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[コラム]「五輪ボイコット」の政治学

登録:2021-04-12 20:43 修正:2021-07-05 08:16
//ハンギョレ新聞社

 2022年2月4日に開幕する北京冬季五輪をめぐり、早くもボイコット論争が熱くなっている。先週、米国務省報道官が、同盟国らと北京五輪のボイコットを議論するという趣旨の言及をして論議がおき、ホワイトハウスの報道官が「進行中の議論はない」として状況収拾に出た。だが「進行中の議論」がないだけだ。ボイコット論争の火種はずっと生きている。

 中国当局が新疆で少数民族ウイグル人を「再教育」収容所に送り強制労働をさせているという人権侵害問題の波紋が大きくなり、2月には180余りの国際人権団体がボイコットを求める公開書簡を発表し、カナダ下院は全員一致で国際オリンピック委員会(IOC)が北京の開催権を剥奪するよう求めた。欧州の国家では、1936年のベルリン五輪をボイコットしなかったことによりナチの体制宣伝に利用された失敗を繰り返してはならないとの主張も出ている。

 IOCと米国オリンピック・パラリンピック委員会は、五輪のボイコットは冷戦時代の古い遺物であり、選手たちを「政界の駒」と見なすことだとして反対の意向を明らかにした。1979年、ソ連のアフガニスタン侵攻に対する抗議のために、米国、韓国など66カ国が1980年のモスクワ五輪をボイコットしたが、アフガニスタンの状況を解決するのに何か役に立ったのかということだ。

 最近では、汗を流してきた選手たちの機会を奪う全面ボイコットではなく「部分的ボイコット」「外交的ボイコット」の主張が力を得ている。共和党の大統領候補だったミット・ロムニー・ユタ州連邦上院議員は先月、ニューヨークタイムズへの寄稿で「選手たちに被害を与えずに、中国共産党には打撃を与え、人権侵害問題を提起できるように」選手たちは参加するが米国政府の高官や外交官は開・閉幕式などに行かず、企業はスポンサーになってはならないと主張した。2014年にオバマ政権がソチ冬季五輪に政府公式代表団を派遣しなかったのと似た方式だ。

 五輪ボイコットはスポーツを政治化するという批判があるが、五輪はいつも政治的だった。今回の北京五輪は特に一層政治的だ。習近平・中国国家主席は今年、中国共産党100周年を記念して、来年の北京五輪で全世界に「中華民族の偉大な復興」を誇示した後、来年末の党大会でこれまでの「2連任」規定を廃して3回目の任期を始めようとしている。北京五輪の成功的開催は、習主席の長期政権にとってあまりにも重要だ。来年に中間選挙を控えた米バイデン政権は、米中葛藤の中で北京五輪に大統領や高位級が参加すれば、中国の人権侵害を正当化するという批判と共に大きな政治的打撃を受けざるをえない。結局、同盟たちと共に「外交的ボイコット」をしようとする可能性が高い。もちろん中国は激しく反撃するだろう。米国の同盟、五輪スポンサーから抜け出ようとする企業を圧迫するだろう。韓国にもう一つの外交の難題が登場した。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/990665.html韓国語原文入力:2021-04-12 16:23
訳J.S

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