習近平・中国国家主席が今年初めての歴訪日程として、先週、サウジアラビア、エジプト、イランを訪れた。中東地域の主要国だ。習主席は現地でこう述べた。「中国が中東平和の建設者、中東発展の推進者、中東工業化の推進者、中東安定の支持者、中東民心の協力パートナーの役割を担う」。信頼できない米国に代わり、中東で積極的な役割をすべて引き受けるという、野心あふれる発言だ。習主席は数十兆元規模のお金を持って行った。過去、米国がドルと軍事力で覇権を拡張していった姿を連想させる。
ジョン・ケリー米国務長官は26〜27日、中国を訪問する直前にカンボジアとラオスを訪れた。両国とも中国と密接な関係を結んでいる国だ。ラオスは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国でもある。南シナ海の覇権をめぐり中国と対立する米国が、貿易拡大などを武器に、東南アジアの「親中国ベルト」を揺さぶろうとしている。
米国と中国のこうした姿は、もはや日常になった。 2008年の世界経済危機以降本格化した「グレートゲーム」である。地球全体が舞台だが、特に東アジア、中央アジア、中東、アフリカなどが主な戦場となる。これらの地域は、中国が自分のライフラインとして設定した一帯一路(陸海上シルクロード)が通るところでもある。中国を狙った米国のアジア再均衡政策は激しさを増している。米国は、中国が求めた新型大国関係も事実上拒否した。グレートゲームは現在、すべての米中関係を規定する。
北朝鮮が電撃的に4回目の核実験を行ってから3週間が過ぎた。それ以降の議論もグレートゲームの磁場内にある。米国は中国役割論を繰り返している。これは、中国責任論の別の表現だ。中国が役割を果たせず、北朝鮮が“悪いこと”を続けているから、中国が責任を持って北朝鮮を厳しく指導し、正さなければならないということだ。中国はこのような主張を受け入れることができない。グレートゲームの原理に根本的に反するからだ。中国が北朝鮮の核問題と関連した責任を引き受ける瞬間、対米戦線の重要な軸が崩れ落ちることになる。
中国は逆に、米国責任論を語る。論理的にはこちらの方がより説得力がある。北朝鮮が核開発の主な理由として挙げたのは、米国の敵視政策であって、中国ではない。それに、米国は長年にわたり北朝鮮の核問題を事実上放置することで、さらに悪化させた。また、米国は北朝鮮の核問題をグレートゲームの主な素材として活用している。アジア再均衡政策の重要な軸である韓米日安保・軍事協力が着々と進んでいることだけでも、米国としては大きな成果だ。
今、核実験の対応策をめぐり攻防を繰り広げる米国と中国の主な目標は、すでに核問題の解決策の域を超えている。このような状況は、両国の間でいわゆる大妥協が行われない限り、北朝鮮核問題の解決策を模索するのは困難であることを示している。大妥協を成し遂げるためには、少なくとも部分的でも、グレートゲームの中断に合意しなければならない。互いを刺激しかねない行動を避け、北朝鮮核問題を最優先の共同課題に設定することが出発点となる。そのような土台の上で、米国は積極的に核交渉に乗り出し、中国が北朝鮮への介入を強化すれば、核問題の解決策を見つけることができる。今のままだと、北朝鮮核問題は、関係国にとってより大きな負担となり、米中対決も激化の一途を辿ることになるだろう。
私たち(韓国)がやるべきことは、米中間の大妥協が実現させるための媒介者や促進者としての役割だ。両国より力が強いからではなく、私たちにとって最も切実な問題だからこそ、それができる。米国と手を取り合って、中国の圧迫に乗り出すのは、米中対決と核問題の悪化に寄与するだけだ。結局、北朝鮮を崩壊させなければ、核問題が解決できないという根本主義的な思考も同じだ。北朝鮮は北東アジアで最も弱い者だ。しかし、米国と中国がグレートゲームに集中すればするほど、独自の地位を維持し強化する余地が大きくなる。このような構図を変えるべき責任が、私たちにある。挑発的なうえビジョンもない「6者会談無用論」や「THAAD朝鮮半島配備論」などではなく、米中大妥協のための説得に乗り出すことを、政府の最優先課題にすべきだ。
韓国語原文入力:2016-01-27 18:40