ユン・ソクヨル検察総長時代の検察の告発教唆疑惑について、ユン前検察総長だけでなく野党「国民の力」の指導部が「政治工作」と位置づけ、反撃している。ユン前総長の側近である最高検察庁のソン・ジュンソク前捜査情報政策官(現・大邱高検人権保護官)がキム・ウン議員(国民の力)に渡したとされる告発状の内容を、本紙を始めとする多くのメディアが報道するなど、疑惑の波紋が広がっているのを遮断しようとする意図と思える。しかし、いまユン前総長と国民の力がすべきことは、反撃ではなく疑惑に対する納得のいく説明だ。そうしないのであれば疑問はさらに強くなるだけだ。
ユン前総長は6日、国民の力のイ・ジュンソク代表と会談した直後、告発教唆疑惑について「(与党側が)決めつけて騒いでいるもの」と主張し、「(与党側は)政治工作を常に行ってきた人々」だと非難した。告発状の内容をはじめ、これまで提起された疑惑に対して具体的な反論はせず、「政治工作」だという主張を繰り返したのだ。ユン前総長は、疑惑が初めて提起された3日に「告発をそそのかしたのであれば、なぜ告発はなされなかったのか」と言及したが、疑惑の本質は実際の告発の有無ではなく告発教唆だという点で、つじつまが合わない。
国民の力の指導部もこの日、政治工作の主張に加勢した。チョ・スジン最高委員は最高委員会議で、「与党側が『ユン・ソクヨルXファイル」に続く『ユン・ソクヨル潰し第2弾』に突入した」と述べ、「全くつじつまの合わない正体不明の文書で工作している」と主張した。チョン・ミギョン最高委員も「もっともらしい事件を作ろうと努力したのだろうが、ファクトは異なる。これを『政治工作』という」と述べた。
イ・ジュンソク代表も最高委員会議で「選挙が近くなるほど、我が党の候補と党に対するネガティブキャンペーンが強化されている」と述べ、「我が党の候補を積極的に保護し検証できるよう、組織の設置を再検討する」と明らかにした。3日の寛勲クラブでの討論会で告発教唆疑惑について「我が党の(大統領選予備選)候補の介入があったとすれば、極めて深刻な問題だという点に同意する」と述べ、「党務監査を進める可能性もある」と明らかにしたときとは異なる態度だ。告発教唆疑惑を与党側のネガティブキャンペーンだと規定し、ごまかそうとする意図ではないかと疑われる。
今回の疑惑の本質は、政治的中立が生命である検察が、総選挙に影響を及ぼそうとして特定の政党と結託し告発をそそのかしたことだ。最高検察庁が監察に乗りだし、市民団体が高位公職者犯罪捜査処に告発しただけに、ユン前総長と国民の力のいずれも真相が明白に究明されるよう、積極的に協力しなければならない。