ロシアの首都モスクワの経済中心地が3日間で2度にわたるドローン(無人機)攻撃を受けたことで、不安感が徐々に高まっている。一部の企業は事務所での深夜残業の禁止や在宅勤務の拡大などの対応策を取っており、住民の間ではマンションの賃貸契約を解約しようとする動きも現れている。
ロイター通信などの報道によると、モスクワの経済中心区域「モスクワシティ」の「IQクォーター」という高層ビルが1日(現地時間)未明、ドローン攻撃に遭い損傷した。この日攻撃を受けたビルには、経済開発省やデジタル省、産業貿易省など政府省庁も入居している。同ビルは先月30日にもドローン攻撃を受けた。今回の攻撃で死傷者は出なかった。
ドローン攻撃の標的になったモスクワシティは、クレムリン(大統領宮)と赤の広場から西に約7.6キロ離れたモスクワ川近くの経済中心区域。欧州で高層ビルが最も多い地域であり、経済関連の政府省庁の他に大企業や銀行などが多く入居している。
モスクワ市のセルゲイ・ソビャーニン市長はソーシャルメディアへの投稿で「防空網に撃墜され統制力を失ったドローンが先月30日に攻撃を受けた高層ビルと衝突した」として、「ビル21階の壁面が破損し、150平米の広さの窓が壊れた」と明らかにした。 ロシア国防部も「ウクライナが3台のドローンでモスクワを攻撃しようとした」として「2台はモスクワ西側の外郭で防空網に撃墜され、もう1台はモスクワシティに墜落した」と確認した。
同ビルの近くにある他のビル1棟は、先月30日にもドローン攻撃を受け、この過程で警備員1人がけがをした。2回のドローン攻撃はウクライナが行ったと推定されるが、ウクライナ側は攻撃の事実を認めていない。ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問はソーシャルメディアへの投稿で、「モスクワは全面戦争に急速に慣れていっている」とし、「ロシアはさらに多くの未確認ドローン、より多くの崩壊、内乱、戦争を予想しなければならないだろう」と主張した。
モスクワ市民は表向きにはあまり動揺しない様子を見せているが、企業の安全確保には赤信号が灯った。大手技術企業の「ヤンデックス」は、先月30日のドローン攻撃後から従業員に深夜残業はしないよう指示した。ロイター通信によると、同社は従業員に「状況を考慮し、深夜(午前1時~午前6時)には事務所に残らないように。これはモスクワ市内のすべての事務所に該当する」というメッセージを送った。同社はモスクワシティ地域を含め、モスクワ市内のいくつかの場所に事務所を構えている。
モスクワシティ地域で働くある会社員は「私と同僚たちの安全がさらに心配になる」とし、「心の片隅ではモスクワシティが標的になりうると常に思っていた」と語った。他の会社員は会社が在宅勤務を認めてくれないと言い、(事務所で)仕事をするのが「不安だ」と話した。ある銀行員は多くの従業員に在宅勤務の指示が下されたと伝えた。
モスクワ市内で不動産仲介業を営むマキシム・ホディレフさんは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、賃貸マンションに住んでいる住民たちから「不安だ。賃貸契約の解約を考えている」という内容の手紙が届き始めたと語った。
多くの市民は日常生活を維持しようと努力している。ドローン攻撃を受けた建物に事務所のある投資企業の代表、ミルラン・イザコフさんは、同紙との電話インタビューで、自社の業務には支障がないと話した。イザコフさんはドローンによる攻撃があったことをニュースで知ったとし、「対立の時代だからこれは自然な手順であり、私たちは困難な時代を生きている」と答えた。モスクワ市民、アルカディ・メトレールさんは、AFP通信の取材対し「深刻な恐怖はあまりない。皆外に出て歩き回っている」とし、「いま私たちにできることは共に団結することであり、すべてが大丈夫だろう」と話した。