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[コラム]バイデン政権の100日はなぜルーズベルト政権と比較されるのか

登録:2021-05-11 07:20 修正:2021-05-11 09:55
バイデン政権の100日は、現在の危機の本質である不平等と二極化に正面から立ち向かおうとする処方だと要約される。これまでの民主党政権の「アイデンティティ政治」から抜け出そうとする戦略と共通している。任期が残り1年となった文在寅政権にバイデン政権の100日は遅すぎる処方だろうか。
米国のジョー・バイデン大統領が先月28日、連邦議会議事堂での上下両院合同会議で演説をしている=ワシントン/AP・聯合ニュース

 4月29日で就任100日となった米国のジョー・バイデン大統領の歩みは、米国を換骨奪胎させようとするものだとメディアは評価している。

 就任から100日間の指標によると、バイデン大統領は過去の大統領に比べむしろ劣っている。世論調査メディア「リアルクリアポリティックス」によるバイデン大統領の支持率は、7日現在で54.1%であり、就任後に60%を超えることはできなかった。バラク・オバマ政権では就任直後は65%に達し、60%台の支持率が6月中旬まで維持された。ジョージ・ブッシュ政権も就任後は60%を維持した。就任後100日間の政治功績を評価する尺度である法案通過件数は11件だ。トランプ政権は21件、オバマ政権は14件、ブッシュ政権は7件、クリントン政権は22件だった。

 就任から100日が大統領を評価する指標になったのは、フランクリン・ルーズベルト大統領によるものだ。ルーズベルト大統領は100日間で大恐慌に対抗する76件の法案を速やかに通過させ、危機を克服するモデルをつくった。彼は1933年7月24日のラジオ演説で「最初の100日(First Hundred Days)」という造語を披露した。

 ところがバイデン大統領は今、ルーズベルト大統領と比較されている。米国が直面している状況のためであり、彼らが出した処方のためだ。ルーズベルト大統領が嵐のように吹きつける大恐慌に直面したとすれば、バイデン大統領は、過去30年間に小雨で服が濡れるかのように浸透した不平等が2008年の金融危機とコロナ禍で深刻化した状況に置かれている。

 ルーズベルト大統領が国家の役割を強調し拡大したニューディール政策を打ち出したように、バイデン大統領は、就任後に3回にわたり合わせて6兆ドルに達する史上最大の支出案を出した。1980年代のロナルド・レーガン政権後の基本方針である小さな政府、減税、バランス財政から、大きな政府、増税、拡大財政に変えている。富裕層と大企業のための規制緩和と減税から、中下流層に対する福祉拡大と増税への大きな転換だ。

 しかしバイデン大統領は、極度に党派化された政治文化、特に共和党支持層の多数がいまだに彼の当選を否定している状況に置かれている。彼の大型支出案の一つ目となる1兆9千億ドル規模の「米国救済計画」には、上院の共和党議員は1人も賛成票を投じなかった。

 それでも、バイデン大統領の国政運営がふらつく様子はない。議会で民主党議員だけの票で通過させた「米国救済計画」は、世論調査で全有権者の77%、共和党支持層からは59%の支持を得た。共和党がバイデン大統領の国政議題に対する反対を掲げて支持層を結集させる政争化の動力を得られずにいるからだ。バイデン政権が、現在の米国と資本主義の危機の本質である不平等と二極化の問題に正面から立ち向かおうとする措置を出し、勝負をかけているからだ。これまでの民主党政権が陥った「アイデンティティ政治」から抜け出そうとする戦略と共通するものがある。1960年代の68革命以降、先進国の進歩・リベラル勢力は、マイノリティと弱者集団の動員に力を注ぐアイデンティティ政治に陥ったという指摘を受けてきた。これは必要であり当然貫徹されなければならない議題ではあるが、中下流層の社会経済的な地位向上への努力が欠け、「文化戦争」という大きな逆風を引き起こした。白人中下流層のトランプ支持と当選がそれを示した。

 バイデン政権は派手なイベントは自制し、「居眠りジョー」のイメージを戦略的に維持している。バイデン政権は、マイノリティ集団、銃器、妊娠中絶などの文化戦争を引き起こした問題に対しては努めて控えめに対応している。しかしバイデン政権は、これまでのどの政権よりもマイノリティ人種や女性、進歩派を閣僚に多く起用した。にもかかわらず、メディアはそれには大して注目しなかった。

 バイデン政権の100日の中心は6兆ドル支出案とその内容であるが、共和党はそれからあえて目をそらしている。共和党は支持層である白人中下流層がこの案を支持していることを知っているからだ。むしろ共和党内部で文化戦争が広がっている。選挙で不正が行われたというトランプ前大統領の主張を批判したリズ・チェイニー下院議員の党籍剥奪問題をめぐり、争いが起きている。共和党支持層からは、人種差別主義であるという議論により本の出版が中止された絵本作家のドクター・スースの問題や、キャラクター玩具の「ミスター・ポテトヘッド」からジェンダーへの包容性を広げるために「ミスター」表記を取るという決定などに関心が高いという世論調査も出てきた。

 6兆ドル支出案などの不平等改善案に、悪影響がないわけではない。しかし、バイデン政権がマイノリティ集団に焦点を合わせたアイデンティティ政治と文化戦争を自制し、不平等解消に正面から立ち向かう対処策を出し、白人中下流層を再び引き入れようとする努力は注目に値する。アイデンティティ政治の目的である“違い”を認め“平等な分け前”を配分するためにも、今は大衆の全般的な社会経済的な地位を高める「第2のニューディール」とそのための「第2のニューディール同盟」が必要な時だ。

 10日に任期が残り1年となった文在寅(ムン・ジェイン)政権に、バイデン政権の100日は遅すぎる処方だろうか。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/994570.html韓国語原文入力:2021-05-11 02:07
訳M.S

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