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[記者手帳]増税は最も重要な政治問題である

登録:2014-09-21 20:55 修正:2014-09-22 07:52
アン・ソンヒ経済部政策金融チーム長

 資本主義における不平等問題を扱った『21世紀の資本論』の著者、トマ・ピケティ パリ経済大学教授は、この本で「課税は政治的であり哲学的な問題だ。 おそらくすべての政治的な問題の中で最も重要だろう。 どんな具体的な課税方式を選ぶかが、すべての社会で政治的葛藤の核心」であると話した。 彼の話によらずとも、最近の韓国社会で“増税”すなわち福祉拡大のための費用を誰がどれほど負担するかという問題はもはや避けられない主題になった。 だが、この“最も重要な政治問題”に対して韓国の政界は真剣な答えを提示していない。

 政府・与党の“増税なき福祉”というスローガンは嘲弄の的に転落する兆しがある。 その手段として言われた地下経済の陽性化、歳出構造の調整、非課税・減免縮小の3種のセットは、今年の税法改正案と来年度の予算案を通じて政府が事実上自ら破棄したと見なければならない。 福祉公約を大幅に縮小しておきながら来年の財政赤字は33兆ウォン(1ウォンは約0.1円)に達する。 決定打はたばこと住民税の引き上げを二日連続で発表した政府の“果敢な”歩みであろう。だが、政府によればこれは絶対に増税ではない。単なるたばこの値上げであり住民税の引き上げだ。 今後も増税はないと言う。

 「与党に地下経済の陽性化という鬼の金棒があるなら、野党には“金持ち減税の撤回”という鬼の金棒がある」

 オ・ゴンホ「私が作る福祉国家」共同運営委員長の言葉だ。 李明博(イ・ミョンバク)政権時期に大規模な金持ち減税が行われたので、これを撤回すれば福祉財源が用意できるというのだ。 当時の所得税率は課税標準額1200万ウォン、4600万ウォン、8800万ウォン以下は全て2%ずつ引き下げられたが、最高税率区間(8800万ウォン超)は反対世論のために35%が維持された。2012年には逆に38%の最高税率区間が新設され、金融所得の課税基準も強化された。 高所得層、中産層、庶民が全員減税の恩恵を受け、任期末には若干ではあるが金持ち増税もなされたという話だ。 法人税率は中小企業を含めて全ての企業が3%引き下げられた。 野党はこのような措置のうち正確にどこまで戻そうとするのかを明確にしなければならない。

 金持ち減税撤回の別バージョンと言える“金持ち増税”も簡単でないのは同じだ。韓国の国民が納める所得税(国内総生産対比4.0%)は、経済協力開発機構(OECD)平均の8.5%の半分程度だ。 金持ちが税金を納めないためだろうか?  確かに韓国の金持ちは福祉先進国に比べて税金を少ししか納めていない。 だが、中産層と庶民も少しか出していないのは同じだ。 韓国で平均賃金(月300万ウォン程度)を受け取り二人の子供がいる労働者は、月給の2.4%を所得税として納める。 同じ条件の他のOECD国家の労働者は10.2%を納める。 韓国の勤労所得税の33%を所得上位1%が、60.2%を上位5%が負担している。 野党が金持ちの租税抵抗に勝ち抜く政治力があるかも疑問だが、福祉先進国の中で果たして“金持ち”だけが税金を多く納めて福祉財源を調達できた国があるかも気になる。

 政治家にとって増税は毒杯だという言葉がある。 ややもすれば票を失いかねないためだ。それで与党も野党も各自の鬼の金棒の影に隠れるわけだ。 朴槿恵(パク・クネ)大統領が任期中に増税を断行することは難しいかも知れない。 「国民大妥協委員会を作り、全てを透明に国民に知らせて、租税と福祉水準に対する国民的合意を見出す」という発言を守るだけでも評価されるに足ると見る。 重要なことは、きちんとした増税議論を始めることだ。

アン・ソンヒ経済部政策金融チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/656071.html 韓国語原文入力:2014/09/21 18:16
訳J.S(1668字)

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