米国・イスラエルとイランが出口のない戦争を継続しているなか、ロシアがほくそ笑んでいる。防空ミサイルの「品薄」によりロシアの対戦国であるウクライナが苦境に立たされているのに加え、原油価格の急騰がロシアの資金事情に息吹を与えているためだ。ロシアは友好国であるイランにドローンの技術や戦術を伝授し、戦争に間接的に関与している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は18日(現地時間)、BBCの対談で「(ロシア大統領の)プーチンにとって、イランでの長期戦争は『プラス』の要因」だとし、「これは、米国の備蓄物資の枯渇と防空兵器の生産能力の減少を招く」と述べた。さらに「米国は1カ月に60~65発の(防空)ミサイルを生産する。年間700~800発の水準だ。しかし、米国とイランの戦争の初日だけで803発を使った」と述べた。
ウクライナがロシアのミサイルの撃墜に使用する防空ミサイルであるパトリオットなどが、世界的に不足する可能性があるということだ。ロシアメディア「イズベスチヤ」は、米・イラン戦争が軍事資源を吸い上げる「真空掃除機」になったと指摘し、「ウクライナはイスラエルおよび湾岸諸国と資源を分け合わなければならないだろう」と報じた。
高騰する原油価格もまた、プーチン大統領を安堵させている。戦争前は1バレルあたり72ドルだったブレント原油はこの日、110ドルを超えた。さらに米国は、国際原油価格を安定化させるとして、ウクライナ戦争後に導入された対ロシア貿易制裁を緩和している。12日には、ロシア産原油の輸出を1カ月間解禁した。
仏紙「フィガロ」によると、クレムリン顧問出身の政治評論家セルゲイ・マルコフ氏は「原油価格の上昇のおかげで、ロシアは1日に1億5000万ドルを稼いでいる」として、「今の状況は、現代史において最大のエネルギー危機の始まりにすぎない。これはいいことだ」と主張した。
ロシアでは、米国が仕掛けた戦争が「ウクライナ侵略を中断せよ」という西側の要求を退ける口実にもなっている。西側も国際法を破って他国に侵攻しており、同罪だということだ。プーチン大統領は先月28日、イランの前最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師が空爆で死亡した際、「人間の道徳と国際法のすべての規範に対する冷笑的な違反」だと指摘した。
ロシアはイランが戦争を継続できるよう水面下で支援している。ドローン分野が代表的なものだ。ロシアはウクライナ戦争初期からイラン製の自爆ドローン「シャヘド-136」を輸入しており、今では「ゲラン-2」という名称で独自生産している。
仏紙「ル・モンド」によると、新型シャヘドはジャミング(電波妨害)対策として衛星受信機「コメタ-M」を装着し、通信アンテナを4個から8個に増やしている。この受信機は今月1日、キプロスの英国空軍基地で撃墜されたシャヘドの残骸から発見された。ル・モンドは「(イランのドローンは)そのおかげで防空網を突破できた。ロシア製の電子部品も残骸から出てきた」として、「これは、ロシアとイランが互いの技術革新をいかに深く統合しているのかを示している」と評した。
ロシアは防空網をかく乱するノウハウも伝授した。板製の安価なおとりのドローンを飛ばして敵の防空ミサイルを浪費させた後、爆弾を搭載した「本物の」自爆ドローンを飛ばすというものだ。低空飛行すれば西側諸国のレーダーを回避しやすいというウクライナ戦争の教訓も、イランは活用している。これに加え、ロシアが提供した衛星写真を用いることで、イランは米軍のミサイル・レーダー基地をより精密に攻撃している。
英国のジョン・ヒーリー国防相は12日の会見で、「イランの攻撃パターンは、ロシアがウクライナを攻撃する手法と非常によく似ている」とし、「イランの戦術の背後にプーチンの見えない手があるという事実は、さほど驚くべきことではない」と述べた。
ただし、ロシアは大規模な兵器供給を自制している。イランはロシアの最新鋭の防空網であるS-400の購入を望んでいるが、契約できずにいる。そのため、旧式のS-300を使用している。この兵器は、1月に米国がベネズエラで軍事作戦を実施し、ニコラス・マドゥロ大統領を捕縛した際、カラカスにも配備されていたが、米国の航空機を1機も迎撃できなかった。
契約済みのロシア製携帯式防空兵器「ベルバ」500台と戦闘機「Su-35」16機も引き渡されていない。
これは、ロシアが友好国であるイランが長く持ちこたえられるよう支援しながらも、米国の機嫌を損なわせないようにする戦略とみられる。貿易制裁の追加の解除など、米国から「得られるもの」が残っているためだ。ウクライナ戦争で米国にウクライナの肩を持たせないよう、関係維持も必要だ。
プーチン大統領は、米国とイランの双方と対話が可能な「仲裁者」の役割を自任し、このような目標を達成しようとしていると、ル・モンドは指摘した。たとえば、米国のドナルド・トランプ大統領がイラン近郊の南カフカスで推進中の資源開発事業がイランの報復空爆の標的にならないよう、ロシアが影響力を行使しうる。
パリ政治学院のジャン=ピエール・フィリウ教授はル・モンドに「5日にイランがドローン2機でアゼルバイジャンを攻撃するなど、この地域の緊張が高まるリスクは高い。プーチン大統領は、イランがホワイトハウスのプロジェクトを攻撃しないように抑制できる唯一の人物」だと述べた。
実際に9日、プーチン大統領はトランプ大統領と1時間電話会談し、米・イラン戦争について議論した。トランプ大統領は通話後、「プーチンは非常に建設的な役割を果たしたがっている」とし、「彼は役に立ちたがっている」と述べた。