米軍による人工知能(AI)基盤の無人戦闘機の開発が本格化している。空軍力強化のために莫大な予算を注ぎ込むものであり、米国に対する数的優位を模索している中国を意識した措置とみられる。
米国防総省は、協調戦闘機(Collaborative Combat Aircraft=CCA)と呼ばれる無人戦闘機を開発する業者として2社を選定する予定だと、ウォール・ストリート・ジャーナルが3日付(現地時間)で報じた。ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・アトミックス、アンドゥリル・インダストリーズが、60億ドル規模の同プログラムを受注するために競っている。米空軍はこの無人戦闘機を2029年までに100機以上確保するなど、少なくとも1000機は保有する計画だ。
米空軍が構想するこの無人戦闘機は、主に先端ステルス有人戦闘機「F35」や、まもなく配置される予定の次世代有人戦略爆撃機「B21」を護衛し防衛する、いわゆる「僚機(ウイングマン)」の役割を果たす。必要に応じて独自に空中目標や地上目標を攻撃する任務も遂行し、空中偵察機や通信中継機としても機能する。
これらの無人戦闘機は、F35などの有人戦闘機の操縦士が飛行しながら遠隔で指揮制御でき、また地上からもコントロールすることが可能だ。また、一度に数十機が編隊を組んで飛び、敵の防空網を数的に圧倒して混乱に陥れる作戦も遂行できる。操縦士が直接行うには危険すぎたり、身体的制約によって難しい任務を代替して遂行できるものと期待される。空軍長官のフランク・ケンドール氏は「無人戦闘機は操縦士ができない多くの任務を遂行できるよう設計される」と述べた。
このような任務を行う無人戦闘機を可能にする背景には、AIと飛行ソフトウェアの目覚ましい発展がある。数万時間にのぼる戦闘機の空中任務データに基づいたAIプログラムは、これまで地上コントロール所で遠隔で操縦していた無人機の飛行方式を変革する。
無人機(ドローン)はウクライナ戦争で大量に使用されるなど、戦争の様相を変えている。ウクライナ戦争で使用される無人機は小型が多いが、米軍は広大な太平洋でも使用するために、比較的大型の機体の開発が必要だと判断している。
現在、AI基盤の無人戦闘機の受注を狙う5社のうち、ボーイングのMQ-28「ゴーストバット」が唯一公開飛行を行った。アンドゥリル・インダストリーズの「フューリー」は写真が公開され、ゼネラル・アトミックスの「ガンビット」は合成イメージが公開された。ロッキード・マーティンとノースロップ・グラマンはまだ無人戦闘機の開発内容を非公開としている。ゴーストバットとフューリーは全長およそ20~30フィート(6~9メートル)で、大きさはF16の半分余り。亜音速で飛行し、ミサイルと異なる兵器を搭載して地上と海上の目標物に打撃を与えることができる。
米軍が無人戦闘機の開発に本格的に乗り出すのは、コスト面でも利点があるからだ。米空軍は無人戦闘機1機あたり2千万~3千万ドル前後と予想しており、業界では最終的には1機あたり1千万ドルまで下がると予想している。一方、F35は1機あたりの価格がこの数倍にもなる1億ドルであり、B21は7億5千ドルにのぼる。