声は強いが、原則論にとどまっているのが現実だ。2018年春に襲った微小粒子状物質(PM2.5など)は目の前に「地獄絵図」を繰り広げたが、目に見えない大気の流れと海流の変化が引き起こす極端な洪水や干ばつ、火災のような災害とは比べものにならない。しかし、微小粒子状物質を抑えるとして繰り広げた大騒ぎに比べれば、今の韓国社会はこの上なくのんきに見える。気候危機は時間との戦いだ。最近、世界の科学者たちは、産業化以前からの気温上昇を1.5度に抑制するための炭素中立(カーボンニュートラル)実現時期を、これまでの2050年から10年以上繰り上げることを求めている。

 しかし大統領候補たちにも、気候危機に立ち向かう悲壮な態度やこれといった公約は見られない。気候危機への対応において国家指導者の役割は決定的だ。退任を控えたドイツのアンゲラ・メルケル首相が代表的な例だ。メルケル首相は気候危機に対応するための国家戦略を率先して提示し、産業界と国民を説得してきた。さらに、それを国家経済の競争力に結び付けることにも深い関心を示してきた。それに比べれば、大韓民国の有力大統領候補たちの認識と態度は残念でならない。国民の力のユン・ソクヨル候補は、2080年までとして設計されている脱原発戦略を、むしろ廃棄すると言っている。

 気候危機対応において国家指導者の役割が重要なのは、何よりも既存の体制からの「巨大な転換」が必要不可欠であるからだ。気候危機は「人類世(人新世)」と呼ばれる現段階の地球環境が没落へと向かっている必然的な局面だ。人類が引き起こし、人類自身だけでなく地球全体を存続の危機へと追いやったものこそ気候危機だ。自然環境の無限搾取、最大の利潤創出を最高の価値と考える思考体系が根本的な原因であり、その原因を解消できなければカーボンニュートラルも不可能だ。国家指導者でない限り、誰がこの転換を率いることができるのか。

 新型コロナウイルス危機は気候危機とコインの裏表を成す。コロナが威力を失ったとしても、人類を脅かす新たなウイルスが出現し続ける「間欠的パンデミック時代」がやって来ると予測する科学者は多い。人類が自然環境を破壊し、ウイルスの宿主との距離を縮めたからだ。パンデミックの繰り返しを最小限に食い止めるための根本対策とは、気候危機対策に他ならない。コロナはわずか2年間で、ただでさえ深刻だった富の偏在と両極化を急速に悪化させた。この疾走に歯止めをかけることこそ、ポストコロナ時代の最優先目標としなければならない。

 しかし今の大統領候補たちは、これといった財源対策もなしに「全国民災害支援金」支給か、あるいは「自営業者に対する50兆ウォン(約4兆8000億円)の損失補償」支給かをめぐる口論ばかりだ。政策公約をめぐって競争するのは望ましいことだが、不平等を深化させる構造を転換する一貫した方向性を示すことの方がよっぽど重要だ。既存の構造を放置したり、むしろ強化したりする方へと政策の方向性を定める候補だとしたら、いくら財政投入を増やすと約束しても、ポストコロナ時代を乗り切るべき国家指導者として相応しいとは思えない。

 人口減少と地方消滅の危機も目の前の災厄として押し寄せてきているが、大統領候補たちの関心の外にある。これらの問題もまた、根本的な原因は不平等にある。人口減少は性差別や経済両極化などが複合的に作用した結果だ。天文学的な財政をつぎ込んでも何ら効果を得られなかったのは、根本的な原因を度外視してきたからだ。地方消滅の危機は地域人口の減少と直につながっており、地域人口の減少は、日増しにソウルと首都圏へと金と雇用が集中していく地域不平等構造を語らずして説明することはできない。既成体制の既得権を解体し、より平等な構造を作り出さなければ解決できない問題だ。

 次期大統領が直面することになる諸課題は、以前の大統領たちが経験してこなかった難題の中の難題だが、私たちがこれまで構造的な原因を放置してきたため、悪化させるだけ悪化させてきた古い問題でもある。これ以上放置すれば共同体の生存と持続性が期待できないところにまで来ていると言っても過言ではない。第20代大統領選挙は、韓国の政治史において古い秩序を破壊するための大きな青写真を描くとともに、履行戦略を具体化する大転換の日々として記録されなければならない。候補たちの奮闘と有権者たちの賢明な選択によって、今後5年だけでなく未来の持続可能性を保障する大統領選挙となることを願う。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1018629.html韓国語原文入力:2021-11-09 19:03
訳D.K

関連記事