ロシアのウラジーミル・プーチン政権が民間軍事会社「ワグネル」の反乱事態の収拾に総力を傾けている。プーチン大統領が直接世論の収拾に乗り出し、ワグネルの解体と軍への吸収を進めている。
プーチン大統領は27日、反乱に対処した兵士たちの功労を称え、この過程で亡くなった兵士たちを追悼する行事に出席し、「皆さんが激変から祖国を救い、事実上内戦を防いだ」と述べた。モスクワのクレムリン広場で開かれた同行事で、プーチン大統領は反乱事態を終わらせたのはロシア政府の譲歩ではなく、ロシア軍の威力のためだと強調した。
プーチン大統領は反乱を鎮圧する過程で死亡した兵士たちが「不安定に向かう道を塞いだ」とし、「反乱に参加した人々は軍と人民が彼らに同調しないことが分かっただろう」と述べた。24日、モスクワに北上していたワグネルの隊員たちはヴォロネジ近くで政府軍のヘリなどを攻撃し、ロシア政府軍13人が死亡した。
同日の追悼式には国防省、国家警備隊、連邦保安局、内務省など重要部署の高官らが出席した。プーチン大統領は同日夕方にもジャーナリストとの非公開懇談会で、反乱事態に関する意見を聞いたと、米ワシントンポスト紙が報じた。
プーチン大統領が反乱を起こしたワグネルの首長エフゲニー・プリゴジン氏を処罰せず妥協する形で反乱事態を終結させたことに対する釈明も出ている。
仲裁を行ったベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、プーチン大統領はプリゴジン氏を射殺しようとしたが、自分が「どんな戦争よりも悪い平和の方が良い」と説得したと、国営「ベルタ通信」が報じた。
ルカシェンコ大統領は反乱当日の24日、プーチンとの電話会談で「射殺することはできるが、数千人の民間人はもちろん反乱の鎮圧に乗り出した軍人の人命被害は避けられないだろうと説明した」とし、「前のめりにならないよう説得した」と報じた。ルカシェンコ大統領はプーチンとの電話会談後、プリゴジンとも電話で話し「あなたは虫のように粉々になるだろう」と説得し、撤退を実現させたと語った。
ロシア政府はワグネルの解体とロシア正規軍への吸収を急速に進めている。プーチン大統領は同日の追悼式典での演説で、ワグネルが政府予算支援で運営されたことを明らかにした。プーチン大統領は昨年5月から今年5月までの計1年間、ワグネルの人件費として860億ルーブル(約1440億円)以上を支給したと述べた。また、同期間プリゴジン氏が運営するケータリング会社と契約を結び800億ルーブル(約1340億円)を支払ったと主張した。
プーチン大統領の同日の発言は、前日発表されたワグネルを正規軍に吸収するための措置を裏付けるものだ。ロシア国防省はウクライナ戦争遂行のためにワグネルに提供した武器を回収する手続きを進めており、ワグネルの部隊員に国防省との契約を結ぶよう求める措置を発表した。
ワグネル部隊の解体後、国家警備隊の強化に向けた議論も進められている。「フィナンシャルタイムズ」の報道によると、プーチン大統領の警護室長出身のビクトル・ゾロトフ国家警備隊隊長は、自分の部隊に重火器を提供することを論議中だと明らかにした。
プーチン大統領が既存の軍指導部を再信任することで、今回の事態の沈静化を図っている中、軍部内の一部の将軍がプリゴジン氏の反乱を事前に知っていたという西側メディアの報道も出た。米ニューヨークタイムズ紙は、ロシア宇宙軍のセルゲイ・スロビキン司令官がプリゴジン氏の反乱を事前に知って手助けした可能性について、米国の情報機関が把握しようとしていると報じた。
昨年下半期にウクライナ戦争の司令官を務めたスロビキン司令官は、プリゴジン氏が非難したワレリー・ゲラシモフ参謀総長の代案に挙げられるなど、ロシアで最も人気の高い将軍。同紙の報道によると、米情報機関は一部の将軍がプリゴジン氏を手助けした可能性もあるが、スロビキン司令官が関与した場合、それが反乱失敗後にプリゴジン氏が処刑されなかった理由かもしれないとみている。
スロビキン司令官の軍部内の影響力を考え、プーチン大統領が当分はプリゴジン氏を処刑できないということだ。プーチン大統領は、スロビキン司令官がプリゴジン氏の計画を知っていたが、実際支援はしていなければ粛清しないことに決めた可能性があると同紙は報じた。スロビキン司令官はプリゴジン氏の反乱当日、これを非難する内容の発表を行った。