米国がウクライナに供与することを控えてきた長距離地対地ミサイル「ATACMS」を供与することにしたと、米国のマスコミが22日付で報じた。
NBCは21日、ジョー・バイデン大統領がホワイトハウスを訪問したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にATACMSの供与を約束したと報道した。匿名の米高官らは「数週間以内に少量のATACMSミサイルを供与し、その後、量を増やす計画だ」と語った。バイデン大統領は首脳会談の際、3億2500万ドル(約480億円)の追加軍事援助を提供することを約束し、来週にはエイブラムス戦車がウクライナに到着するだろうと述べたが、ATACMSミサイルについては言及しなかった。
ウクライナは開戦初期から射程距離が300キロに達するATACMSの供与を要求してきたが、米国はその規模の射程距離の兵器はロシア領内への攻撃に利用される可能性があるとの理由で、供与を見送ってきた。米国は同ミサイルの保有量が十分ではないという点も考慮してきた。
米国がATACMSの供与を決めたのは、ウクライナ軍の反撃作戦で戦線後方のロシア軍指揮部、兵器庫、補給路の打撃に効果的だとみているためだという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はウクライナに供与するATACMSにはクラスター爆弾を装着する予定だと報じた。親爆弾の中に数十~数百発の子爆弾を入れるクラスター爆弾は、破壊力が大きいが、無差別殺傷につながる恐れがある。また、子爆弾の相当数は不発弾として残り、戦争が終わってから民間人、特に子どもたちの生命を脅かす。このため、2010年にクラスター爆弾の生産と使用、販売、保管を禁止する国際条約「クラスター爆弾禁止条約」が発効されたが、米国やロシア、ウクライナ、韓国、北朝鮮などは加入していない。米国はウクライナに同ミサイルの供与を決める際、ロシア領内への攻撃には使わないという条件をつけたという。冬を控え、ウクライナ軍の長距離攻撃能力が強化されれば、ロシア軍の戦線防衛はさらに難しくなるものとみられ、最近の米安全保障関連閣僚会議でATACMSの供与について話し合ったと同紙は報道した。