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[コラム]中国に「不動産保有税」がない理由は

登録:2021-09-13 22:04 修正:2021-09-14 10:24
イラスト jaewoogy.com//ハンギョレ新聞社

 中国の習近平政権の新しい政策目標である「共同富裕」に対する関心と論議が熱い。「過度な高所得を調整」するという名分で、プラットフォーム・ビッグテック企業、私教育(塾など公教育以外の教育産業)、ゲーム産業、芸能界全般に規制が広がり、次は不平等の核心である不動産市場に向けられるかに関心が集まっている。

 ひとまず中国当局は、賃貸料引き上げ年5%上限制、名門学区のマンションである学区房に向けられた政策を出した。だが、多くの専門家は、中国が不動産保有税と相続税を賦課できるかを共同富裕の最も重要な試金石とみている。

 北京や深センなど中国の大都市の不動産価格は世界最高水準だ。一戸当たり数億円が基本だが、高級住宅を数十軒も保有する金持ちが少なくない。保有税と相続税が全くなく、税金負担がないためだ。

 中国の不動産が民営化されたのは1998年からだった。この時期に国有企業改革が本格的に進められ、それまでは国有企業が提供した住宅に名目だけの小額の家賃を払って居住していた住民たちは、国有企業が保有していた住宅を市場価格よりはるかに低い価格で購入した。政府から補助金と無利子の融資まで受けた。歴史上最大規模で国家資産が個人に移転された。その後、中国の超高速成長により住宅価格が暴騰し、大都市の住民たちは大規模な資産を持つようになった。民営化改革で最大の受恵者である都市中産層とエリートたちは、事実上、中国共産党の最も強固な支持基盤となった。一方、農村から都市に働きに来た労働者、民営化初期に住宅を購入できなかった人々は、永遠にこの特典から排除された。

 大都市の不動産を所有した中産層、特に数十~数百戸も保有した共産党の高位幹部の家族たちは、保有税と相続税の導入を阻止してきた主要勢力だ。理念的には土地国有制度も重要な要素だ。不動産に保有税や相続税を課税することは、土地国有制という「社会主義の基盤」を揺さぶるという論理だ。不動産開発に財政を依存する地方政府も、保有税を導入すれば不動産市場が低迷し、土地売却益が減るために財政が悪化するとして反対している。2020年に土地の売却は地方政府の収入の30.8%を占めた。

 過去20年余り、税制改革の議論は続いた。2011年には上海と重慶で不動産保有税が試験導入されたが、最高級マンションなどきわめて一部に限定して賦課された。共同富裕が強調され、年内に試験的な実施地域を一部拡大して指定するだろうと予想されているが、全国的な導入は難しいとみられる。

 相続税問題はさらに深刻だ。「一人っ子政策」の結果、中国の都市中産層の若者は祖父母、母方の祖父母、両親から少なくとも3戸の不動産相続を受けることになる。彼らが結婚すれば夫婦で6戸以上の不動産相続を受けるが、税金は全くかからない。韓国金融研究院国際金融研究室のチ・マンス室長は「共同富裕の最大の雷管であるこの問題を解決するために、中国当局が土地国有制を利用して相続を制限する方策も考えられる」と見通している。

 中国の共同富裕を「社会主義の実現」と歓呼する人々もいれば、「第2の文化大革命」と憂慮する人々もいるが、市場の基本的ルールである不動産保有税・相続税の導入ですら手にあまるのが現実だ。不動産価格の急騰による「資産不平等」は、政治的に最も敏感な問題になった。中国だけでなく、韓国でも同じだ。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1011492.html韓国語原文入力:2021-09-13 18:49
訳J.S

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