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[寄稿]破綻国家日本

登録:2016-06-07 06:26 修正:2016-06-07 06:40

 オリンピック招致をめぐって日本の招致委員会がコンサルタント会社に2億円以上の資金を提供し、それが買収工作に使われたという疑惑が報じられた。この一件は、日本という国が底なしに腐蝕していることを物語る。当時東京招致にとっての最大の障害は、東京電力福島第一原発の事故による放射能汚染に対する外国の懸念だった。この点は、文部科学大臣も認めている。この問題を覆い隠す粉飾工作として、安倍首相の「アンダーコントロール」発言と、コンサルタントへの資金提供は結びつく。表における首相の虚言、裏での買収工作。絵に描いたような腐敗である。

 工作が実ってオリンピック招致には成功したものの、大会の準備は予想外に難航している。二転三転の末、新国立競技場のデザインは決まったが、木材を使用するため、聖火台をどこに置くかはまだ決まっていない。その他の競技会場の整備費は当初試算の4倍の3千億円に膨らむと報じられている。

 人口減少と財政赤字の日本が世界的な宴を催して経済の浮揚を図り、人心を明るくしようとしても、宴の準備に体力を使い尽くし、宴を楽しむどころではない。さらに宴の後には巨額の請求書が待ち構えている。東京オリンピックは国家ぐるみのドーピングである。大きな目標を達成するために計画を立て、それを着実に実行するという近代的政府として当たり前の能力が、今の日本にはなくなりつつある。優れた技術と有能な組織を誇った近代国家日本が、次第に破綻国家に転落しようとしているのである。

 破綻の原因の1つは、政治指導者の知性と倫理の低下である。5月の伊勢志摩サミットで、安倍首相は現在の世界経済がリーマンショック前夜の状況に似ていると主張し、外国の首脳やメディアを驚かせた。これは、消費税率引き上げを延期するために、サミットにおいて経済危機に関する認識の共有がなされたと見せる意図での過剰な演出であった。その後、外国メディアが批判していることを受け、首相はリーマンショック前夜に似ていると発言したことはないと言いだした。そして、6月1日の記者会見では、「新しい判断」に基づいて、消費税率引き上げの延期を発表した。

 安倍首相の幼児的な自己中心主義がこれらの発言に現れている。自分が間違ったことを認めたくないために、サミットを利用して世界経済の悪化という国際世論のお墨付きをえようとし、それがうまくいかなければ自分の発言をなかったことにする。自分の発した言葉に対して、ここまで無責任な指導者は珍しい。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 無責任だけではない。間違っていると批判する発言に対して、極めて攻撃的なのも、安倍首相の自己中心主義の現れである。実際、政府与党を批判するメディアに対して、安倍政権は抑圧的な姿勢を続けている。サミットの報道に関しては、日本と外国メディアの報道の落差が目立った。日本のマスメディア、特にテレビには、政府の意向を忖度し、批判的な報道を自主規制する雰囲気が充満しているのである。

 言論の自由に基づく相互批判の中で、政治家は鍛えられ、能力を高めていく。政府を翼賛し、阿諛追従することは、為政者を無能にする。日本では、民間大企業でも不正会計や検査数値の偽造が明るみに出て、かつての日本ブランドが失墜している。政府でも、民間でも、自分は正しいと信じる幼児的なリーダーが君臨する限り、日本という国の衰弱は続く。7月の参議院選挙は、個別の政策もさることながら、国のあり方、指導者の質について考える機会としなければならない。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-06-05 19:28

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/746908.html

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