長い間予告されてきたウクライナの「大反撃」が始まった頃の6日にカホウカダムが決壊して発生した洪水は、これまでのところロシアに不利に働いているという分析が出た。ウクライナは東部戦線で7つの村を奪還したと主張した。
米国の戦争研究所(ISW)は12日、今回のダム崩壊でウクライナ南部のヘルソンの最前線地域の戦況がロシアに不利な方向に変わっていると発表した。同研究所は、ダムの崩壊で増えた水によって「ロシア軍がドニプロ川東岸にある少なくとも12カ所の定着地で占領中だった陣地を明け渡し、一部地域では戦線を約10キロメートル後退させなければならなかった」と明らかにした。昨年秋に行われたウクライナの反撃以後、ウクライナが川の西岸、ロシアが東岸を占めた状態で対峙してきた。
同研究所の分析によると、急速に流れ込む水によって、ドニプロ川西岸のオレシキ、ホラプリスタンのロシア主要拠点にあった兵力と軍事装備が撤収したものとみられる。ロシアはこれまで、同地域を活用して対岸にあるヘルソン市などを砲撃してきた。同研究所は「洪水でロシア軍が9日現在、ドニプロ川西岸の約375平方メートルの地域に対する統制権を失った」と明らかにした。ただし、このような変化が現時点でウクライナ南部で起きている戦況にどのような影響を及ぼすかはまだ不明だと付け加えた。ダムを破壊し洪水を誘発させたのは誰なのかは定かではないが、これまではロシアに不利に働いているという指摘だ。
大反撃を始めたウクライナは、主戦線であるザポリージャ州で少しずつ前進に成功し、7カ所の村を奪還したという。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日現在、激戦が繰り広げられている地域として、ホルティツァとタウリヤの2つの地域について言及し、「戦闘は激しく続いているが、我々は前進している。これが重要だ」と述べた。ハンナ・マリャル国防次官も同日、公式テレグラムに「この1週間、ドネツクとザポリージャ方向にあるウクライナ軍が6.5キロメートル進撃し、90平方キロメートルにのぼる領土を取り戻した」と主張した。また、ウクライナ軍がザポリージャ州西部(1カ所)と東部およびドネツク州西部(6カ所)で定着村7カ所を解放したと発表した。
しかし、ロシアも激しく抵抗している。ロシアの情報機関出身の予備役軍人イーゴリ・ギルキン氏は、テレグラムに掲載した文で、ロシアの「柔軟な防衛」が成功しているとし、「残りの領土を守り切り、あるいは取り戻そうとするのではなく、敵の本陣と主防衛線の間の戦場で敵を弱体化させることが望ましい」と書いた。現在の防衛線を維持しながらウクライナの兵力と装備の被害を増大させる「消耗戦」を図るべきという意味だ。
一方、ドイツ、フランス、ポーランドの3カ国の首脳は12日に会談し、ウクライナの反撃作戦を積極的に支援する方針を発表した。3カ国首脳はパリで開かれた首脳会談後の共同記者会見で、必要ならばいつまでもロシアの侵略に立ち向かって戦うウクライナを支持すると述べた。