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[現場]日本が破綻危機の「六ヶ所核燃料再処理施設」を放棄できないわけは(1)

登録:2023-11-15 06:39 修正:2023-11-21 09:58
日本の「核燃料サイクル政策」の主軸、プルトニウム抽出施設が破綻の危機に
日本の青森県六ヶ所村にある使用済み核燃料再処理施設=日本原燃株式会社のウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 日本の本州の北東の端にある、斧の形をした青森県下北半島には、「六ヶ所村」という村がある。風が強く、気温が低いため、農業を営むのが困難な不毛の地だ。

 日本の辺境の静かなこの村が時折マスコミの注目を浴びてきたのは、1956年以降70年近く続く日本の原子力政策の核心「核燃料サイクル政策」を支える「六ヶ所再処理施設」があるからだ。核燃料サイクル政策とは、「使用済み核燃料」を再処理してプルトニウムを作った後、これを特殊原子炉の「高速増殖炉」で発電すると、新たなエネルギーの投入なしでも永遠に電気を生産できる「夢のエネルギー計画」を意味する。技術的欠陥などで26回も延期された六ヶ所再処理工場は、来年上半期に再び完工が予告されている。

 東京電力など日本の原発大手の投資で設立された日本原燃株式会社(以下日本原燃)が運営する「六ヶ所再処理工場」は、この政策の二本柱の一つである使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する施設だ。工場が稼動すれば、日本は毎年核兵器の原料となるプルトニウムを安定的に確保することができる。ただし、核燃料サイクル政策という「盾」があるため、日本がプルトニウムを保有するのは核兵器ではなく、この政策のもう一つの柱である「高速増殖炉」を通じて電気を生産するためという説明が可能になる。核拡散防止条約(NPT)を通じて核保有が認められる5カ国を除き、商業用の再処理工場を持つ国は世界で日本だけだ。

 現在、日本原燃は東京ドーム160個分に当たる約750万平方メートルの広大な敷地で、5つの事業を進めている。このうち低レベル放射性廃棄物最終処分(1992)▽ウラン濃縮(1992)▽高レベル放射性廃棄物臨時保管(1995)施設は既に完成し稼動中であり、主要施設の使用済み核燃料再処理▽ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料工場は来年上半期の完工を目標に工事が行われている。

 ハンギョレは今月1日、現場を訪問して再処理施設から車で10分の距離にある日本原燃の「六ヶ所原燃PRセンター」を見学し、地域の住民たちにも会った。センター3階から見た六ヶ所村再処理施設では、工場の至るところで数台のクレーンが休みなく動いていた。

 韓国がこの施設に注目しなければならない理由は大きく分けて二つ。一つ目の理由は、放射性物質汚染水の海洋放出問題だ。この8月末、東京電力福島第一原発でトリチウムが含まれた汚染水の海洋放出が始まった。しかし、この工場が稼働したら、「使用済み核燃料保存→切断後、硝酸に溶解→ウラン・プルトニウムの分離・精製→高レベル廃液ガラスの固体化」などの作業の過程で、1年に約9700兆ベクレル(1秒間当たりに放射性物質の原子核が変化する回数)のトリチウムが放出される。福島第一原発(年間22兆ベクレル)のおよそ440倍以上となる。クリプトン85、炭素14、ヨウ素など人体に致命的な他の放射性物質もともに放出される。

 日本原子力規制委員会は2020年7月、再処理工場の安全対策が2011年の東日本大震災後に作られた新しい規制基準に適合するという「合格決定」を下した。実質的な工場の稼動に向けては、今後別の審査が残っているが、この過程は簡単ではない。核燃料再処理の過程が複雑であるため、審査対象になっている建物の数だけでも20棟ほどだ。安全上重要な機器も1万個以上で、来年上半期の完工は難しいというのが大方の予想だ。日本原燃のずさんな準備も工事を遅らせる原因となっている。山中伸介原子力規制委員長は3月、「再処理工場に関する書類6万ページのうち、3千ページほどに内容の間違いや申告漏れがあった」として、公の場で警告した。

 二つ目の理由は、核兵器の原料となるプルトニウムのためだ。日本政府が進めてきた核燃料サイクル政策が稼動するためには、再処理工場だけでなくプルトニウムを利用して作った混合酸化物で発電できる特殊原子炉が必要だ。しかし、この過程が容易ではなかった。日本が心血を注いで作った「夢の原子炉」の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、2016年12月、廃炉が決まった。1兆円が投入されたもんじゅは1995年から稼動されたが、頻繁な故障と事故で実際の発電期間は250日余りに過ぎなかった。日本政府は、核燃料サイクル政策を引き継ぐため、後続の増殖炉を作るという計画だが、まだこれといった成果を出せずにいる。

 プルトニウムを一般の原発で消費する「プルサーマル(Plu-thermal)」にも限界が多い。再処理工場が稼動すれば、毎年原子炉10基が使用できる混合酸化物を作ることができるが、現在稼働中の原子炉10基のうちこの燃料を使用できるのは4基に過ぎない。このような状況で施設が完成すれば、まだ明確な使途のないプルトニウムが溜まる。日本は再処理施設がある英国やフランスと使用済み核燃料再処理委託契約を結び、これまで約46トンのプルトニウムを保有している。数千発の原爆を作れる量であるだけに、国際社会の厳しい視線が注がれている。

 青森で会った「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」の浅石紘爾代表(82、弁護士)は「六ヶ所村再処理事業は事実上破綻した状態だ。複雑な利害関係が絡んでおり、中断できないだけ」だと言い切った。

 このような状況が続いており、地域では再処理施設を作る必要がないという世論が高まっている。青森県を含む日本全域の市民たちは、1993年に続いて2021年に新たな規制が適用された再処理工場の許可を取り消してほしいという訴訟を提起した。河野太郎デジタル相も2021年9月、日本の首相を決める自民党総裁選挙過程で、「(核燃料サイクル政策は)なるべく早く手じまいすべきだ」と主張した。

(2に続く)

六ヶ所村/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1116183.html韓国語原文入力:2023-11-14 14:08
訳H.J

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