ロシア軍とロシア傭兵集団ワグネル・グループがウクライナ侵攻作戦をめぐって対立している中、最大戦闘地域である東部バフムートからロシア正規軍部隊の一部が後退した。このため、バフムート占領の失敗をめぐり双方の対立がさらに大きくなる見通しだ。
ウクライナ地上軍司令官のオレクサンドル・シルスキー将軍は10日(現地時間)、激しい市街戦が繰り広げられているバフムートで、自国軍が反撃を加え、ロシア軍が2キロほど後退したと明らかにした。ロイター通信などが報じた。
ウクライナの第3独立強襲旅団は別途声明を出し、「ロシアの第72独立自動車化歩兵旅団が、バフムート周辺で500人の戦死者を残したまま脱出したという(ワグネル・グループ創設者の)プリゴジンの発言は事実」だと主張した。
これに先立つ9日、エフゲニー・プリゴジン氏は「ロシア軍が逃走している。第72旅団は今朝、3平方キロの面積の(占領)地域を失わせた。ここで私は約500人の戦士を失った」とし、ロシア軍に対する強い不満を吐露した。
プリゴジン氏は、ワグネル・グループの兵力がバフムート全体の95%を占領した状態で弾薬不足に苦しんでいると明らかにした。彼は、自分たちの要求した弾薬の10%しか届いていないとし、支援がまともになされなければバフムートから撤退する可能性もあると警告していた。
しかし、ロシアのクレムリン(大統領宮)のドミトリー・ペスコフ報道官はロシア軍の後退には言及せず、作戦は厳しい状態だが順調に進んでいると述べた。「(ウクライナで行う)特別軍事作戦はもちろん非常に難しいものが、我々はウクライナ軍を強烈に打撃することができた。これは今後も続く」と語った。
ウクライナ軍は、ロシア軍が10カ月ほど占領を試みているバフムートで、最近は特に戦果をあげられずにいると主張した。ハンナ・マリャル国防次官はソーシャルメディアのテレグラムへの書き込みで、自国軍の兵力はバフムート市内の駐屯地から一歩も土地を奪われていないと述べた。
ロシアがバフムートで苦戦を強いられ、責任をめぐる議論も大きくなる見通しだ。プリゴジン氏は、これまでロシアのセルゲイ・ショイグ国防長官とワレリー・ゲラシモフ参謀総長を直接批判してきたが、9日には政府高官が状況を把握もせず満足していると繰り返し批判した。
北大西洋条約機構(NATO)は、ロシア軍が兵器不足に苦しみ、旧式の兵器まで動員していると評価した。NATOのロブ・バウアー軍事委員長はこの日午後、ベルギーのブリュッセルのNATO本部で開かれた軍事委員会会議の後、ロシア軍が1954年に設計された戦車「T-54」など古い装備まで動員しはじめたと指摘した。バウアー氏は「今後数カ月間、ロシアは訓練が不十分な兵力の大規模な動員など、物量攻勢に焦点を合わせるしかなくなる」と見通した。