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[コラム]遵法監視委員長の後ろに隠れてしまったサムスンのイ・ジェヨン副会長

登録:2020-01-17 07:18 修正:2020-07-01 08:31
サムスン遵法監視委員長に内定したキム・ジヒョン元最高裁判事が9日午前、ソウル西大門区の法務法人地平の事務室で記者懇談会を行うのに先立ち、お辞儀して挨拶をしている=リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

 「私は今日、サムスン会長を退くことにしました。…特検問題で国民に多くの心配をおかけしました。心よりお詫びして法的道義的責任を尽くします」。2008年4月22日、イ・ゴンヒ会長はサムスン特検の起訴を控え、震える声で対国民謝罪文を読みあげた。自らの経営退陣と正道・透明経営の強化を含む10項目の刷新案が後に続いた。

 しかし、続く特検裁判で彼の態度はうって変わった。経営権不法継承容疑について「とぼけ」で一貫した。「タイミングと運が良かっただけで…経営権継承を指示したことはない」。イ・ジェヨン副会長は父親であるイ会長から61億ウォン(約5億8千万円)を贈与された後、エバーランドの株式などを安値に譲り受けて1兆ウォン(約950億円)を超えるサムスン株式を確保した。それにも関わらずこれを全て「運」と言い張ったので、国民を馬鹿だと思っていたようだ。イ会長は1年半後の2009年末、李明博(イ・ミョンバク)政権により赦免復権され、3カ月後には経営に復帰した。サムスン刷新案はこのように「びっくりショー」で終わった。

 サムスンが遵法経営のために「遵法監視委員会」を作ることにした。だが、真正性が疑われる。理由はこのような黒歴史のためだ。サムスンは大型の不法不正事件が起きるたびに刷新案を出したが、全て「危機離脱用」イベントだったとの評価を受けている。Xファイル事件の直後である2006年がそうで、2017年のイ・ジェヨン副会長の賄賂供与事件の時も同じだった。

 今では忘れられたが、2005年3月に倫理・透明経営を盛り込んだ「サムスン経営原則」の発表は一編の「コメディ」だった。サムスンは盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権と締結した「透明社会協約」を実践すると強調した。また「イ・ゴンヒ会長が1987年の就任時から力説した倫理経営哲学を具体化した」と自信を持って述べた。しかし、わずか4カ月後にXファイル事件が起きて、政界や検察との長く黒い癒着関係が明らかになった。サムスンが国民を馬鹿にしたのは一度ではない。

 遵法監視委員長を引き受けたキム・ジヒョン元最高裁判事も負担が増えたようだ。初めはサムスンの真正性を信じがたくて断ったと言う。しかし、イ副会長が遵法監視委の完全な自律性と独立性を保証して心を変えたと明らかにした。

 本当に今回にはサムスンを信じても良いだろうか? 客観的に見れば悲観的だ。何より遵法監視委はサムスンの自発性に基づいたものではない。賄賂事件の破棄差戻し裁判所が「実効的な遵法監視制度を作れ」と要求したことによるものだ。発表も1月17日の破棄差戻し判決の裁判を1週間前に控えて行われた。すでに「イ・ジェヨン執行猶予用」という評価が出ている。財閥オーナーには、罪が重くても懲役3年と執行猶予5年のいわゆる「3・5法則」が適用される「財閥特別扱い」の暗い影が幽霊のようにちらつく。

 さらに大きな問題はイ副会長の態度だ。過去3年間、サムスンに「犯罪企業」という汚名を着せた事件は全て経営権継承から始まった。2015年にサムスン物産と第一毛織の合併疑惑は、彼が株式を保有した第一毛織に有利な合併の割合が争点だ。その後、無理な合併に対する国民年金の賛成を得ようと国政壟断勢力に87億ウォンの賄賂を与えた。また、合併を合理化するためにサムスンバイオロジクス粉飾会計を犯した疑いを受けている。さらに、工場の床をはがして粉飾会計の証拠を隠した。イ副会長の欲さえなければ全てなかったことだ。

 イ・ジェヨン副会長に責任感があれば、もっと早くに国民に直接謝罪し、経営退陣などを含む刷新案を出したはずだ。そして「過去の誤りは私がすべて負って行くつもりなので、サムスンの変化を支持してほしい」と訴えたはずだ。しかし、2017年2月の起訴後の3年間は沈黙だけを守り、結局キム元最高裁判事を「盾」として前に立たせて、自分は後ろに隠れてしまった。キム元最高裁判事は、サムスン電子白血病調整委員長などを引き受けた戦歴で社会的信望が高いが、イ副会長の責任に代わることはできないのではないか。

 彼の態度が重要であるもう一つの理由は、オーナーが絶対的な権限を行使する財閥の「皇帝経営」だ。イ副会長はサムスンに致命的打撃を与える危険を甘受して賄賂を提供した。経営権継承だけに成功すれば数兆ウォンの莫大な利益を得られるからだ。オーナーがこのような黒い誘惑から脱しなければ、遵法経営は「空念仏」だ。

 サムスンは遵法監視委の開始直前、政府にどうすれば良いかと解法を尋ねたという。経営学のグルと呼ばれるピーター・ドラッカーは、最高経営者の重要な徳目として「喜んで責任を引き受けて決定を下すこと」を挙げた。イ副会長はこれ以上後ろに隠れず、責任を負う姿を見せなければならない。

//ハンギョレ新聞社

クァク・ジョンス論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/924684.html韓国語原文入力:2020-01-17 02:37
訳M.S

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