慶尚南道の密陽(ミリャン)では、新設原発からの送電線問題で住民が焼身自殺するという不幸な事態(2012年)まで起こったが、問題解決の糸口さえ見出せない中、建設は依然として強行され続けている。このような社会的対立の激化は、過疎または立ち遅れた地域に大規模な発電所を建設し、数百キロメートルの送電線で大都市の消費者に電気を供給するという電力システムの持つ構造的問題だと言わざるを得ない。また、老朽化した原発の稼働延長をめぐる論争が質量ともに拡大していることから、過去とは異なり単なる原発立地地域の問題として終わりそうにもない。
大量生産という「規模の経済」にもとづく集中型電源中心の電力政策、特に原子力の利用は、本質的な安全性の問題のみならず、約10万年にわたる使用済み核燃料の処分および中間貯蔵にかかるコストなどのその他の費用を考慮すれば、経済性さえも疑わざるを得ないのが実情だ。しかし、政府はこれらの難題についてこれといった説明もせず、「やればできる」という方式で原発の拡大を推進するとともに、原発よりも経済性がなく事故の危険性も高い再処理工場とナトリウム冷却高速炉を慶尚北道地域へ建設しようと検討さえしている。したがって筆者は、社会の公正性または正義、そして経済性の両方を満たせる案を提示しようと思う。それは、ソウルに原発を建設しようというものだ。
なぜなら、第一に豊富な水量を持つ漢江(ハンガン)があるため冷却水の確保に問題はなく、ソウルの地盤も100階近い高層ビルの建設にも耐えられるほど頑丈だからだ。原発が絶対安全なら、ソウルに建設することを不可能にする自然条件の制約はまったくない。第二に、原発の外壁は特殊鉄筋コンクリートであり、恐らく秒速150メートルで飛ぶ戦闘機の衝突やミサイル攻撃にも耐えられるはずなので、テロや軍事攻撃などの安保上の弱点もない。第三に、原発の建設費用の約3分の1を占める送電線の設置コストがほとんどかからない分、経済性も改善される。また出力140万キロワットの原発なら、毎秒約60トンの冷却水が原発の中で温められて出てくるが、放射能が入っていないので周辺地域の住民の暖房にも利用できる。これらの点をすべて考慮すれば、ソウルではマンションや大きなビルが多い汝矣島(ヨイド)、特に国会周辺が原発建設の最適地と言える。ソウルの人口規模を考慮すれば、少なくとも2基の原発が必要だろう。
そして使用済み核燃料の中間貯蔵施設、再処理工場、ナトリウム冷却高速炉などは龍山(ヨンサン)地域に建設しよう。特に再処理工場から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、電気の消費者として高レベル放射性廃棄物を大量排出してきたソウル市民の責任で確保することにしよう。立地場所としては、世宗市(セジョンシ)の完工にともなう省庁の移転で建物が空くことになる政府果川(クァチョン)庁舎の敷地が活用できるだろう。この冠岳山(クァナクサン)の麓は、かつてソウル大学原子力工学科の教員たちが冠岳キャンパス内に放射性廃棄物処分場を建設しようという案を出していただけに、地質的にも問題がないと推察される。さらに果川は地理的にも、原子力工学科のある国内5大学のうちソウル所在の3大学、および大田(テジョン)のKAISTと原子力研究院の専門家たちの協力も得やすいところでもある。
原発とその関連施設がソウル市と果川市に建つことになれば、原発の輸出にもこれ以上ない宣伝となるだろう。人口1000万人を超えるメトロポリスで稼動する安全で経済的な原発は、地球上のどこにも未だ存在しないからだ。すでに2年前から外国の原発導入説明会に参加している中国は、韓国より人件費も安く導入国に貸しつける外貨も豊富だ。またロシアは、核燃料の供給保障と使用済み核燃料の引き取りまで打ち出しており、日本とフランスも資金力の面で韓国より優れている。こうした原発輸出国との競争に勝つためにも、我々が自ら実践して韓国原発の安全性と経済的優位性を示すことが不可欠だ。政府とソウル市は、ソウル市への原発およびその関連施設の建設に関する積極的な検討を急ぐべきだろう。最後に、原発の積極的な推進を強調する教授や法律家、医師などの専門家集団も、筆者の提案に同調してくれることを切に期待する。