500人以上の命を奪ったガザ地区の病院への空爆に対し、国際社会で憤りの声が噴出している。パレスチナ住民の大半が住んでいるヨルダン川西岸では、憤りがイスラエルに融和的なパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長に対する糾弾へと広がっている。イエメンやモロッコ、イラクなどアラブ地域全般でもイスラエルに対する憤りが高まっている。
ガザ地区のアル・アハリ病院が17日(現地時間)に空爆を受け、少なくとも500人以上が死亡したというニュースが流れると、パレスチナ行政首都ラマラでは市内の広場などに住民が殺到し、デモを行った。「アルジャジーラ」などが報じた。
住民たちは、安保問題においてイスラエルに協力的な態度を見せてきたアッバス議長に対する怒りも共に表出した。一部のデモ参加者はイスラム武装組織ハマスを支持するスローガンを叫んだ。
当局は催涙ガスと閃光手榴弾を発射してデモ隊の解散に乗り出し、一部デモ隊は石を投げて抵抗した。パレスチナ住民の抗議デモはナブルスやトゥバス、ジェニンなどヨルダン川西岸のいくつかの都市でも続いた。
ヨルダン川西岸の住民たちのデモは、これまで溜まってきたアッバス議長に対する不満を示していると、ロイター通信が指摘した。住民の間では、パレスチナ自治政府が2021年のイスラエルとハマスの武力衝突時に沈黙を守るなど、無能な姿を見せているという批判が高まってきた。
特に、安全保障問題においてアッバス議長がイスラエルに協力することに対する不満が高いと同通信は報じた。アッバス議長は同日、ジョー・バイデン米大統領との会談を取り消し、3日間の哀悼期間を宣言した。
イスラエルは今回の惨事がパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」のロケット発射失敗のためだと主張したが、イスラエルに対するアラブ圏の憤りは収まっていない。
ロイター通信の報道によると、トルコとヨルダンのイスラエル大使館前ではイスラエルの暴力を糾弾するデモが行われ、レバノンの米国大使館周辺でもデモが続いたという。ヨルダンとレバノンでは、デモを解散させようとする警察とデモ隊が衝突する場面もあった。イランの首都テヘランの英国大使館とフランス大使館の前でも抗議デモが行われた。
世界保健機関(WHO)など国際機関と人権団体も今回の惨事を強く批判した。WHOのヨルダン川西岸・ガザ地区代表のリチャード・ピーパコーン氏は「今回の攻撃は前例のない規模」だとし、「我々はパレスチナ地域で医療(施設)を狙った攻撃が続いているのを目撃してきた」と指摘した。
WHOの中東地域責任者であるアフマド・アルマンダリ博士は「空爆を受けた病院はイスラエル軍の避難令が下された20カ所の病院のうちの一つ」だとし、「現在の不安な状況で退避するのは不可能だ」と述べた。
米国の人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」はソーシャルメディアを通じてアル・アハリ病院への空爆は「言葉では言い表せないほど恐ろしい」事件だとし、世界の指導者たちにガザ地区で大規模な残酷行為と民間人被害がこれ以上起きないよう行動に出ることを呼びかけた。
アントニオ・グテーレス国連事務総長もソーシャルメディアへの投稿で、「パレスチナ民間人数百人の死に驚愕している」として、この事態を強く糾弾すると明らかにした。ボルカー・ターク国連人権高等弁務官も声明を出し、「言葉では言い表せない状況」だとし、「この大虐殺の全容はまだ分からないが、暴力と殺人を直ちに止めなければならない」と促した。
ジョー・バイデン米大統領は「アル・アハリ病院の爆発に怒りと深い悲しみを感じる」とし、「ニュースを聞いた直後、ヨルダンのアブドラ国王、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行い、我が国の国家安全保障チームに正確な真相把握を指示した」と明らかにした。トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は「ガザ地区で起きている前例のない残虐行為の中断のための行動を全人類に呼びかける」と述べた。
イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相はソーシャルメディアへの投稿で、「もう時間が過ぎた」として、イスラエルとの戦いに向けた世界の連帯を呼びかけた。レバノンの武装組織ヒズボラは、今回の惨事の責任がイスラエルとイスラエルを支援する米国にあると主張した。