4万年~1万5千年前に人間世界にやって来た犬は、それ以来、人間に最も近い伴侶動物になった。そのような点でロボット犬は、人間の至近距離で人間の命令を遂行するのに最もなじみやすいロボットの形態だといえる。ロボット開発者がロボット犬と称される4足歩行ロボットの開発に熱心なのは、犬と人間の長い縁が作用しているからなのだろうか。
ロボット犬は、2足歩行のヒューマノイド・ロボットと違い、移動中も体のバランスを取りやすいことが長所だ。また、頭や背中の部分にカメラ、センサー、ロボットの腕など様々な装置を容易に追加でき、用途は幅広い。
現代自動車グループが買収した米国のボストン・ダイナミックスの「スポットミニ(SpotMini)」は、これまで開発されたロボット犬の代表といえる。柔軟かつ素早い動作で階段を昇り降りし、だるまのように倒れても簡単に起きあがる。
2020年に発売されたスポットミニは現在、工場や工事現場のような産業現場をはじめ公園、病院、警察、文化史跡地などで検査、監視、撮影、パトロールなど様々な用途で使われている。
ロボット犬スポットミニの出発点は、元々は軍用4足歩行ロボットだった。MITのロボット工学の教授が設立したこの会社の最初のプロジェクトは、荷物を積み運べる軍事用大型貨物運搬ロボットを開発することだった。体を小さくし民間部門でも使用可能なロボット犬の開発に参入したのは、2013年にグーグルに買収されてからのことだ。
ボストン・ダイナミックスは、ロボットを武器や殺傷用に用いようとする人たちにはスポットミニを売らないと明言している。しかし、ロボット犬が犯罪や殺傷用キラーロボットとして使われる可能性に対する懸念は今もなお変わっていない。実際にそのような懸念を増幅させうるロボットが続々と登場している。
最近、モスクワで開かれたロシア2022兵器見本市(Army-2022)には、使い捨て対戦車ロケット「RPG-26」を搭載したロボット犬が登場した。
ロシア国営通信社「RIAノーボスチ」が掲載した動画には、ロボット犬が背中にロケットを載せ、伏せたり立ち上がったり方向を変えるなどの動作をする場面が登場する。全身に黒服をまとい目だけをわずかに出した姿は、映画の中に登場する忍者を連想させる。
同通信は開発者の言葉を引用し、「M81という名前のこのロボットシステムは、軍では武器を撃ったり運ぶ用途に、民間では緊急時の地域の実地調査、医薬品配達、険しい地形の移動に利用でき、戦闘現場での標的指定やパトロール、保安任務にも投入できる」と明らかにした。
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中国製ロボットに武器装着?
外国メディアは、このロボットは中国のロボット製造企業のユニツリー・ロボティクスが市販中のロボット「Go1」を改造したものとみられると報じた。このロボットの一般消費者向け製品は、オンラインモールで2700ドル(約37万円)で販売されている。
ロボット犬が殺傷用に使われうることを示した事例は、今回が初めではない。
これに先立ち、オンラインメディア「マザーボード」は7月、短機関銃を搭載したロシアのロボット犬「スカイネット」の動画を紹介した。
その動画には、ロボット犬が射撃場とみられる場所を歩き回り、射撃練習をする場面がある。ロボット犬が自ら銃を射つのか、あるいは誰か遠隔で引き金を引くのかは分からない。
「マザーボード」は、「銃はAK-74を基に作られたロシア産の短機関銃『PP-19 Vityaz』とみられる」とし、「動画に出てくる装甲車は、ウクライナで目撃されたロシアの装甲車BDRM-2」だと報道した。
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殺傷用を禁止する約款はあるが
米国でも武器を装着したロボット犬が登場した。
米国の4足歩行ロボット開発企業のゴースト・ロボティックスは、昨年10月にワシントンで開かれた米国陸軍協会(AUSA)年次総会で、遠隔操縦の小銃を背中に装着したロボット犬「Q-UGV(quadrupedal unmanned ground vehicles)」を披露した。同社は、このロボットを「敏捷かつ堅固な足付き地上ドローン」と紹介し、「軍事と国土安全保障の分野で広範囲に活用できる」と主張した
同社代表のジレン・パリク氏は、技術メディア「IEEEスペクトル」のインタビューで、「ロボット犬が自ら小銃を扱うのではなく、ロボットは移動する据置台にすぎず、発射するかどうかは人間が遠隔で制御する」と述べた。パリク氏は、このロボットを開発したのは、引き金を引く人間を武器から遠ざけリスクを最小化するためだと付け加えた。
武器を搭載したロボット犬が公的な会場に登場し始めたということは、実際の現場に投入するかどうかは別にして、ロボット犬もキラーロボットの議論の舞台に合流し始めたことを意味する。
ボストン・ダイナミックスは販売約款で「すべての購入者は法を順守し製品を使用しなければならず、人間や動物に危害を加えたり脅すことに使用してはならず、武器として使用したり武器を装着することにも使用してはならない」と規定している。
しかし、一般的な市場の慣行では、強制性のない約款が守られることを期待するのは難しい。