チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは
「パパゴ」は国際共通語であるエスペラント語で「オウム」を意味します。鋭い洞察と豊富な歴史的事例を備えたチョン・ウィギル先任記者が、エスペラント語でさえずる皆さんのオウムとなり、国際ニュースの行間を分かりやすく解説します。
■何が起きているのか?
4日(現地時間)に行われたブラジル大統領選の第1回投票で、フラビオ・ボルソナロ上院議員が予想を覆し、ルーラ現大統領を抑えて1位となり、決選投票に進出した。ボルソナロ議員は、クーデター容疑で服役している極右色のジャイール・ボルソナロ前大統領の息子。今回の選挙結果は、決選投票におけるボルソナロ候補の当選可能性を高めるとともに、トランプ米政権の対外政策に関連する中南米全体の政治情勢にも大きな影響を与えると予想される=編集者
Q. 世論調査とは異なり、ボルソナロ議員が1位となった理由は何か。
A. 大統領選前のすべての世論調査は決選投票を予想していたものの、ルーラ大統領が1〜3ポイント差で1位になるとの調査結果が出ていた。ところが、ボルソナロ議員が開票序盤からリードし、一度も逆転されることなく約2ポイントの差を保った。ボルソナロ候補は47.03%の得票率で、45.16%にとどまった労働者党(PT)のルーラ候補をかわし、1位で決選投票への切符を手にした。
ボルソナロ候補は、右派の自由党が優勢なサンパウロやリオデジャネイロなど南東部の都市部で予想通りリードした一方、ルーラ大統領は自身の地盤である北東部および北西部の農村部で大きな差をつけることができなかった。勝負の分かれ目は、有権者全体の約40%が集中する南東部地域だった。ボルソナロ議員は、この地域のサンパウロとミナスジェライス州で圧勝した。ミナスジェライス州を制した候補は、軍事政権後の初の直接選挙が行われた1989年以来、すべての大統領選で勝利を収めている。
アナリストたちは、今回の選挙結果をルーラ大統領と労働者党に対する抗議票とみている。ボルソナロ議員を支持したというよりは、ルーラ大統領と労働者党に対する不満を表明した票が多かったという意味だ。特に、都市部の中上流層の間で、こうした投票傾向が強かった。一方、ルーラ大統領の支持基盤である中下流層や農村地域では、棄権率が高かった。
ルーラ大統領は政権に就いた後、不平等や失業率の低下にもかかわらず、高い生活費、過度な家計債務、犯罪や組織犯罪の蔓延などにより、なかなか有権者の心を掴めなかった。ボルソナロ候補は、購買力の低下や生活費の負担への懸念、犯罪に対する強力な対処などを掲げ、(ルーラ大統領に対する)不満を煽った。
大統領選に先立って発覚した銀行「バンコ・マスター」の金融詐欺事件も、ルーラ大統領に打撃を与えた。同行のダニエル・ボルカロ頭取は詐欺行為を隠蔽するために政界関係者に賄賂を提供していたが、同頭取が逮捕を免れるためにアレクサンドル・デ・モラエス最高裁判事に助けを求めた疑いが浮上し、それがルーラ大統領にも飛び火した。ボルソナロ前大統領の裁判を担当したこの最高裁判事が、ルーラ大統領の側近とみなされていたためだ。
第1回投票において、カトリック、農村、中下層階級を基盤とするルーラ大統領が、プロテスタント福音派、富裕層、都市部を基盤とするボルソナロ議員に、階級および地域別の投票で敗北したのだ。
