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[コラム]盧武鉉と小泉純一郎、韓国と日本の政治の違い

登録:2021-09-07 09:39 修正:2021-09-07 13:15
政権継承が行われた2002年と2012年の大統領選挙には一定のパターンがある。国民にとって政権交代に準ずる大きな変化があったという点だ。大々的な人物や勢力、政策の交代がその鍵だった。
2002年4月、大統領選挙に向けた民主党の光州地域予備選挙でトップに立った盧武鉉元大統領が、支持者たちに手を振っている//ハンギョレ新聞社

 来年3月に行われる第20代大統領選挙は、金大中(キム・デジュン)から盧武鉉(ノ・ムヒョン)へと政権が継承された2002年大統領選挙と比較される。金大中が初の政権交代を成し遂げた後、民主党政権の継続が決まった選挙だった。2012年の大統領選挙も李明博(イ・ミョンバク)から朴槿恵(パク・クネ)につながったという点で類似している。今回の大統領選挙の観戦ポイントの一つは、2002年に続き、共に民主党が2度目の政権継承を実現するかどうかだ。

 政権継承が行われた2002年と2012年の大統領選挙には一定のパターンがある。国民にとって政権交代に準ずる大きな変化があったという点だ。大々的な人物や勢力、政策の交代がその鍵だった。

 盧武鉉は地域主義と既得権の打破を掲げ、首都の移転、検察改革など新たな政策を打ち出した。候補選出の過程でも既成勢力を市民の力で制した。朴槿恵も、李明博系とは当初から派閥が異なり、名ばかりだったが経済民主化を掲げた。

 政権交代はもとより、政権継承の時も大幅な変化があったが、海外の専門家はこのようなダイナミズムを韓国が先進国に浮上した理由と見ているようだ。日本はこの点で韓国と異なる。韓国は2度の政権交代で民主党が15年間政権を握った。日本でも政権交代が行われたが、2度にわたる政権交代はいずれも不完全なもので、合わせて4年余りの期間だった。

 両国の差をよく示す人物が盧武鉉元大統領と小泉純一郎元首相だ。二人は小泉元首相が靖国神社に参拝するまではそれほど仲が悪くはなかった。盧武鉉は徹底して非主流の大統領であり、小泉も田中派に対抗し、大衆的な人気に支えられて首相になった。

 しかし、二人が実践した政治内容は全く違っていた。盧武鉉は、故ノ・フエチャン(元正義党議員)流に言うなら、韓国政治が行われていたベースを入れ替えるような政治家だ。小泉は表向きには改革を掲げたが、実際はいわゆる「建設族」など派閥と官僚政治を維持し、強化した。米国に徹底的に服属し、靖国神社を定期的に訪れた。小泉の「羊の皮を被った狼」のような政治は安倍晋三へと受け継がれた。

 最近出版された『日本のくびき』(原題:『Japan and the Shackles of the Past』。日本では 『日本―呪縛の構図:この国の過去、現在、そして未来』として出版)で、著者のターガート・マ―フィーは責任と権限が曖昧な政治、米国におんぶにだっこ状態で、いわゆる「日本らしさ」を称える保守覇権政治を、30年間にわたる日本の停滞の原因に挙げた。2014年(英語版)に書かれた同書で、彼は「日本人が海の向こうの西の国へ恐れと驚嘆の目を向けている。まさに貧しい親戚のように思い、蔑視してきた国、韓国だ」と書いた。

 韓国の政治・経済機関が明確な権力構造と責任の所在のもと、果敢かつ早い意思決定をすることで、日本の政治と企業にまん延する集団思考より先に進んだということだ。権力の集中、頻繁な断絶と激変をむしろ強みとして捉えたのだ。韓国社会は多くの紆余曲折があったが、産業化と民主化を2つの軸にして先進国に成長してきたわけだ。

 何もかも入れ替えるのが必ずしも良いわけではない。先進国には成熟したリーダーシップと高度化したダイナミズムが必要だ。帝王的大統領制度によって毎回がらりと変わってきたが、今は寿命が尽きつつある帝王的大統領制度そのものを刷新する高難度の改革が求められる。

 いずれにせよ、今回の大統領選挙ももう一度入れ替える契機になるだろう。明らかなことは、与党であれ野党であれ、人物交代、勢力交代をきちんと進める方に勝算があるという点だ。

 先の2回の大統領選挙でも見たように、政権の継承は連続というより断絶の過程だ。民主党が勢力や人物、政策の刷新なしに政権与党の座に留まるのは無理だ。人を集めて「屏風」のように並べ立てるだけでは、勢力交代にはならない。「ミョン・ナク大戦」と呼ばれるイ・ジェミョン京畿道知事とイ・ナギョン元首相の非難合戦もビジョンの競争とは程遠い。

 「親文(在寅)再び」や「親盧(武鉉)再び」では勢力交代も政権継承も望めない。盧武鉉は、2002年の大統領選挙で金大中との違いを明確に掲げることはできなかったが、自分だけのビジョンで勢力交代を果たした。金大中も離党などで一定の距離を置く知恵を発揮した。政権の継承を夢見るなら、既存勢力の枠組みを越える勢力対勢力の大変化を追求しなければならない。

 国民の力も「反文在寅」を掲げるだけで、既存の人物と政策で政権交代を目指すのは、「縁木求魚」に近い。ユン・ソクヨル前検察総長が初の公約として不動産政策を打ち出したが、なぜか自前ではなく人に借りた服を着ているようだった。「わが軍隊がどうしてこんな状況になったのか」と退役将官を横に並ばせたのは、旧態依然と言わざるを得ない。

 大統領選候補なら、自分が本当によく知っており、本当にやりたい政策を優先的に打ち出すべきだ。そのような政策を実現する人を横に並ばせなければならない。代表政策とは何か、自らの人生経験がにじみ出る政策とは何かを明確に示さなければならない。与野党の誰でも時代的ビジョンや政策交代、勢力交代の端緒を見せることができなければ、候補にもなれない。

//ハンギョレ新聞社
ペク・ギチョル|編集人(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1010683.html韓国語原文入力:2021-09-0702:02
訳H.J

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