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韓国漁業者に賠償?…東電「周辺国に被害が生じるとは考えていない」

登録:2023-07-11 23:27 修正:2023-07-12 06:57
汚染水の4つの最重要争点を東電に問う
福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース

 日本政府は来月から、福島第一原発に保管している133万トンの汚染水を30~40年かけて海に放出する。放出は「秒読み」に入ったが、日本の漁業者と周辺国の懸念は今も残っている。ハンギョレは放出についての最も重要な疑問点について東京電力に問い、10日に書面で回答を得た。

 日本政府が汚染水の放出を決定した際に掲げた大義名分は、原発の敷地内の保管用タンクが不足しているうえ、廃炉に向けて作業スペースを確保しなければならないというものだった。しかし多核種除去設備(ALPS)で環境と人体に致命的な影響を及ぼす放射性物質を基準値以下になるまで除去した後は、別の場所での保管▽固化してリサイクル(防潮堤など)などの代案があるという声が絶えない。

 東京電力はこのような代案についての見解を問うハンギョレに、否定的な意見を伝えてきた。「(原発の)敷地外での保管については、保管施設を設置する自治体等の理解や放射性廃棄物保管施設としての認可取得が必要であり、実施までに相当な調整と時間を要する」、「固化に伴い体積が3倍から6倍に増加するといった技術的問題に加え、…処分地の確保といった課題が」あるとの理由からだ。しかし、汚染水の発生量が当初の予想より減ったことで、すべてのタンクが満水になる時期は来年2~6月にまで延びた。まだ8カ月~1年ほどの余裕があるため、苦しい回答だと感じた。

 中国などでは「汚染水が本当に安全ならば日本で農業・工業用水として使えるのではないか」と指摘されている。東京電力は「管理された海洋放出は、世界で稼働する原子力発電所から日常的に行われており」、「韓国においても、…原子力施設からの排水を工業用水や農業用水に利用した例はない」と強調した。汚染水は安全だが「前例がない」という抗弁だ。

 日本の主張する通り、汚染水が本当に安全なら、透明な方法で確認できるようにすべきだ。そのためには多様なやり方で試料を採取して分析する必要がある。しかし、これまで試料採取は東電が独占してきた。

 汚染水の放出は「国際安全基準に合致する」とする最終報告書を4日に発表した国際原子力機関(IAEA)も、自ら試料を採取することはできていない。韓国をはじめ、試料採取を希望する国や科学者にそれを認めないのはなぜかとの問いに対し、東電は「今後も原子力安全や放射線防護に関する専門的知見を有し、権威ある国際機関である、IAEAが実施する裏付け分析を通して、東京電力の分析結果が正確であることを確認いただくことが最も適切である」として拒否した。なぜ試料採取を認めないのかについては答えなかった。

2021年2月、福島県沖で獲れたクロソイから1キロ当たり500ベクレルのセシウムが検出された。NHKが報じた=NHKの番組より//ハンギョレ新聞社

 福島第一原発の近海では、法的基準値を超える放射性物質が検出される魚が相次いで見つかっている。5月にはセシウムが基準値の180倍のクロソイ、4月には基準値の12倍のアイナメが見つかっている。

 セシウムまみれの魚が見つかるのはなぜだろうか。東電は「当該の魚が1~4号取水路開渠(かいきょ)付近のセシウム濃度が高い場所に生息していたことが原因として考えられるが、理由を断定することは難しい」と答えた。その一方で「現在準備が進められているALPS処理水の海洋放出とは関係ありません」と説明した。

 また、「セシウムに汚染されたクロソイ」が外に逃げないよう金属製の魚類移動防止網を取水路開渠に設置してあるとし、「当該のクロソイのような、5センチを超える体高・幅の魚類が開渠外に出ることは無いと考えています。また、港湾内では漁業は行われておらず、市場にも出荷されません」と強調した。

 この説明を受け入れたとしても、原発事故発生から12年を経ても、魚の正確な汚染原因も把握しないまま、大量の汚染水を長期間にわたって海に流すということになる。5センチ未満の魚が汚染された場合は統制も難しい。

 汚染水の放出が始まれば、韓国の水産業も直撃を受けることになる。韓国ではすでに「塩の買い占め」が始まっており、「魚は食べない」という動きも広がっている。東京電力はいわゆる「風評被害」が発生した場合、自国民には地域・業種・期間を限らず損害賠償を行う方針だ。

福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース

 ハンギョレは、韓国水産業も大きな被害が予想されるが、周辺国の被害について賠償を検討する予定はあるのかを尋ねた。東京電力は「日本の法令に基づく規制基準等の遵守(じゅんしゅ)はもとより、国際法を厳格に遵守し、国際慣行を踏まえた措置をとってきており、人の健康及び海洋環境に悪影響を与えるような形での海洋放出を行うことはありません」と強調した。そして「周辺国に被害が生じるとは考えておりません」として拒否の意思を明確にした。

 同じ「風評被害」が予想されるにもかかわらず、自国民には賠償し、隣国の国民に対しては「被害にあっていること」さえ認めないという態度だ。「国籍」を理由として韓国人に対する戦後賠償・補償を拒否してきた日本の長年の病弊は、今も変わっていなかった。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1099555.html韓国語原文入力:2023-07-11 05:00
訳D.K

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