Q. では、決選投票でボルソナロ議員の当選は有力か?
A. ボルソナロ議員は世論調査での劣勢を覆して第1回投票で勝利した上、落選した残りの候補者の票も決選で吸収する可能性がより高い。第1回投票では、両候補を除く9人の候補が7.82%の得票率を記録した。これらの候補の大半は右派色であるため、彼らが獲得した票は決選投票でボルソナロ議員の方へ流れる可能性が高い。
4日の大統領選第1回投票と併せて行われた議会および州知事選挙では、ボルソナロ議員の自由党および同盟勢力が、上院議席と主要州の州知事職を多数確保した。
ボルソナロ議員は今回、父親が2022年の大統領選第1回投票で獲得した得票率を約4ポイント上回る得票率を記録した。父親の支持基盤を積極的に活用する一方、穏健派としてアピールすることで支持基盤を広げてきた。一方、ルーラ大統領は歴代大統領選の勝敗を分ける鍵となってきたミナスジェライス州で、今回43.21%の得票率にとどまり、2022年の第1回投票時に記録した48.3%には遠く及ばなかった。ルーラ大統領は2022年の大統領選決選投票で、ジャイール・ボルソナロ前大統領に対し2%ポイント未満の僅差で辛勝した。
Q. ルーラ大候補が巻き返す可能性はないだろうか。
A. 第1回投票で棄権した有権者を再び投票所へ呼び戻せるかどうかにかかっている。第1回投票では21%が棄権した。
世論調査機関クエストの最近の調査によると、有権者の約23%が選挙に関心がないと答え、10%は棄権あるいは無効票を投じるか、投票に参加しない考えだと答えた。政治への無関心は、ルーラ大統領の中核支持層である低所得層の女性の間で特に高い。2022年の大統領選では、低所得層の女性の29%が棄権するか、棄権票や無効票を投じた。
第1回投票がルーラ大統領に対する抗議票だったことを考えると、決選投票では危機感を抱いた支持層が結集する可能性もある。ブラジルの政治アナリスト、ラファエル・パベッティ氏はロイターとのインタビューで、「現時点ではボルソナロ議員に有利かもしれないが、その支持層はすでに結果に反映されているため、決選投票における潜在的な伸びしろはむしろ少なくなる」と分析した。
リオデジャネイロ連邦大学の政治学者マイラ・グラール氏はAP通信に対し、ルーラ大統領は「第1回投票で落選した候補であるアウグスト・クリ候補とロナウド・カイアド候補に投じられた票を分析し、棄権防止に務めるべきだ」と指摘した。340万票を獲得して3位となった作家のアウグスト・クリ候補、合計約530万票を獲得したロナウド・カイアドとレナン・サントスの両候補は、決選投票では誰も支持しない方針を表明した。
ルーラ大統領は敗北を一蹴し、決選投票で再選を果たすために総力を挙げると誓った。ルーラ大統領は「決選投票(第2回投票)こそが真の試金石だ」とし、「明日から新たな選挙運動を始める」と述べた。
Q. 中南米では、トランプ大統領の支持を受ける右派候補が相次いで政権を握った。今回のブラジル大統領選も、トランプの影響が大きかったのでは。
A. トランプ大統領は2025年の自身の再選前後に、中南米の選挙に露骨に介入し、過去18カ月月間に中南米で行われた7回の大統領選で、右派候補がすべて勝利した。第2次トランプ政権発足前に樹立された右派政権を含め、コロンビア、アルゼンチン、エルサルバドル、ホンジュラス、チリ、エクアドル、コスタリカ、ボリビア、ペルーなどが、トランプと連携した中南米右派政権ベルトを形成している。
これらの中南米諸国の政権は、米国の麻薬密売撲滅および安全保障対策の「米州の盾」連合に参加し、強力な治安維持および麻薬一掃プログラムを共同で展開している。米国との貿易関係を強化し、西半球における中国の影響力拡大を牽制しようとするトランプ大統領の対外政策に同調し、強力な親米・反中路線を歩んでいる。
アメリカ大陸全体を再び米国の確固たる影響圏に取り戻すことを対外政策の最優先課題とする、いわゆるトランプ大統領の「ドンロー主義」(中南米に対する米国の排他的な影響力を宣言した19世紀のモンロー大統領の「モンロー主義」に、トランプの名前「ドナルド」を組み合わせた造語)において、南米最大の国であるブラジルは重要な分水嶺となっている。左派色のルーラ政権は、これまでトランプ政権との貿易戦争に屈しておらず、中国との関係も拡大してきた。
ただし、ブラジル大統領選に対するトランプ大統領の介入は、ルーラ大統領にとってもボルソナロ議員にとっても諸刃の剣だ。ルーラ大統領はトランプ大統領と対峙することで国民的な支持率を回復しており、ボルソナロ議員はトランプの支持によって支持層を結集させてきたからだ。トランプ大統領はホワイトハウスでボルソナロ議員と会談し、ルーラ政権に懲罰的関税を課したが、ブラジル大統領選を控えてからは、公然とした介入を控えてきた。露骨な介入が逆効果を招く恐れがあると懸念したためだ。
ルーラ陣営は選挙運動期間中、トランプ政権が自身の勝利を認めない可能性があると警告してきた。ルーラ陣営は、トランプ大統領が関税を課し、「選挙の公正性」を議論するために官僚をブラジルに派遣しようとしたことを攻撃しており、米国大使館や領事館は投票のわずか3日前に、安全上の懸念を理由にブラジル全土で領事業務を中断することもあった。
ブラジル大統領選の結果は、中南米に対するトランプ大統領の対外政策と、それによって引き起こされたとされる同地域の「右派の台頭」が完成するかどうかの正念場になるだろう。ルーラ大統領がボルソナロ議員を退けて再選に成功すれば、トランプ大統領のドンロー主義に対抗し、この地域の均衡を保つ支柱となるだろう。