イランが「抵抗の軸」と呼ぶイエメンとイラクのシーア派武装勢力がサウジアラビアの原油輸出ルートを遮断したことを受け、イランは「輝かしい勝利」だとして歓迎した。11月の中間選挙後に戦争が終わると豪語していたトランプ米大統領のイラン戦争からの出口戦略は、さらに複雑になった。
イエメンの親イラン派反政府勢力「フーシ派」のヤヒヤ・サリ報道官は11日(現地時間)、X(旧ツイッター)に投稿した声明で、フーシ派の攻撃により「サウジアラビアの支援を受ける軍(イエメン政府軍)が6つの地域、計5400平方メートルの領域から駆逐された。敵の38個旅団から数百人を生け捕りにし、負傷させ、殺害した」と明らかにした。アルジャジーラ放送によると、フーシ派は政府軍との激戦の末、10日午前、バブ・エル・マンデブ海峡沿岸の都市モカを制圧した。11日には南部の別の沿岸の町ドゥバブに到達し、バブ・エル・マンデブ海峡沖のペリム島(マイユン島)にも上陸した。これにより、フーシ派はこの海峡を含め、イエメン西部の紅海沿岸全域を掌握した。
フーシ派は11日に声明を発表し、他国の船舶は従来のように海峡を通過できるが、サウジアラビア側の通航は阻止すると述べた。フーシ派は7月20日にサウジアラビアに対する航路封鎖を宣言して以来、射程500キロメートルに達する対艦ミサイルを内陸から発射してきた。ところが、今では沿岸から砲撃や水中ドローンを用いて、より精巧に船舶を攻撃できるようになった。フーシ派の関係者は同日の映像声明で、「もはやミサイルやドローンさえ必要ない」とし、「海岸沿いのあちこちに砲兵陣地を配置するだけで、複数の方向から同時に(サウジアラビアの)タンカーを攻撃できる」と主張した。
これに先立ち10日には、イラクの親イラン系シーア派民兵組織が、サウジアラビアの「東西石油パイプライン」にドローン攻撃を行った。地上のポンプ施設が被害を受けたため、サウジアラビアのエネルギー省は11日からこのパイプラインの稼働を停止した。このパイプラインは、サウジアラビア東部のペルシャ湾で生産された石油を、西側の紅海の輸出港へ運ぶもの。特に米国とイランの戦争によりイランがペルシャ湾の入り口であるホルムズ海峡を封鎖したため、サウジアラビアは輸出ルートを紅海へと切り替えていた。海運データプラットフォーム「ケプラー」によると、サウジアラビアは6月と7月に1日平均400万バレル、8月には240万バレルの原油をこのパイプラインで輸送してきた。
しかし、ホルムズ海峡に続き東西パイプラインまでもが閉鎖されたことで、当面の間、サウジアラビアは紅海一帯にあらかじめ備蓄しておいた原油しか輸出できなくなった。パイプラインの稼働が再開されたとしても、バブ・エル・マンデブ海峡の閉鎖により、紅海北側のスエズ運河やエジプトのシディ・ケリル港などを通じてのみタンカーを運航できる。アルジャジーラは、フーシ派による空爆の危険性から、「サウジアラビアはもはや(バブ・エル・マンデブ海峡付近の)港に接近できないとみられる」としたうえで、「(国営石油会社)アラムコの施設とパイプラインを攻撃し、サウジアラビア産原油が東アジアへ輸出されないように阻止することがフーシ派の目標だ」と指摘した。
イランは代理勢力の戦果を歓迎した。イランの最高指導者モジタバ師の顧問であるモハンマド・モクベル氏はXへの投稿で、「フーシ派の輝かしい勝利にお祝い申し上げる」としたうえで、「今日、ホルムズ海峡に対するイランの支配力と(フーシ派やイラク民兵など)抵抗の軸の意志は、米国とその同盟国を戦術的・戦略的な側面において膠着状態に陥らせた」と記した。「経済危機により、トランプの野心に伴う代償を払わされているのは米国民と同盟国だ」とも皮肉った。
イランは、代理勢力の作戦とは別に、14日にオマーンで開催される中東諸国の外相会議で、ホルムズ海峡に対する統制策を説明する予定だ。イラン外務省のバガイ報道官はアルジャジーラに対し、「ホルムズ海峡における安全な船舶の通航に関するイランとオマーン間の協議結果を各国に伝える」とし、「湾岸諸国とイラクが参加することを望む」と明らかにした。
一方、年内に中東戦争から手を引こうとするトランプ大統領の計算は狂った。トランプ大統領は12日、アイルランドのダブリンで、イランとの戦争終結時期に関する記者団の質問に対し、「もうすぐだと思う。おそらく(11月の米国)中間選挙直後になるだろう」とし、「(戦争が終われば)原油価格も急落するだろう」と答えた。しかし、エネルギー交易路を掌握しているイランは、交渉の場に戻ったとしても、米国に対してさらに厳しい条件を突きつける可能性が高まった。米中東研究所(MEI)のアレックス・バタンカ上級研究員はXへの投稿で、「フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡への進撃やサウジアラビアの権益に対する攻撃、紅海の海上交通への圧力は、イランの立場からすればこれ以上ないほど有用だろう」と記した。