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日本を震撼させた「自民党裏金」スクープ…「食べ物の出ないパーティー」が糸口に

登録:2024-04-03 10:18 修正:2024-04-03 10:49
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」 
「問題意識とタブーなく追及する意思が重要」
「しんぶん赤旗」の小木曽陽司編集局長(右)と山本豊彦日曜版編集長=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 昨年11月から自民党派閥の裏金問題が日本社会を熱くしている。派閥に所属する議員の相当数がかなり前から裏金を作っていた事実が知らされ、日本列島が衝撃に包まれた。岸田文雄首相が数回にわたって謝罪を表明し、政治改革を公言している。60年以上続いた自民党の6つの派閥のうち4派閥がすでに解散を決めた。東京地検特捜部の捜査に続き、自民党では該当議員らの大規模な懲戒が進められている。日本の政界で空前絶後のことだ。

 日本社会を襲った裏金問題は、ある新聞社のスクープから始まった。数百万部の部数を誇る巨大メディアではない。野党の日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」だ。14日、東京都渋谷区にある日本共産党本部で、しんぶん赤旗の小木曽陽司編集局長(69)と山本豊彦日曜版編集長(61)に会い、話を聞いた。

 「最初の報道の時は、ここまで問題が発展するとは予測できなかった」。山本編集長は「派閥の政治資金パーティーは古くから注目されてきた事案」だとし、「政治家個人に対しては企業と団体の献金が禁止されるが、パーティー券の購入や政党の本部、支部への献金は可能だという弱点があるため」と話した。

東京都渋谷区にある日本共産党本部前の掲示板には、機関紙「しんぶん赤旗」を大きく拡大して掲示している=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 取材は小さな問題意識から始まった。通常、政治資金の募金のための自民党派閥パーティーでは食べ物が出る。新型コロナ大拡散(パンデミック)の当時は、食べ物が出てこないのに以前と同じようにパーティー券1枚当たり2万円を受け取っているのを知り、担当記者が政治資金に対する取材に乗り出した。総務省と都道府県所管の全国の政治団体約5万件の報告書を一つ一つ見て、パーティー券の購入内訳を調査した。これを派閥が必ず書かなければならない政治資金収支報告書と比較した。担当記者とデスクまで取り組んでおよそ4~5カ月がかかる、「気が遠くなるような作業」だった。結果は驚くべきものだった。自民党の5派閥が2018~2020年の3年間で約2500万円の金を政治資金収支報告書に記載していないことを確認した。これは明白な政治資金法違反だ。2022年11月6日、「しんぶん赤旗」日曜版を通じてこのような事実を暴露した。

 「しんぶん赤旗」の報道後、神戸学院大学のある教授がこの事案を検察に告発した。昨年11月、東京地検特捜部が1年ぶりに本格的な捜査に乗り出し、これまで隠されていた自民党派閥の裏金問題という「パンドラの箱」が開いたのだ。山本編集長は「検察が捜査をしなければ、マスコミはなかなか動かない。自分たちの力で報道することになれば、責任を負わなければならないなどリスクがある。それを避けるという感じだ。これは非常に大きな問題だと思う」と語った。

 「しんぶん赤旗」のスクープは今回が初めてではない。先月には、日本の海上自衛隊司令官と隊員らが、遠洋実習航海に先立ち、数十年にわたり太平洋戦争でのA級戦犯が合祀されている靖国神社に集団参拝をしてきた事実を初めて報じた。小木曽編集局長は「靖国神社を参拝するということは、侵略戦争に対して全く反省していないということを内外に知らせることと同じだ。このような問題があったかこそ、海上自衛隊が靖国神社を集団参拝したことを知った時、すぐに動くことができた」と強調した。

 菅義偉前首相の辞任にまでつながったいわゆる「菅ブラックリスト」と呼ばれた日本学術会議の会員任命拒否問題も、「しんぶん赤旗」が2020年10月に暴露した内容だ。無所不為の権力を振るった安倍晋三首相を検察の調査まで受けさせた「桜を見る会」報道(2019年10月)も赤旗の報道だ。安倍首相が自身の選挙区の住民と後援会員を政府の公式行事である「桜を見る会」に大勢招待するなど、税金で支持者を接待したことで波紋が広がった。

 「しんぶん赤旗」の相次ぐスクープは、どのようにして生まれたのか。小木曽編集局長は「問題意識とそれをタブーなく追及する意思があるかが重要だと考える。赤旗はそれに自信がある」と述べた。山本編集長も「ジャーナリズムはどのような視点から見ているかがとても重要だと思う」と強調した。自民党派閥のパーティーや「桜を見る会」はすべて公開された行事で、主要マスコミが常に取材をしてきた事案だ。山本編集長は「他のメディアの場合、どんな政治家が参加してどんな発言をしたのかを中心に取材してきた」とし、「私たちはパーティーで企業・団体による事実上の献金が可能だという弱点に対する問題意識があった。『桜を見る会』も、赤旗は『政治の私有化』という見方でアプローチしたため、スクープが可能だった」と説明した。

東京都渋谷区にある日本共産党の党本部近くにある機関紙「しんぶん赤旗」の編集局の様子=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 1928年2月に創刊された「しんぶん赤旗」は、96年の歴史を持つ新聞だ。創刊当時から日本共産党の方針によって朝鮮の独立運動を支持し、植民地支配の徹底した反省を訴えるなど、日本では最も進歩的な声を上げている。日曜版、地方駐在、海外特派員まで含め、記者は350人余り。月~土曜日まで平日版があり、日曜版はスポーツ・芸能・企画報道など別途発行している。有料部数は85万部に上る。

 二人にこれからどんな新聞を作りたいかを尋ねた。山本編集長は「これまでどおり権力を監視する報道をしていく考え」だと述べた。小木曽編集局長は「政治がひどい状況だが、ここに希望があることを示したい」と強調した。「希望はただ訪れるのではない。真実に基づいたタブーのない報道を通じて『これを変えれば希望が開かれる』というメッセージをどれほど発信するかが非常に重要だ」

東京/文・写真 キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1134807.html韓国語原文入力:2024-04-02 08:54
訳C.M

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