尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の非常戒厳宣布をめぐり、米国や欧州などの主要海外メディアは3日(現地時間)、国会の戒厳令解除の表決まで詳しく報道し、現在の状況を韓国の国家的危機と報じた。
同日、米CNNやロイター通信、英BBC、中東アルジャジーラなど多数の海外メディアは、尹大統領の非常戒厳宣布に関するニュースをリアルタイムの速報で報道した。ニュースが発生する度に時々刻々と「ライブニュース」の形で伝える記事では、戒厳軍が国会に進入し、警察が国会前で立ちはだかる姿、放送記者に向かって銃口を向けた戒厳軍の姿が収められた動画と写真を大きく取り上げた。また、尹大統領が突然戒厳令を敷いた背景と市民の反応、今回の事態が韓国政治と経済に及ぼす影響などについても詳しく報道した。
まず、大半の海外メディアは現在の状況を「衝撃」と表現した。英ガーディアン紙は「(韓国には)初期に権威主義的指導者がいた。その後、1980年代に入り民主的国家とみなされてきたが、(尹大統領の戒厳令宣布は)国全体に衝撃を投げかけている」と報道した。米ワシントンポストは韓国で最後に戒厳令が敷かれた1980年5・18光州(クァンジュ)民主化運動を紹介した。その後40年が過ぎ、尹大統領が野党と北朝鮮を結び付け、「反国家」活動を行っているとして戒厳令を宣布したと説明し、「尹大統領のとんでもない措置は多くの韓国人に衝撃を与え、1980年代後半に民主主義に移行する前の韓国の軍部統治に対する苦しい記憶を思い出させた」と付け加えた。
現時点で尹大統領が明らかにした戒厳令宣布の理由は、説得力に欠けるという点も指摘された。ケンブリッジ大学の日本および韓国プログラム責任者のジョン・ニールセン=ライト氏はCNNに「率直に言って、このようなことが起きたのは奇怪だ」とし、「誰も説得できないと思う。これは明白な政治的動きとみられる」と語った。
英紙テレグラフは「世界を衝撃に陥れ、一国を危機に陥れた大統領」という見出しの記事で、「特に衝撃的なのは経済および軍事安保の中枢的グローバルパートナーであり、規則に基づいた自由主義秩序の支持者として韓国の地位が広く知られた現時点で、尹大統領の戒厳令宣布の決定が下されたこと」だとしたうえで、「さらに懸念すべきなのは、尹大統領が韓国内の『親北朝鮮勢力』を制圧し、『自由民主的憲政秩序を守護しなければならない』という理由のみを挙げており、戒厳令宣布に対する説明が足りない点」だと指摘した。
日本の共同通信も「尹氏は支持率が低迷、国会では野党が過半数を占め厳しい政権運営を強いられていた。事態打開を狙って強硬手段に踏み切ったとみられる」として、尹大統領が反国家勢力の清算を主張したが、具体的に何を指しているのかは明確でないと報じた。
アルジャジーラは英国セントラルランカシャー大学国際韓国学研究所のイム・ソジン共同所長とのインタビューを引用し、「尹大統領の今回の決定は非常に急進的な決定であり、最後の手段として選べる唯一の道だったのだろう」とし、「韓国国民の間でこれが触媒剤になり、大統領弾劾につながる可能性もあるとみられる」と報道した。
韓米同盟をめぐる懸念も示された。CNNの軍事アナリスト、セドリック・レイトン氏は、3万人余りの在韓米軍の韓国駐留状況を強調し、「韓国の不安定さはインド太平洋地域で軍事的力を投入する(米国の)能力にも影響を及ぼすため、今は危険な瞬間」だと語った。ニューヨーク・タイムズ紙も、民主主義の増進を対外政策の最優先議題としてきた米国としては、尹大統領の決定に当惑せざるを得ないと指摘した。また「米国政府内では、ドナルド・トランプ次期大統領に対する米国の政権移譲期である今、ジョー・バイデン大統領が海外に出ている状況を選んで尹大統領が(非常戒厳)措置を取った可能性もあるとみられている」と報道した。