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プリゴジン死亡の直前、解任されたロシア航空宇宙軍の司令官…「血の粛清」序幕

登録:2023-08-25 05:07 修正:2023-08-25 08:21
[ニュース分析]プリゴジン氏、武装反乱後わずか2カ月で航空機墜落で死亡
/聯合ニュース

 6月末に武装反乱を起こし、わずか1日で中止した後、行方不明だったロシアの民間軍事会社「ワグネル」代表のエフゲニー・プリゴジン氏が、謎の航空機墜落で死亡したことが確認された。

 この死の正確な原因はすぐには把握することは難しいが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、反乱後わずか2カ月で本格的な粛清作業に着手した結果である可能性が高いとみられる。ロシア民間空港庁など当局は23日、プリゴジン氏を含む10人が乗った専用機「EBM-135J」が、モスクワからサンクトペテルブルクに向かって飛行中に、モスクワ北西160キロメートルのトベリ地域で墜落し全員が死亡したことを確認した。

■「ロシアの一部議員、航空機に装着された爆弾で墜落の可能性を提起」

 ロシアの航空当局は国営メディアに航空機墜落の原因を明らかにしなかったが、一部のロシア議員は航空機に装着された爆弾で墜落した可能性があるという見解を示した。米国紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」などが報じた。ロシア政府は現時点では「捜査中」という言葉だけを繰り返している。

23日、ロシア当局関係者がエフゲニー・プリゴジン氏の乗っていたとみられる航空機が墜落したトベリ地域で調査作業をしている/UPI・聯合ニュース

 興味深いのは、代表を失ったワグネル側が示した反応だ。ワグネルに近いテレグラムチャンネルの「グレーゾーン」は、ロシアの防空網がプリゴジン氏の専用機を撃墜したと主張した。現場にいた人たちが撮影してこのチャンネルに投稿した動画を見ると、ミサイルに似た軌跡を示す物体と、翼を一つを失い空から墜落する航空機の姿が出てくる。こうした動画資料を根拠に「グレーゾーン」は、プリゴジン氏が「ロシアに対する反逆者の行動の結果」で死亡したと非難した。

 もう一つ興味深い点は、死亡の時期だ。プリゴジン氏は、彼と密接した関係を維持していたロシア軍部の実力者であるセルゲイ・スロビキン宇宙航空軍司令官が解任された直後に死亡した。

 ロシア国営の「RIAノーボスチ」通信は22日、現在進行中のウクライナ戦争を担当する副司令官を兼任していたスロビキン氏が解任されたと報じた。同通信は国防省の消息筋の話として、スロビキン氏は新たな職責に任命されて解任され、現在は短い休暇を取っていると報じた。また、後任の宇宙航空軍司令官には空軍参謀総長のビクトル・アフザロフ将軍が着任すると報じた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・スロビキン航空宇宙軍司令官の2017年の姿。西側では、エフゲニー・プリゴジン氏の反乱に同調した人物としてスロビキン氏を取り上げてきた/ロイター・聯合ニュース

 シリア内戦などで「アルマゲドン将軍」という別名を得たスロビキン氏は、ウクライナ戦争でロシア軍が守勢に追い込まれた昨年10月、ウクライナ戦争を担当する司令官に任命された。以後、昨年8~9月にウクライナ軍の大反撃に押されて後退した東部・南部戦線の防衛線を再構築し、戦列を整備した。

 当時プリゴジン氏は、ロシアとウクライナ双方が大きな犠牲を出した東部戦線最大の激戦地バフムトの攻防戦を主導していた。プリゴジン氏は、ロシア軍指導部を激しく非難しながらも、スロビキン氏については高く評価し、良好な関係を維持していた。だが、スロビキン氏は3カ月後にワレリー・ゲラシモフ参謀総長に戦争の指揮権を渡した。

 スロビキン氏の動向が再び全世界の世間の注目を集めたのは、6月23~24日にプリゴジン氏が武装反乱を起こした後だった。スロビキン氏は「反乱軍は基地に復帰せよ」という内容の動画を発表し、反乱に反対する立場を示した。

 だが、その後外部に姿を現さなかった。そのためスロビキン氏の去就はプリゴジン氏の反乱に関与した者たちが粛清されたかどうかを見極める重要な尺度として注目された。結局、スロビキン氏は解任され、プリゴジン氏は突然の死を迎え、プーチン大統領の「血の粛清」が始まったと分析せざるをえなくなった。

■プリゴジン氏、死亡の2日前まで健在だったが…

 振り返ってみると、プーチン大統領はプリゴジン氏の武装反乱が起きた後、全国に中継された演説を通じて「背信」「背に刃物を刺した」などの激しい表現を使い、報復を示唆した。しかし、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲裁で、プリゴジン氏とワグネルをベラルーシに移動させることで事態はひとまず収束した。背後に米国がいるウクライナと戦争を行うなか、「敵前分裂」を避けるためのやむを得ない選択だとみる解釈が相次いだ。

ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏が21日に公開した動画で、アフリカで活動する傭兵を募集していると述べている様子/AP・聯合ニュース

 だが、プーチン大統領の「怒り」が完全に収まったのかは明確ではなかった。プリゴジン氏はロシアとベラルーシを往復する様子を公開し、プーチン大統領が参加する会議に直接参加したこともある。死亡の2日前の21日には、アフリカで撮影した動画を公開するなど、健在を誇示した。

 だが、「刑場に向かう死刑囚」にすぎないとする見方が絶えなかった。米国中央情報局(CI)のウィリアム・バーンズ局長は先月、「プーチンは報復の使徒だ」として、「私がプリゴジン氏なら、試食役を解雇しないだろう」と述べた。つまり、毒殺される可能性があるので気をつけろという意味だった。

 プリゴジン氏の爆死とスロビキン氏の解任が、プーチン体制とウクライナ戦争にどのような影響を与えるのかについては、即断するには早い。ひとまず、プーチン大統領はセルゲイ・ショイグ国防相とワレリー・ゲラシモフ参謀総長を両軸とするこれまでのロシア軍部体制に対する信任を維持し、彼らが主導してきた戦争の路線を継続するものとみられる。

 だが、ロシア軍部で実力と人望を持つスロビキン氏の解任は、戦争を遂行中のロシア軍にとって少なからぬ損失であることは間違いない。ロシア軍が6月初めに始まったウクライナの反転攻勢を阻止しているのは、スロビキン氏が昨年、兵力を後退させて防衛線を構築し、戦力を再整備したためだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1105604.html韓国語原文入力:2023-08-25 02:12
訳M.S

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