米国は、オーストラリアが原子力潜水艦(SSN)を早めに保有するよう支援するために、最大5隻を売る方針だという。中国牽制のためにオーストラリアの海軍戦力を急速に高めようとする米国の意図がうかがえる。
米国のジョー・バイデン大統領とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、英国のリシ・スナク首相は13日、米国のサンディエゴで3カ国安全保障同盟の「オーカス(AUKUS)」首脳会議を開き、このような案を最終協議した後、発表する計画だ。ロイター通信が8日付で匿名の米当局者の話として報道した。
これら3カ国は、2021年9月にオーカスを発足させる際、2040年までにオーストラリアに原子力潜水艦に必要な技術と能力を移転することで合意した。その後、オーストラリアがどのように原子力潜水艦を保有できるかの具体案をめぐり、水面下の協議を繰り返してきた。その結果、オーストラリアが2030年代初めに米国からバージニア級原子力潜水艦3隻を購入し、さらに2隻を購入できるオプションを付ける方向で意見が一致したという。バージニア級原子力潜水艦は排水量8千トンの米海軍の新鋭攻撃用原子力潜水艦で、核武装能力はなく、トマホーク巡航ミサイルを装着している。オーストラリアも原子力を動力として使うだけで、核武装はしない方針を明らかにしている。同国は現在、コリンズ級(3400トン)の通常動力型潜水艦6隻を保有している。
オーストラリアはその後、英国の設計と米国の技術で原子力潜水艦を直接建造する方針だという。米国が外国にこの技術を提供するのは、1960年代の英国以来約60年ぶり。米国防総省は厳しく統制されている原子力潜水艦技術の移転に必要な政界の支持を得るため、数回にわたって関連内容を議会に説明したという。米国では原子力潜水艦技術と潜水艦に搭載されるいくつかの先端探索機の製作技術などの海外流出が厳しく禁止されている。
さらに今後5年間、技術移転のためにオーストラリアの技術者が米国造船所に派遣される予定だ。米国は、彼らが労働力不足に苦しんでいる米国の原子力潜水艦建造能力の向上に寄与すると期待している。
オーストラリア海軍が原子力潜水艦を保有することになれば、海洋作戦を展開できる地域的範囲と能力が大幅に向上する。ディーゼルエンジンの通常動力型潜水艦とは異なり、理論的には燃料の再充電と再浮上なしに長期間海底に滞在でき、世界のどこへでも行ける。このため、今回の動きについては中国を狙った軍事的措置とみられている。オーストラリア海軍が原子力潜水艦を保有すれば、これまでとは異なり、南シナ海などに進出して米軍と合同作戦に乗り出すことができる。
中国は自国を抑制し地域を不安定にする試みだとして、強く反発している。中国外交部の毛寧報道官は先月、オーカスが中国をめぐる地域で「軍事的対決」を煽ると批判した。
米議会には原子力潜水艦をオーストラリアに売ることに反対する声も依然として残っている。AFP通信の報道によると、ジャック・リード上院軍事委員長(民主党)は昨年12月、バイデン大統領に手紙を送り、原子力潜水艦の販売が「米潜水艦産業の基盤に限界までストレスを与え」、米海軍の軍事的優位に否定的な影響を及ぼすだろうと警告したという。
米国がオーストラリアに原子力潜水艦を提供すれば、米国独自の原子力潜水艦需給計画にも影響が出る可能性がある。昨年公開された計画によると、米海軍は今後30年間、原子力潜水艦を毎年1.76~2.24隻の割合で建造し、2052年には60~69隻に増やす計画だ。