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[コラム]ドイツ連邦軍の「脱営する権利」

登録:2021-06-16 03:25 修正:2021-06-16 08:28
//ハンギョレ新聞社

 「軍人の地位および服務に関する基本法」第25条は、「軍人は職務を遂行する場合、上官の職務上の命令に従わなければならない」とする「命令服従の義務」を明示している。軍隊の上命下服の特性を過度に強調し、軍人は無条件に命令に従い、人権侵害もある程度は甘受しなければならないという主張もある。軍隊では一部の上級者は、不合理な指揮や統率の手法を下級者に強要する。彼らは、軍服を着た軍人は市民の権利を完全には享受できないと考える。

 最近、韓国軍での人権侵害が続いており、抜本的な対策により将兵を「制服を着た市民」として待偶しなければならないという主張が力を増している。「制服を着た市民」の概念は、西ドイツが1950年代にドイツ連邦軍を創設したのに伴い現れた。ドイツ国防軍とドイツ連邦軍は全く異なる軍隊だ。ドイツ国防軍は、第二次世界大戦時の虐殺などの戦争犯罪を犯したナチスの軍隊だ。1955年、西ドイツはナチスの軍隊の蛮行を反省し、民主主義と憲法の価値に忠実なドイツ連邦軍を創設した。

 西ドイツは「内的指揮」(Innere Fuhrung)をドイツ連邦軍の中心的な価値として提示した。内的指揮は「制服を着た市民」を志向する。ドイツ連邦軍の服務規定は、「制服を着た市民」を「自由な人格体、責任意識を持つ市民、戦闘準備態勢が完備された軍人」と説明する。人格や市民という用語を軍人の前に置いていることが目につく。ドイツは、軍隊を市民社会と分離せず人間と市民の土台の上に建てられたものとみなす。18世紀のドイツの哲学者カントの「武器を持った市民」を「制服を着た市民」の概念の根元とみなす見解もある。

 ドイツの関連法律では軍人は、人間の尊厳を害する命令や職務上の目的に合致しない命令への不服従が許容される。自らの宗教的または良心的な信条に反する場合、軍への服務の全部または一部を拒否できる権利(良心的反戦権)も認める。ドイツの裁判所は、国連の承認を得ていない武力行使に動員されることを拒否する兵士については、脱営(軍隊からの脱走)が許されなければならないという判決も下した。ヒトラーの命令に盲従したナチスの軍隊が犯した過ちを繰り返さないための措置だ。1990年代以降、韓国軍は「軍服を着た民主市民」という用語を使ってきたが、これを実現しようとする努力は足りなかった。「黙って服従」ではなく「制服を着た市民」を韓国軍の中心的な価値に据えなければならない。

クォン・ヒョクチョル論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/999428.html韓国語原文入力:2021-06-16 02:05
訳M.S

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